滋賀県の漢方相談薬局

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1月, 2006年

7号 魂(何故現代の若者はキレるのか?)

2006-01-19

 魄の話は以前の漢方塾で書いた事がありますが、今回は魂についてふれてみたいと思います。

 金田一京助・国語辞典を引いて見ると、魂とは生物の肉体に宿り、精神作用を受け持ち、生命を保つと考えられるものとあり、気力、精神とあります。一方、漢方用語大辞典では、魂とは、人の精神の働きの一種、肝が血を蔵さなかったり、肝血の不足によって、魂は神に随わず動き、無遊、うわごと等の病証を現す。肝は魂の居所也。神に随いて往来する者、これを魂という。魂傷らるれば狂忘して精せず、精せざれば人に当たりて正しからず、陰縮まりて攣筋し、云々とあります。つまり、正しい精神生活(普通の日常生活をも含む)を過す為には、魂は必要不可欠であり、肝(肝血)が正しくなくては、魂は精神活動に一致せず狂忘する事になる。さすれば、肝血を蔵す事が最も大切と考えて良い。漢方の臨床では、陰と陽の均衡を弁証する事になる。

 最近食育が地域、職場等で脚光を浴びておりますが、最近のTV番組でその食育の討論番組が放映されていた。パネリストの一人に、某巨大ファーストフードのトップが招かれていた。日本は民主主義国家で全てにチャンスを与えるものだと変に関心したりしておりました。アメリカでは、HIVの騒動があった凡そ20年程前に、大統領の諮問機関が食育の問題を取り上げ、東洋の食を取り入れるべきと答申を出している。それは、日本の討論会の議論がどこかズレている感がある。然し乍ら、今の乱れた食事からすれば有意義な討論会といえるだろう。若しかしたら、その先を考えた第一歩であれば良いのだが・・・。

 亦、water crisisなる番組では、1kgの牛肉を生産する為には20屯の水が必要になると放送していた。良質な牛肉を生産するには、とうもろこしが必要であり、砂漠を農地として使用する為である。水量のcrisisもあり、事は重大である。科学者として我々薬剤師の特性が、一隅を照らし光明を見い出す手助けになればと願っております。

 私の大学での友人が、海苔の研究に携わっております。海苔にはビタミンDを除く全てのビタミンが含まれている。しかも人間が必要なミネラルも全て含まれており他に血圧を下げるペプチド類、癌細胞のアポトーシスを促したり、新生血管の抑制に効く物質も含まれている・・・と同窓会の席で教えてくれた。トレースエレメントの豊富なものは、色素やミネラル等が共に存在し、見かけは黒い物が多く免疫に効果的と中医学では言っていると私も友人に話したが、彼は、非科学的な事を言っていると思ったに違いない。

 福田一典先生の「漢方がん治療」では、八味丸や六味丸を多用されている。末期ガンの患者さんは腎が虚しているとの理由からである。勿論補気薬、駆?血薬、抗ガン作用のある薬草も駆使されておられる。要するに、何を食するかが、確かな魂を包含した精神を作り、癌の予防にもなり得るのである。私がアトピー性皮膚炎の患者さんから診を乞われた時、過去の食生活をしっかり問診するのは、最も必要な情報の一つだからである。先天性の問題も吟味し乍ら食育を考えているのである。口が渇き、甘いものを好み、冬では寒がりで、のぼせ易く、といった患者であれば、小建中湯に黄蓍を加えて主処方とする。結局は、薬食同源が根本であると考えているからであり、何を多く食したが、今のアトピーを引き起こしていると考え、それを是正するのである。腸管の状態も同時に見据えているのである。

 話は変りますが、クラシック音楽に興味のある私は、忙しい合い間を縫って、ウィーンへ旅した。ついでに、当地の薬局も2軒訪ねて見た。家内が目が乾燥して辛いというので、通訳を通じて訴えた所、アポテーカ(薬剤師)は、こちらの訴えをじっくりと聞き、長期に使うのか、短期なのかを聞き、少しで良いと言ったら、その若い女性のアポテーカはニッコリと頷き、私達が見ている奥の調剤台の引き出しからその目薬を取り出し、丁寧に使い方を教えてくれた。そのゆったりとした穏やかな一連の動作は、安心感を与えてくれるし、同時に誇りを感じた。未だに、この様な薬局(アポテーケ)がこの世にあるのだと感心し、日本でのコンビニでの販売云々の議論のナンセンスさを身にしみて感じた。

(大津市薬会報 2006年1月号掲載)

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