アトピー性皮膚炎・滋賀県・漢方薬 | なかがわ漢方堂薬局

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0号 漢方雑感 -間違ってはいけない漢方の使い方-

2002-10-26

 漢方と出会ったのが、昭和四十五年に購入した「症候による漢方治療の実際」(大塚敬節著)である。大学を出て製薬メーカーの拡宣の仕事についたが挫折してしまい、そこで大学の先輩の経営するドラッグストアに誘われて、およそ二十年間、薬の相談販売をしてきた。そのドラッグストアに勤務して、まもなく先輩が紹介してくれたのが、前出の書籍である。七百頁を超える分厚い本であるが、何度も何度 も読み返し強い衝撃を覚えた。自らのライフワークに出会った気がした。以来様々な漢方書を読み続けている。漢方と言っても数々あって、日本に仏教と共に伝来した古代の民間療法、室町時代に伝わったとされる後世要方、江戸時代のルネッサンスの象徴である古医方、明治時代から関東以北で拡まった一貫堂医学、ここ最近日本へ紹介された中医学、中国の南の暖かい所で培われた温病学等々である。流石に、最近は、漢方は迷信であると、暴言を吐く 医師はいなくなったのだが・・・。

 漢方は立派な体質医学であり、論理的、唯物論的に体系化されている。基礎的なものから臨床まで、現代医学を上回る勉強と経験が必要と言われている…。十年近く前に発生した小柴胡湯事件なるものがあった。全国で小柴胡湯を服用した患者さんが十人前後亡くなられたのである。当時C型肝炎の蔓延と共に大量に使用され、そのお陰で多くの患者さんが救われたのであるが、漢方的な弁証論治がなされなかったが為に起こった不幸な出来事であった。傷寒論なる難解な古医書にその使い方が記載されており、その通り使用されれば、ほぼ必ずと言ってよい程効果が出るのであって、この様な結果にはならなかったであろう。

 毎年寒い季節になると流行るのが風邪である。文字通り「風」の「邪」である。その風邪にかかる事を「風に中(あた)る」と古人は言ったのであり、 傷寒論という古医書では中風の病(風に中った病)と言っている。中風の病にも色々種類があるが、日本ではその代表格が葛根湯になります。そして傷寒論では葛根湯の使い方を厳重に規定しているのである。何故ならば、使い方を誤れば心臓に悪影響を及ぼしたり、極端な場合は三途の川をさまようことにもなりかねない。傷寒論では、「太陽病、項背強几几、無汗、悪風、葛根湯主之。」と規定しているのである。即ち、項から背中に沿って凝りがあって、汗はなく、寒気があり、そして脈が浮いている時と規定されているのである。

 蛇足ではあるが、ついでに付け加えておきたいのが、夏風邪は一体どうか、という事である。そうです。よくよく前文を見て頂くと、汗は無く、寒気があり、と規定されており、夏の風邪は、有汗で、寒気が無い(あっても少ない)事が多く、合わないという事である。そして、その夏風邪に対しては、温病学や中医学では、別の処方メニューが準備されている。温病学の発展した地域は、中国の南の温かい所であり(亜熱帯の所もある)、当初、日本へ伝来した傷寒論は、どちらかと言うと、中国北部の寒い所で発展した理論である。

 交通手段の発展した今日、世界はグローバル化し、消費を奨励している経済等々が、昔の日本には上陸しなかった南の暖かい地域に棲息しているウイルスを日本に持ち込む事になった。斯くして、日本の漢方は、江戸時代に比べて、更に難しくなっているのである。五月の連休の後、またお盆の休みの後等に流行る咽痛や熱発等は、恐らくこれらが原因しているからであろう。今、世界が一番問題にしている地球温暖化現象は、凍土に閉ざされていたウイルスを現出させ、そのウイルスは、渡り鳥と共に地球規模的に広がっている、又アフリカの奥地に棲息していたウイルスは、蚊を媒介として、飛行機と共に地球規模的にひろがっている。漢方の治療法も中国、韓国の医術を取り入れないと日本の古医方だけでは、立ち打ち出来ない状況になって来ている。

 (平成14年10月)

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