滋賀県の漢方相談薬局

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12号 宮廷女官チャングムの誓いを見終わって(めまい・つわり)

2007-04-25

 当初、勤務薬剤師のTさんと家内が毎週楽しみにしていた『大長今』(テチャングム)は、私自身全く興味が有りませんでした。ある日、調剤室で、伏竜肝(ぶくりゅうかん)なる漢方薬が話題に上がりました(昨晩の放送で出てきた為)。その事がキッカケで私もその後、『大長今』を見ることになりました。ある漢方メーカーの手帳の小半夏加茯苓湯の効能を見てみますと悪阻(つわり)に効果あり、と記載されています。その小半夏加茯苓湯は、通常の漢方薬とは、煎じ方も服用法も違っています。私が、幼少の頃、生家には、釜戸(おくどさん)があり、その釜戸から屋根を貫いて煙突がそそり立っていた。母親の手伝いをして釜戸に薪(まき)をくべて、ご飯を炊いたりお湯を沸かしたりした思い出があります。その煙突には、煤がたまり煙突掃除屋さんなる職業も有りました。一方、釜戸には、灰土が貯まり、煙突へぬける空気孔が詰まらない様に、時々その灰土を掻き出し掃除をしたものです。その灰土を含んだ釜戸の土が即ち、伏竜肝である。小半夏加茯苓湯は、その伏竜肝を水に浸け、その上澄み液で、半夏、生姜、茯苓を煎じたものが本来の小半夏加茯苓湯であって、メーカーより発売されているエキス剤は、恐らくそうではないと私は思っておりますが…果してどうなのでしょうか。つまり伏竜肝の上澄み液で煎じた小半夏加茯苓湯は釜戸の灰土を含んだ土の成分が大きな役割を果たしているのである。又、一般的な漢方薬の服み方は、煎じた液を3回に分服し、しかも熱いうちに又は温めて服用するのが通例である。この小半夏加茯苓湯は“歩くこと一厘計りにて服用すべし”とあり、約一時間毎に服用し、杯に一杯ずつ、更に、冷まして服用する様に…と口訣に有ります。そのように調剤室でTさん、家内に説明した事がキッカケで、どんな薬草が出てくるか興味を持ったが為に、私もハマッテしまったのである。然しながら、番組が進む内に、脈を診る場面と鍼を打つ場面が多く見られるものの薬草はあまり見られず、特に私が志している日本の漢方とはいささか違っていた。一方東洋医学で最も大切な、全体観つまりホリスティックな東洋的手法は漢方の本質なのだが、その本質は全く同じであった。その本質をチャングムファンが分かってくれると良いのだが…と思っていたのですが、一般の人にとっては、やはり、そこの理解は、少々難解だった様です。

 今から数年前エビデンス(根拠に基ずいた医療)に立脚した医療が叫ばれるようになった時、現代医療的感覚が絶対的とされ、漢方薬は、医療ではなく代替医療(Alternative)のカテゴリーに包含されてしまった。その代替医療である漢方薬が難治とされる病気に効果を発揮してくれる事は、何と皮肉な事であろうか。故青木先生から、「科学が迷信か、迷信が科学か、」そこが大切と、荒木正胤先生が、仰っていた…と聞いた事があります。  旧大津市内の年配の女性が、私の所のホームページを見て相談に見えました。主訴は、雲の上を歩くようなメマイである。ある病院でパ○シ○、リ○ゼ、ド○マ○ー○、ハ○シ○ン、メ○ス○ン、セ○ド○ル、イ○バ○ド、が処方されている。約一時間ご相談にのりましたが、一番大切な事は何が原因で現症を呈す様になったかであって、そこの所を考えた時、その患者さんが、如何なる生活をし、何を食し、如何なる環境で過ごして来たか、はたまた、如何なる性格か、間違った健康法を実践していないか、心に痞えているものはないか、更には、如何なる死生観を持っておられるか、等々問診するのである。その患者さんは、胃下垂があり、頭帽感があり、低血圧症で、仕事に、家庭にと一所懸命に働いてきた事等を顧慮して、半夏白朮天麻湯(加味方)の煎じ薬を服用していただいております。  最近になって、びわこ漢方サークルの受講希望者が増えてきました。いま、現在、太陽病下篇を終わろうとしている所ですが、(ここを終えると半分以上終えた事になる。)少しでも多くの方に、漢方を理解して戴きたいと願っております。(ご希望の方は、いつでもご参加下さい。)その為にも、次回の講習会では、少し、最初に戻ってから…と、思っております。

 日本の漢方では、『証』を重要視します。証とは一種のカテゴリー分類であり、例えば、皆さんが、一番馴染みのある葛根湯を例に取りますと、脈が浮いており、寒気があり、項の凝りがあり、汗は出ていなくて、体力的には、弱っていなくて、(表実証といいます。慢性病の場合は寒気がない)の体質的カテゴリーの人がいた時、その人の現代医学的病名が何であれ、例えば、“蓄膿”“ニキビ”“下痢”“腰痛”“夜尿症”“リュウマチ”“扁桃腺炎”“蕁麻疹”“結膜炎”“頭痛”“頸肩腕症候群”“皮膚病”“母乳の出が悪い”“鼻炎”…等全て治るのである。最近、あるホームページを見ていたところ、防風通聖散は、決して肥満症の薬ではありません。それは一貫堂医学(明治時代に*森道伯先生が興した漢方理論大綱)がお腹に皮下脂肪がついている『重役腹』…を目標にした事から始まっているからと書いてありました。前回の「漢方塾」でも書きましたが、一貫堂医学では、決して重役腹のみを目標にしている訳ではなく、臓毒証なる『証』を目標にしております。テレビや様々なメディアでやせ薬としての位置付けで、宣伝しておりますが(証が合っていない事が多い為)、効果がない事の方が圧倒的に多く、むしろ、見えない‘害’が忍び寄っている事のほうがあるかもしれない。企業の倫理観が問われます。漢方薬始め医薬品を軽く見ては?大変な事になりますヨ?と言いたい。TVで、ヨーロッパのある国が、インドの綿花地帯で、布製品を(仕上がったショール等は、EU諸国でブランド物として、販売されている。)、劣悪な環境のもと、苛酷な労働を強いて、生産している状況をドキュメント放送しておりましたが、強烈な酸、アルカリの液の中で、素手、素足で仕事をしている人達や、重金属をため池に流し込んでいる場面等を見るにつけ、化学薬品を扱った経験のある者としては、空恐ろしさを感じ、同時に怒りを覚えました。企業の倫理観は、一体何処へ行ってしまったのだろうか。富める者が貧しい人達の犠牲の上に立っているのが、現実であるとナレーションは、結んでいた。この様に、今こそ、グローバルな世界観を持つ事が、大切であり、医療においても、全体的発想(ホリスティック)でなければならないのである。それが故に、なかがわ漢方堂薬局は“人に優しく、自然に溶け込む”を、理念としているのである。                                            *《森道伯先生:医者でもあり宗教家でもある。禅に参じ、真言に通じられ、霊的感覚を体得された医術家であった、と漢方一貫堂医学(医道の日本社) に書かれている。体質を三大証に分類し漢方治療を実践された。?血証体質、解毒証体質、臓毒証体質がそれである。防風通聖散は臓毒証体質に用いられ、大正から昭和の初期にかけて頻用されたが、最近は用いる機会が少ないと故星野良明先生より教わった。?血証体質には通導散、解毒証体質には柴胡清肝散、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯を用いる。》

(大津市薬会報 2007年 4月号掲載)

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