滋賀県の漢方相談薬局

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Archive for the ‘アトピー’ Category

36号 漢方の風 - アルツハイマー型認知症・アトピー性皮膚炎

2015-01-08

 数年前の事ですが、某大学の薬学部に在籍する学生さんとお話しをする機会が有りました。

その際、その学生さんはアトピー性皮膚炎を罹患して困っておられ、私が漢方医学に携わっている事を知って、質問をされた次第である。

その学生さんは皮膚が乾燥して痒みが強く皮膚科の医院に受診した。

保湿剤の軟膏と抗アレルギー剤と抑肝散が処方されたとの事であるが、将来の薬剤師の卵である学生さんは自分に抑肝散が処方された作用機序が解らず、ネットで調べて見たとの事である。

神経症、不眠症、小児夜啼き等が書かれておりアトピー性皮膚炎の際のイライラ、不眠、痒みにも効果があると書かれていたとの事である。

14日分を服用したが効果はサッパリで、自分には合わなかったのだろうと思っていたのだが、この機会に私にエビデンスを聞いて見たいと思った訳である。

その学生さんはサッパリした性格で言葉が流暢で会話が楽しく、自分の気持ちを素直に表現出来る、落ち着いた明るい性格の持ち主であった。

決して肝血(※)が虚していて、肝陽が抑えられないタイプではなかった。なので、その学生さんには効果が無くて当然で、抑肝散に効果が無かったのではなく、又、合わなかったのでも無く、合わせられなかったと考えるのが妥当でしょうと説明し、大切な事は望診や問診を行った上で、つまり“抑肝散の証”<肝血の虚に乗じて肝陽が上亢している>を弁証した上でアトピー性皮膚炎の患者さんに投薬する事が基本であると説明した所、複雑な気持ちを抱いていた。漢方薬は東洋医学的EBMに則った使い方が大切であるとその学生さんには教える事が出来た。

 今から20年近い前に、生前、親しくさせて頂きました故広瀬滋之先生(数多くの漢方の著書が有ります)の京都での漢方講演を拝聴しに行った時に、世の漢方施術者に対して、漢方薬が合わなかったのでは無く、合わせられなかった事を深く考えるべきと仰っておられました。

その言葉を聞いて私自身も身が引き締まる思いを覚えた。

アトピー性皮膚炎に対する抑肝散の作用は前号の“LEAKY GUT SYNDROME の所で書きましたが”脾“のペプシンの作用をフリーにしてより小さいペプチドに分解する事であろう。又、三焦の流れを良くする事も考えられる。

 その抑肝散は最近、アルツハイマー型認知症(AD)、レビー小体型認知症に高頻度に処方されます。所謂、周辺症状(怒り、イライラ、不安、妄想、徘徊他)の改善に使用されます。根治療法にはならないとされております。

ADの場合は(アミロイドカスケード仮説)はアミロイドβの沈着が重要視されていますが最近の研究で陳皮に含まれているノビレチンが非常に有効であるとされる研究論文が発表されております。

ノビレチンの抗認知作用は

  1. 記憶障害改善作用
  2. 脳コリン作動性神経変性抑制作用
  3. アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβの沈着抑制作用
  4. 神経成長因子

が動物実験で確認されている。(東北大学で抗認知症への動物実験を行っている。又、最近、それに基づいて東西の大学病院で臨床実験が開始されたと聞いております。)

 ノビレチンはシークヮーサー始め柑橘系の果皮に含まれているが、通常の温州みかんの果皮にも若干含まれている。

所が、最近、コタロー社がある地区で高濃度にノビレチンを含有しているミカンを見つけ、その果皮のエキス剤をノビレチンピ(第3類医薬品)と号して発売を始めた。乃ちノビレチンピは一種の温州みかんの果皮で健胃、鎮嘔、鎮咳、去痰の効能・効果で上市されております。

当薬局では現在3名の方に服用して頂いている所です。

 認知症の漢方治療は古くは桃核承気湯、当帰芍薬散が取り沙汰されておりましたが最近では「釣藤散」「?帰調血飲第一加減」「加味温胆湯」「通導散」「通導散合桂枝茯苓丸」「通導散合竜胆潟肝湯合補中益気湯」「加味帰脾湯」「通導散加桃仁牡丹皮合?帰調血飲第一加減」他から弁証を行って理法方薬通り行うと良いでしょう。中でも通導散には大いに期待が持てます。(通導散は強い薬方で使い方が難しく素人療法は禁物です。その際は漢方の専門家にご相談ください。)

 ※肝血:「肝は血を蔵す」とされる。腸管で吸収された栄養物質を含んだ血(けつ)は門脈系を通じ肝蔵に入り、分解、合成され貯蔵される。更に肝は自律神経系を主る為、血管運動に関与し身体各部の血流量を調節する。

更に女性には子宮に血液を供給し子宮の平滑筋や内膜を濡養(なんよう)して、或は自律神経を介してホルモン分泌を調節して月経を正常に行わせる。

陰陽互根であり、肝血は陰で、肝陽をコントロールしている。

なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄

35号 漢方の風 - 多系統委縮症とLeaky Gut syndrome

2014-08-21

アトピー性皮膚炎、パーキンソン病、ピル

 最近、多系統委縮症でお困りのお二人の方のお世話をさせていただいております。

漢方的弁証から見てお一人目の方は様々な症状や生活習慣をお聞きし、先ず初めに小建中湯を服用して頂きました。その後数年が経ち、現在は理法方薬に則り、臨機応変に処方を使い分けしております。

そして、つい最近お二人目の方が遠方から来局されました。

問診を丁寧に行い日常生活のお話をお伺いしました所(漢方で言う“証”を見極める事)、やはり小建中湯証である事が解りました。つまり“脾”が“虚”しているのである。

何となく脾の虚と多系統委縮症が関連しているのかも知れないと思いめぐらせておりました所、たまたま、多系統委縮症について述べておられるみきやまリハビリテーション病院の宮口修先生の文章を読ませて頂きました。

先生はやはり小建中湯が良いと仰っておられ、Leaky Gut Syndrome(腸管浸漏症候群)が脳を萎縮させているのではないかと文章を書かれておられます(実践もされておられます)。

 

 小建中湯と言えば桂枝加芍薬湯に膠飴(こうい:糯米粉を麦芽で糖化して作った飴)を溶かせて作るのですが、その桂枝加芍薬湯には芍薬の量が多く(6g)処方されています。

芍薬は「大小腸の水滞を尿で排泄する水剤」で「腸管に水滞が有りそれが故に腸管の筋肉が冷えて固くなり、攣急、拘攣を起こしているものを治す」又、肝気(※)を柔げて筋肉を柔和(柔肝作用)する働きがあるとされており、冷えて柔軟性を失した腸管がひび割れを起こし、浸漏している状態を改善するであろうことは容易に察しが付きます。

通常、腸管の絨毛組織は炭素原子を12ダルトンとした時、500ダルトン迄の分子を吸収するとされているが腸管に浸漏なるひび割れがあればもっと大きな分子迄(5000ダルトン)もが体内に入ってくるとある栄養学者は言っておられます。

例えば胃の低酸症によってペプシンが充分に働かず分子量の大きいペプチドが腸管から吸収されてしまうとアトピー性皮膚炎が発症するのではないかと嘗ての市薬ニュースの漢方塾で書いた事が有りますが、あながち間違っていなかったと今更ながら思っております(ルイボスティにその改善作用が有るのではないだろうかと私見を述べました)。

又、その栄養学者は、分子量の大きな物質が浸漏(腸管から入ってくると)して来ると、当然、抗体が作られ、腸管にある神経組織と発生学的に同じ脳組織にも脳関門をすり抜けて抗体が作られ抗原と反応して脳が委縮するのではないかと述べられておられます。

多系統委縮症のみならずパーキンソン病もひょっとしたら同じ腸管浸漏症が関係しているのかも知れない。と言うのも、私の義兄はパーキンソン病を患った(数年前に60歳代後半に他界しました)のですが、振り返って見ると、やはり脾虚で小建中湯証で有った事が解ります。

 

 又、その浸漏を惹き起こす物質の一つにピルが絡んでいるのではないかとその栄養学者は書いておられます。

そこで、ピルの副作用について朝日新聞デジタル(平成25年12月17日)に書かれていた内容を要約してみます。

生理痛や避妊目的で2012年度は推定100万人が服用していると書かれており、ピルの副作用は悪心、乳房痛、不正出血は良く見られるが、やはり血栓が出来やすい事が一番問題であると書かれている。

ピルを服まないグループでは10万人でおよそ5人に血栓が出来るとされているが服用グループでは10万人で3~5倍乃ち15~25人に血栓が発症する。ピルを服用する人は血栓が生じ得ると思って服用することが大切であると厚労省研究班の小林隆夫先生は述べられておられます。

頭痛、ふくらはぎ痛、胸部痛、視野の異常があればすぐに受診すべきであるとも述べられておられます。

上記の副作用が表出する迄もなく、密かに腸管に浸漏が隠れて進行している可能性も視野に入れなければならない。

 

 私たちは(特に日本人は)、肝気を整え(※)、腸管が冷えない様、食生活に気を配り、腸管に水滞を起こさない先人の知恵を顧慮しなければならない。

 

※肝気:肝の機能を言い、昇発・透泄作用を行う。乃ち肝気を整えるとは

 全身(身体、精神)をのびやかにする事。

(大津市薬会報 平成26年7月号)

なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄(昭)

漢方の風音 4号 パウロとザビエル(アトピー性皮膚炎とバリア機能)

2013-12-12

バリトン 中川 義雄

ポーランドのワルシャワでCOP19が行われています(11月12日原稿を書いています)。その最中(さなか)フィリピンのレイテ島を巨大台風が上陸した。

895hPaの気圧で瞬間最大風速95メートル(メディアによっては103メートルと報道)の風が襲い、気圧による海面上昇と風が海面を素早く通り過ぎた為に海面上が陰圧となり上昇した結果数メートルの高潮が襲ったと報道されており1万人近い死者が出るだろうと報道されている。

COP19(国連気候変動枠組み条約締約国会議)で、そのフィリピン代表のナデレヴ・サニョー氏が涙ながらに演説した。今ここに出席している各国が地球温暖化に如何に対応するかが問われており、その結果将来の悲劇を繰り返すか食い止めるかが問われている。…(略)。良い結論が出るまで絶食すると宣言した。サニョー氏は既に3日間絶食していると言う。

一方、日本が脱原子力下で温暖化ガスを押さえながらエネルギーを如何に作り出すかを世界が注視している。

福島の原子力発電所の収束も然りである。この事については日本が最近開発した二酸化炭素の発生を極力抑えた石炭によるエネルギーの確保等、又、発電と送電の分離政策を含めた政治の決断が最重要課題であると最近の文章で書いた所です。

 地球温暖化は自然現象のみならず人間の健康生命をも脅かしている事も顧慮しなければならない。惹起している症状の第一は多汗症であり熱中症であろう。

 漢方医学では温暖化は健康生命に対して、汗の不快感のみならず様々な病的症状を引き起こすと考えている。

口渇を解消したいが為に摂る水、清涼飲料、ペットボトルで摂るお茶等はお腹(中焦、下焦)を冷やすことになるし又湿邪が発生する事にもなる。

最近京大病院の皮膚科が発表した皮膚バリアに関与している蛋白質(フィラグリン)の低下によるアトピー性皮膚炎も惹き起こされるし、ニキビ、不妊症、免疫力の低下等も惹き起こされると考えられる。又、湿と熱が関与している前立腺ガンの発症にも繋がっているであろう。

 漢方薬でアトピー性皮膚炎の治療を実践している施術者は昔から絶えず皮膚のバリア機能を高める事を念頭においている。今に始まった事では無い。最近、汗を多くかくと痒みが強くなる患者さんを多く見かけます。この様な患者さんには桂枝湯と黄耆、茯苓を同時に服用して頂きます。(この手法を漢方では「解肌(げき)」と言います)汗が減じ皮膚が綺麗になってきます。この場合恐らく皮膚バリア物質フィラグリンが多く作られているのではないかと想像しています。追試が待たれます。

 今から十数年前、京都のホテルで薬剤師の漢方調剤研修会が有り、演者を務めた事が有ります。

私の講演のあと昭和薬科大学教授田代真一先生が研究の一端を講演されました。

漢方薬が効く事の薬理学的(科学的)解明であった。先生は講演後の食事会で私の傍にお出でになりに私のコップにビールを注ぎながら…

“先生(私の事)頑張って多くの患者さんを救ってあげて下さい、先生はパウロです。私(田代先生)はザビエルとなってエビデンス(証拠、根拠)を確立し、医療界を納得させますから…”と話された事があります。

 これからは西洋医学と東洋医学が“真の”合体をした新しい感性を持った医療が待ち望まれている様に思います。

西洋医がむやみに漢方薬を処方するのではなく、人の“心”を中心に据えた真の東西合体医療が待ち望まれているのではないでしょうか。

大津男声合唱団 monthly booklet 「ハーモニー」寄稿文より

30号 漢方の風 ーアトピー性皮膚炎の根治療法

2012-01-12

 比叡山延暦寺の根本中堂は織田信長の焼き討ち後、徳川家光により1642年に再建された。根本中堂を支える76本の柱は全て直径67cmに統一されていると新聞記事で読んだ。使われている木材は欅(けやき)だそうですが、腐朽し易い材芯を避けるが為に直径2mの欅を縦に4分割して夫々を1本の柱としている可能性があるらしい。つまり1本の木から4本の柱を作っている。耐用年数は800年で、築後約310年の1955年に腐朽した部分を取り除き、「根継ぎ」の技法で修理が行われている。耐用期限の800年後(西暦2400年頃)には、確実に木材の調達は不可能である(日本では伐採が祟って、多くの神社仏閣の大柱を海外から調達しているのが現状である)。そこで延暦寺は遠い先を見て10年前から比叡山中に欅を育てている。(無事育つ確率は10%だそうです)。又、創建時、檜(ひのき)の調達が難しかったが為に止む無く欅を使ったとも云われている。調査研究で腐朽の一番の原因は木の乾燥が充分で無かった為と考えられている。

 

 奇跡的に大空襲による焼失から逃れた姫路城の昭和の大改築は1955年から行われた。その2年前からの調査で天守閣を支えている東西の2本の大柱が夫々東南に50数cmずれている事が判明した。更に調査でその一本の西の大柱が芯から腐朽しており、継ぎ足しもまま成らない状況で再利用が出来ない事が判明し、直径1m以上長さ20数mの檜を探すことになった。やっとの事で木曽の山中で見つけたものの、切り出す途中で折れてしまい、工事は中断した。暫くして、同じ木曽の山中で2本目の檜を見つけ、山林鉄道で搬送途中、崖の所で重さに耐えられなくて、16mの所で折れてしまい、その先の部分(約11m)は谷底に落ちてしまった。その時の事故の場面はNHKのドキュメント放送でも捉えていた。結局、その残った16mの檜に姫路近郊の神社の境内の檜を継ぎ足して(木組みして)西の大柱として、無事、大天主は改築されたのである。

 

 延暦寺の根本中堂の柱は腐朽し易い芯を避けるが為に4分割したもので、姫路城の西の大柱も芯から腐朽が始まっており、漢方医学から見て、アトピー性皮膚炎の原因と通じる所がある。つまりアトピー性皮膚炎も体内、若しくは皮下の「湿」がそもそもの元凶であるからである。ステロイド剤は体内に湿を貯め込むが故にあとあと様々な問題を惹起するのである。しかし乍ら素早く炎症や痒みを抑える即効性があるのでそれを使用する有用性はある。その場合も湿を溜め込まない為に、未病を治す意味も含めて漢方薬を利用すると良いのは自明の理であろう。かと言って、なかがわ漢方堂では大半の患者様にステロイド剤は極力避けて頂いております。

 

 体内の湿(湿熱)を如何に取るかがアトピー性皮膚炎の漢方治療なのですが、その一方、痒みは心の火(厥陰心包経)を冷ます事で治療出来ます。詳しくは“漢方の風”28号をお読み下さい。甘い食べものは糖質(炭水化物)で細胞内のミトコンドリアのTCAサイクルで炭酸ガスと水に分解される。乃ち、湿を発生する。甘さのおっかけっこをしている現代社会の犠牲者が、つまりアトピー性皮膚炎や糖尿病の患者様である。

 

 湿(水)は様々な問題を惹き起こす。関節部位に溜まると関節炎になる。膝痛、腰痛、五十肩には防已黄耆湯、越婢加朮湯、疎経活血湯、ヨクイニン等で湿を取り除く。脳の網様体の湿(頭重、眩暈、耳鳴り、他)には半夏白朮天麻湯、温胆湯、当帰芍薬散、他から撰用する。産婦人科領域では、多嚢胞性卵巣も湿が絡んでいる。

 

 昔から石や鉄を多用せず木を使う日本の建築様式に係る人は木の特性を熟知している。木材の一番の敵は内外の湿である。東洋医学も又、湿は邪となり得ると捉えている。木も人間も自然の中に存在しており湿とのせめぎ合いの中で健やかさを保っている。

(大津市薬会報 2012年1月号掲載)

28号 漢方の風 ーアトピー性皮膚炎

2011-05-21

 東日本大震災に被災された方々には衷心よりお見舞い申し上げます。又、お亡くなりになられた御霊に十念(南無阿弥陀仏)を唱和し、ご家族には哀悼の意を表します。

宮古市の重茂半島の姉吉地区には先人が海抜60mの場所に“此処より下に家を建てるな”と刻んだ石碑を遺しているそうで、重茂地区の住民は以来それを守って来た結果、全ての世帯が今回の大地震の津波から被災を免れたと報じられていた。現代の科学的予測の或を超えた大津波の災禍から免れた先人の知恵の確かさを顧慮しなければならない。今回の大震災を見るに付け科学的根拠の危うさ(高さと強固さを計算して作られた防潮提と防波堤が破壊された等)を露呈したと言っても過言ではない。福島の原子力発電所も又、然りである。ダブルフェイルセーフ以上の安全を担保する知恵を絞らなければならない。想定外だったではすまされない…。佐藤栄佐久前福島県知事は起こるべくして起こったと憤っておられます。(前知事は原子力発電推進派でもあるが、原子力政策の隠蔽体質と闘って来られた)

アトピー性皮膚炎の治療においても、同じ事が言えると私は考えております。例えば、喘息の漢方治療をする時には背の青い魚だけでなく肉食をも極力避けるようにして戴く。これは先人の古書に書いてあることなのですが、漢方の臨床では経験的に実践して好結果を得ています。同様にアトピー性皮膚炎の治療においてもアレルゲン検査も大切ですが、何よりも大切な事は湿熱を溜め込まない食し方をする事と考えています。従って漢方治療では、間違った食生活から発生した湿熱を如何に捌くかを徹底して行うと、重度のアトピー性皮膚炎でさえ自然に元の綺麗な皮膚に戻るのである。湿熱を発生させる可能性のあるステロイド療法は漢方医学的にはしてはいけない事になるのですが、一時避難的には有効な手立てではあると考えております。

 

 湿熱とは湿邪と熱邪がくっ付いたもの。湿度の高い日本では湿邪(湿気)が外因(外敵)として皮膚を攻めて来る(風の邪が表を攻めて来て守りきれず発症するのが風邪と同じ考え)。昔なら汗をかいて皮下の湿を発散したものですが、冷房完備下の環境では発散は不可。それどころか口からは更に追い討ちをかける様に必要以上のジュース、ビール、アイス等の飲食物を摂る。内外から湿に攻められる結果、体中(細胞から組織、器官、夫々の間隙迄も)水が氾濫する。一方、フライ物、生クリーム、スナック菓子、インスタント食品等の甘食厚味な食べものの摂取過多が熱を生じ、地球温暖化も相俟って“湿熱”が出来上がるのである。この湿熱が体中を席巻し心の火と出合って強烈な痒みを発するのである。又、有機物を含んでいるであろう黄砂や花粉、ホルマリン、トルエン等が皮膚を攻め立て、体の防衛軍である衛気(えき:体表を守っている気)と遭遇し熱を生じ、湿熱は更に増長するのである。

 

 漢方薬でこれらの湿熱を捌き、一方、口からは前出の飲食物の制限をすると、あれほど頑固なアトピー性皮膚炎も改善して来るのである。これらの漢方理論及び食養生を“想定外だった”と社会が顧慮する日が来ると、反省が生まれ、より健康的な生活が保障されるであろう。何よりも医療費の削減迄もやってのける事が出来るでしょう。 ここで、あと一つ弁証しなければならない事が有ります。それは現代社会の作り出したストレスが火と化し病証を悪化されておられる患者さんも多く見られる事です。

漢方医学では肺は皮毛を主り、脾(大雑把に言えば胃腸機能)は肌肉を主ると言います。従ってアトピー性皮膚炎は肺と脾の病証といえます。又湿熱の充満しきっている少陽三焦と表裏関係にある心包経の病証とも言えます。又先天の腎の虚も考える必要が有ります。

 

 消風散、十味敗毒散、黄連解毒湯、辛夷清肺湯、六味丸、補中益気湯、猪苓湯、三物黄?湯、当帰飲子、温経湯、四逆散、加味逍遙散、荊艾連翹湯、抑肝散加陳半、麻杏甘石湯、地竜、越婢加朮湯、白虎加人参湯、竜胆瀉肝湯、柴胡桂枝湯辺りから3~4処方をうまく使い分けて治療します。治療には苦心惨憺するものの長年苦しんでこられた重症のアトピーが治って行かれる患者さんの笑顔に接し、漢方医学を勉強して良かったとつくづく感じております。

(大津市薬会報 2011年5月号掲載)

22号 漢方の風 ーアトピー性皮膚炎ー

2009-10-19

 知り合いのAさんの息子さんは、幼少の頃からアトピー性皮膚炎で悩んでいました。彼のお母さんは、かなり神経質な方で、傍(はた)から見ていても、その息子さんには、あれこれ“口うるさく”接しているのが見て取れる程であった。その息子さんには、ルイボスティーを勧めて飲んで頂いておりました。ルイボスティーを飲むと、確かに、カサカサの肌が綺麗になるとの事で長らく愛飲して頂きました。私から言わせると、本来の病因は、母親、乃ち“母原病”なのであるが(全てのアトピー性皮膚炎がそうだとは限りません)、その事を話すと、話がややこしくなるので、取り敢えずルイボスティーで事を済ませていたのである。然しながら、ねらい通りに、よく反応してくれました。母親からのストレスが脾(消化吸収機能)に影響を与え、ペプシンによる蛋白の消化が圧迫を受け、本来より分子量の大きいペプチドが生じ、それがアレルゲンと成り、アトピー性皮膚炎を引き起こしていたのであろうと考えたからである。それは、漢方の世界で、補中益気湯が脾気を高め、更に、水を捌(さば)いて呉れる作用を利用して、アトピー性皮膚炎に使用される事と通ずる所が有ります。その母親には、抑肝散なり加味逍遥散辺りを服用して頂くと、更に効果的であったであろう。

 

 私と、ルイボスティー(学名 アスパラサスリネアリス)との出会いは20数年前になります。当時は、カフェインを含まず、スカベンジャー機能を高めてくれ、皮膚が綺麗になりますといったキャッチコピーで販売しておりました。多くの人に飲んで頂いている間に、あるお客さんが、庭の枯れかかった木の根っこに煮出し終えたティーバッグを置いていた所、枯れる筈の木が花を咲かせたので、ビックリしたと仰有れ、何かしらのパワーを持っていると確信を持ちました。

 

 南アフリカ原産のこのお茶は、微量ミネラルやケルセチン(フラボノイド)を多く含有し、脾の働きを改善し、腸管の蠕動運動を促して便通を良くして便秘を改善したり、又、蛋白質の消化を良くして、より分子量の小さいペプチドにしてくれて、アレルゲンを少なくして、アトピー性皮膚炎を改善してくれるのであろうと私なりに解釈しております。因みにルイボスティーは巷に多く売られておりますが、粗悪品が多く、よく撰品する必要があります。

 

 アトピー性皮膚炎を治すには、食事に気をつけなければなりません。少なくとも昭和30年台の食事にすると自然にアトピー性皮膚炎は治るものと確信してはおりますが、その一方、生活水にも気をつける必要があります。昔の琵琶湖のクラスターの小さい、カルシウム始めミネラルたっぷりの水を摂る事が大切なのですが…。

 

 漢方では、アトピー性皮膚炎は“湿熱”が、諸悪の根源と考えます。甘いもの、油で揚げたもの、炭酸飲料、ビール、生クリーム製品等、枚挙に暇がありません。昭和30年台には、そう簡単に、口に入らないものばかりです。“湿熱”を引き起こす食べ物が氾濫している現代では、アトピー性皮膚炎や花粉症を、いつ発症してもおかしくないのである。昭和30年台の大津の朝は、納豆売り、瀬田川シジミ売り、煮豆売り等の独特の行商人の売り言葉で朝がやって来たものです。現代では、朝食はマーガリンのトースト、コーヒー、ミルク、甘いジャム、目玉焼きといった所でしょうか。東洋の思想を学校教育、栄養学、医学が取り入れなければ、医療費の削減にはならないであろう。

 

 アトピー性皮膚炎を治すには、黄連解毒湯、温清飲、補中益気湯、猪苓湯、黄ギ建中湯、加味逍遥散、抑肝散、十味敗毒湯、白虎加人参湯、麻黄附子細辛湯、辛夷清肺湯、桂枝湯加黄ギ、消風散、越婢加朮湯、桂枝人参湯、三物黄ゴン湯、六味丸等から撰用すれば良い。  アトピー性皮膚炎治療で、ステロイド剤を多用し、腎の陰精を傷つけると、漢方的手立てを打たなければ、取り返しの着かない状況を招きかねない。

 

 一口で漢方と言っても、古方、後世要方といった日本の漢方と中国の中医学等がありますが、日本の漢方理論では、なかなかアトピー性皮膚炎は治せません。日本の漢方理論と中医理論を上手くミックスして弁証すると、可なりの確率でアトピー性皮膚炎は“本治”出来ます。つまり、体質改善出来ます(見かけだけの治療を標治と言いますが、体質改善にはなりません)。

 

 食養生無くしては、漢方と言えども治せません。従って、本当の治療をするには、施治者と患者さんが、力を合わせて取り組まなければならないのは言うまでも無いことです。

 (大津市薬会報 2009年 10月号掲載)

8号 ペンギン堂経験記(アトピー性皮膚炎・子宮内膜症・子宮筋腫)

2006-04-22

▲エピソード1) 手指のアトピー性皮膚炎で悩む看護助手の女性

 患者は病院勤めの50歳代の女性で、医療用具の消毒薬を使用する必要から、恐らくそれにかぶれたのであろう。見ると、所どころひび割れがあったり、ガサガサで皮膚が剥離して赤むけ状態の所があったり、所どころ分泌物が出ていて痒みが強く、一見して、正視出来ない程の気の毒な皮膚炎であった。患者は子供の頃からの汗かきで、特に頭に汗をよくかく。又、夜間、尿が一乃至二回ある。便秘気味で、ガスがよく溜まり、硬便を排便する。仕事がハードである為か、疲れ易く、睡眠は熟睡との事であった。漢方的診断で重要なのが、汗の有無と発汗する状態、そして排便の状況である。恐らく発症前は、手に大量の汗をかいていたと推察出来るが、今は手の汗腺がやられ、却って乾燥している。更に質問を重ねた所、人よりも手が熱いという事が分かった。最初、小建中湯と桂苓丸料に、別に知母・地骨皮を加えて服用願った。地骨皮はクコの根皮で、知母共々、手の熱、(煩熱という)をよく取ってくれる。次いで黄ぎを加えて再服して頂き、約四割方改善するも、汗は続いている。痒みもまだあるので、最終的に加味桂枝湯と消風散を兼用して頂いた所、まるで別人の手の様に奇麗になった。コーヒーとパン食を禁じ、米飯に切り替えて頂いた事も見逃せない。

▲エピソード2) 子宮内膜症を併発した不妊症の女性

 患者は長崎県佐世保市に住む36歳の女性で、遠隔地である為、FAXで問診を送付頂き、後はそれを元に電話で証の確定を行った患者さんである。ご主人の精子にも問題があり、妊娠はほぼ不可能である。ご主人は特に子供が欲しい訳でもなく、その後、自らの不妊治療は極めて消極的で、夫婦間の温度差は歴然としている。とにかく、奥さんの不妊を睨み乍ら内膜症の治療をする事になった。訴えは、激しい生理痛と時々生理が遅れる事があり、膣周りのカンジダによる痒みが時々起る。肩こりが強く、足先が冷え、腹が張りガスが溜まる・・・等の訴えがあった。最後に、不可欠な質問事項の汗はなく、便はかなり出にくい事が分かった。以上を漢方的に診断すると、子宮がかなり冷えている事が想像出来る。これは「お血」のなせる業と考え、桂苓丸料に牛膝と延胡索を加えて煎じて頂き、寝る前に桂苓丸加大黄を一回服用して頂いた。最初の30日分で、生理痛がかなり改善し、合計120日分服用後、主治医の診断の結果、悪い所見は全く無く、いつでも妊娠可能と太鼓判を押された。

▲エピソード3) 手術を薦められた月経過多出血を伴う子宮筋腫でお困りの女性

 患者さんは、平成元年にペンギン堂を開店して間なしの患者さんで、大変苦慮して治癒できた思い出深い治験である。昭和24年生まれの方で、来局された時は血色素6.8で、立っているのも大変と思われる程貧血が強かった。立ち眩み、朝の目覚めの悪さ、便秘,下腹部の張りが強く、何よりも筋腫(手拳大)による出血過多で、HRT療法も過日受けていたとの事で、最早、手術しか打つ手がない様な状況であった。どうしても手術したくない理由で、当店の漢方になった訳である。 又、激しい生理痛もこの患者さんを苦しめていた。先ず当帰四逆湯と牛膝・延胡索を同時に煎じて頂いた所、生理痛はほとんどなくなったが、出血量は相変らずで、折衝飲や十全大補湯・?帰膠艾湯等を経て、考え抜いた末、使ったのが温清飲と折衝飲と三七人参の併用であった。生理痛・出血が止まり、長服の結果、いつの間にか筋腫はなくなっていたのであった。

(大津市薬会報 2006年4月号掲載)

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