滋賀県の漢方相談薬局

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9号 漢方の風 未病(妊娠中毒症・風邪のこじれ)

2006-08-02

 黄砂について知ったのは、中学生の授業であった。中国甘粛省の砂漠化が深刻化し、近年黄砂の降る量が増えている。中国本土は当然として、韓国京城の被害は、甚大だそうである。その砂漠化に応じて、生薬の生産への被害も出ているとの事。その砂漠化による影響を遥かに凌ぐ影響といえば、生薬の乱獲だそうである。元はと言えば、日本での、漢方エキス剤の使用の増大が、遠因の一つになっているとも囁かれている。五味子、遠志に至っては、80年台と比べ90%減少したと、chuui.comには書かれている。漢方エキス剤の薬価が下がる一方で、生薬原料の高騰があり、保険収載の扱いが難かしくなる局面はそう遠くないかも知れない。八味地黄丸に処方されている山茱萸は、中国、朝鮮半島で収穫される。実を使用するのだが、中の種を抜き取る手間は想像に難くない。中国経済の上昇を眼のあたりにして見ると手間のかかる生薬の価格の高騰も必然性がある。

 一方、海での乱獲が叫ばれている動物生薬にタツノオトシゴ(Sea Horse)が絶滅の危機に瀕している(絶滅危惧種に指定されている)。フィリピンの島々のサンゴ礁に多く棲息している。香港でのマーケット(日本とも結びついている)の要望にせきたてられ、地元の漁民は、体長10cm以下のもの迄、全て捕獲してマーケットに出すのである。1kgが約2万円の値がつくそうである。中国では喘息、更年期障害、ED等に用いられ、日本では、ドリンク剤に多く配合されている。思うままに食べ思うままに遊び、揚句の果てに、疲れたから海馬入りドリンクを服むのである。人間の果てしない欲望の餌食になっているといっても過言ではない。中医学の言葉に理法方薬がある。法に理って生薬を処方するのである。法とは乃ち、全ゆる東洋医学の知恵の集約と言い換える事が出来る。

 因みに、タツノオトシゴは、オスが赤ちゃんを産み(育てる)ジェンダーフリーの実践派でもある。亡き妻との約束事でもあり、この4月より保険調剤を辞退し、新たに漢方専門薬局を立ち上げた。以前当薬局の担当者であったMRのAさんはお弔みと開店祝いを兼ねて、身重の奥さんと子供を連れて、やって来た。その時の感想をAさんは、自から発行している“F通信”の5月号に記載している。奥さんは妊娠8ヶ月。心配性の奥さんは、舌に黒い斑点が出ているのをつい最近気づいたのである。その心配たるや相当なものであるが、ご主人(Aさん)は、お血やからそんなん心配しなくても良いと、インターネットの画面を開き乍ら説明したそうである。その説明では悩みを払拭出来ず私に相談となった次第である。頭痛とひどい肩こりが辛いとの事。そこで、問診となったのであるが、浮腫みと尿の出方を確認した所、見た目には浮腫んでいないが、尿の回数が20回と多い事が判明した。このままで行くと必ず浮腫む。乃ち妊娠中毒症になる可能性が充分ある。所謂る未病である。ここで、当芍散と五苓散を交互に服用する様指示をした所、3日目で尿回数が減り、5日目で頭痛、肩こりが消えた、2週間目から舌の黒点が薄くなってきたと“F通信”では絶賛している。

 若し私の所へ来ていなかったら、“ヤバイ事”になっていたかも知れないと思っているのは私だけである。仕事柄、“人”を観察してしまう癖がある私は、連れて来た子供が気になって仕方がないのである。そこで何気なく、問診した所、納豆を食べさせると口がはれるとの事等が聞かれた。その間、しきりにペットボトルのお茶を欲しがるのである。又水洟が少し出ている。昨年末に尿道炎をおこしたが、漢方的治療は、行っていない、近医の小児科で抗菌剤を処方して頂き、治ったとの事も分った。小柴胡湯と小建中湯を服ませる様指示をして、その家族は帰った。“F通信”では7日目で納豆を食べさせても、口が赤く腫れなくなった、水洟が止まり、お茶の量が減った事も書かれている。未病の観点から言えば、そのお子さんの将来に立ちはだかる“ある部分”は、払拭出来たと私だけが思っている。 生前Aさんの人柄が気に入っていた妻がその家族を呼び寄せたと信じて止まない。安産をお祈りします。

(大津市薬会報 2006年8月号掲載)

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