滋賀県の漢方相談薬局

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漢方の風音 11号 片頭痛・月経痛・便秘(五積散の使い方)

2019-01-24

漢方塾…片頭痛・月経痛・便秘(五積散の使い方)

なかがわ漢方堂薬局 中川義雄


先日、長年行きたかった壱岐の島に行ってきた。中学の「地理」で勉強した時に何故か行ってみたいと思った所が2か所あって1つが北海道の然別湖で、あと1つが壱岐の島であった。然別湖は過去に二度行きましたが壱岐の島は今回が初めてで長年の夢が叶いました。博多からジェット船に乗り1時間強で渡島出来ます。日本の3大遺跡の1つである原(はる)の辻遺跡(3大遺跡※1:登呂遺跡、吉野ケ里遺跡、原の辻遺跡)があって、弥生時代にこの小さな島に大陸文化が渡って来て交易が始まりとても栄えた事は驚きであった。因みに魏志倭人伝に壱岐国(一支国:いきこく)の記述があります。


島には戦時中に作られた巨大砲台あとがあり、又、島の近くの沖合に自衛隊の護衛艦らしき艦船が2隻停泊しており本土を守る前線に近い場所である事を思い知りました。
執権北条時宗の鎌倉時代に日本の征服を試みた元のフビライハンは先ず大陸に近い対馬で残虐な殺戮を繰り返し、次いで壱岐の島でも同様に殺戮を行い、九州上陸を果たそうとしました。所謂、蒙古襲来(元寇)である。
つまり対馬、壱岐は大陸から日本本土への中継地点でその昔大陸文化が壱岐の国にやって来て交易が盛んになり栄えた事は十分想像できる。因みに対馬と九州の中間地点に壱岐の島があります。
旅の途中私の専門の漢方医学はこの壱岐の国の繁栄があったにも拘らず何の説明も文書も耳にも目にもしなかったのは、卑弥呼の邪馬台国の時代の医学は「巫医」※2(ふい)であったからであろう。卑弥呼そのものが巫医を行っていたとされる時代であり、漢方医学が無かった事は想像できる。
我が国で、漢方医学が初めて登場したのは平安時代に中国の宋・金元医学を学んだ丹波康頼が著した医心方が始まりで、それ以前の弥生時代の壱岐国(一支国)では存在していなかったのは当然であろう。
中国の張機(字名を張仲景と言う)が著した最古の医学書「傷寒論」は後漢(AD25~220年)の時代で日本では弥生時代後期に相当し魏志倭人伝(AD290年頃)に記載されている邪馬台国・卑弥呼(AD240年頃没)の時代である。壱岐国(一支国)の原の辻遺跡はBC300年~AD300年頃迄とされており大陸と交易が有ったとしても漢方医学は伝来していなかったのは当然であろう。


端を更め、今回は今まで漢方塾で出て来なかった五積散の使用経験を書いて見たいと思います。(五積散:当薬局ではエキス剤ではなく原末散剤を使用しています)


片頭痛でお困りのAさんは元来冷え症で、冷えが強くなるとのぼせも同時に起こって来る。同時に前後にやって来る月経は激痛を伴い、耐えがたいと言う。肩凝り、鳩尾の痞え、耳鳴り、眩暈、動悸、微熱もあって訴えを聞いている私も同情を禁じ得ません。


五積散は“気血痰寒食“による積聚(つまり五積)を取るとされている。構成生薬は当帰、芍薬、川芎、白朮、茯苓、厚朴、陳皮、半夏、白芷、枳殻、桔梗、乾姜、桂枝、麻黄、甘草、大棗で構成されており、桂枝湯、麻黄湯、半夏厚朴湯、苓桂朮甘湯、苓姜朮甘湯、二陳湯、平胃散、四物湯の方意を含んでいる。


そこでAさんには五積散に呉茱萸、延胡索を併服して頂き、頓服に呉茱萸湯を服用して頂いております。


Bさんはやはり頭痛、胃痛、胸やけ、悪心、強い月経痛、疲れやすい、お腹が張る(腹満)、痺れ、冷え性でお困りです。この女性にも五積散に呉茱萸、延胡索、時に香附子を兼用して頂いた所、具合が良く長期に服用して頂いております。


Cさんは赤ら顔で冷え性、便秘でお困りの年配の女性で五積散と麻子仁丸を兼用して長期に亘って服用頂きました。服用後体調が良く排便もスムーズでとても喜んで戴きましたが高年齢で残念ながらお亡くなりになりました。この女性は痩せ型で冷え性にも拘わらず何れかの薬局で三黄瀉心湯(大黄が入っている)の錠剤を進められて長く服用されておられました。三黄瀉心湯は冷やす作用が強い為、当然この女性は排便は出来るものの快便にはならず結果的には更なる便秘体質を生じる事になる。
他には腰痛、冷えを伴う婦人病に良く使って居ります。


※1登呂遺跡、吉野ケ里遺跡、長野県の平出(ひらいで)遺跡を3大遺跡と称する事もある
※2《「ぶい」とも》巫女 (みこ) と医者。また、両者の役割を兼ねた者。

漢方の風音 10号 漢方書との出会い(化膿症、腫物)

2018-10-30

漢方書との出会い(化膿症、腫物)

      

中川 義雄

昭和44年大学を卒業して直ちに製薬企業に就職し、MR(Medical Representative :医薬情報担当者とは名ばかりで当時はプロパーと称し、添付による値引き合戦やドクターへの贈り物等の手段による自社製品販売が主要な仕事であったが、時に本来の医薬情報業務をする事もあった)の立場で医療界に身を置きましたが、業務内容が馴染めず1年足らずで退社しチェーン薬局に再就職しました。スーパーのテナントの薬局の店長として赴任して間もなく、先輩の岡本先生(故人)…彼も又、製薬会社に就職されましたが肌に合わなかったのかは承知していませんが早期退社して同じチェーン薬局に再就職されました…から奨めて頂いたのが大塚敬節著「症候による漢方治療の実際」と言う分厚い漢方の専門書です。当時の製薬企業の初任給が2万~3万円の時代に1冊が4000円で非常に高価な本でした。

然しながらこの一冊は、仕事内容は勿論の事、西洋医学になにか違和感を感じていた私に強烈なインパクトを与えてくれました。その違和感とは、西洋医学は感染症に対しての抗生物質は別にして慢性疾患に対しての真の治療である体質改善をすることが果たして出来るのであろうかと言う疑問であった。

当時、漢方理論が有る事も知らなかった私でしたが(漢方は経験医学で理論は無いと思っていた)、本を開いて見ると、めまい、片頭痛、咳、排尿異常、不妊、肩こり、悪心、視力障害、嚥下障害、等の漢方治療法が口訣(くけつ)の様に事細かく書かれていて無我夢中で読み、読んでいる途中からどんどんと面白くなって来て忽ち読み切りました。読後は人生を左右するとても大きな希望と灯りを与えてくれました。 それは、私が小学生低学年の時、隣近所の3名の先輩(3歳から6歳年長)に、探検と称し、連れられ、逢坂小学校の奥の朝日ヶ丘から浅井山の奥へ奥へと分け入り、途中から道に迷い、幼少だった私は必死の思いで後をついて行き、その内に日が暮れてきてほぼ暗闇の中を歩くことになりました。彷徨い歩いている内に漸く遠くで一軒家の窓明かりを見つけました。辿り着いたところは膳所の山里でした。この本との出会いはその時の灯りを見つけた時の感動に似た出来事でした。


そんな折「化膿症、腫物」編の最初に記載されている「十味敗毒湯」の使い方を読んでいたが為に一命が救えた奇跡の様な経験をしました。

スーパーのテナントの薬局の店長として働いていた24歳の頃の経験です。定期的に500グラムの平綿(ひらめん)を買いに来られるお客さんがおられました。余りにも何度も買いに来られますので、ある日、思い切ってその用途を聞いてみたのである。病名は不確かですが要約すると最初、足の指が化膿して腐敗した為に指を切断した。すると暫くすると切断部が再度化膿して腐敗してきた為に足首から先を切断したとの事。すると、暫くして再度切断部分が化膿して腐敗して来たので今度は膝の部分を切断したとの事。再度、同様に化膿、腐敗してきたので大腿部を切断した。私が思い切って訊ねてみた時が当にその大腿部が化膿してきた時であった。次は最早、切断部が無いので途方に暮れて、死を覚悟しているとの事でした。

そこで、化膿症、腫物編に書いてある「十味敗毒湯」を大塚敬節先生の本を開いて、見せながらひょっとしたら効果が有るかも知れないと思いお薦めしたのである。

数日後、すっかり忘れていた頃にそのお客さんが、ふと来店されまして、化膿が止まったので更に1箱を買いに来たとの事でした。更にその数日後、すっかり傷跡が綺麗になったと菓子折りを持ってお礼に来られました。因みにその時の十味敗毒湯は原末と釜で煎じたエキス剤とを混ぜ合わせた製剤であり、原末が入っていた事が功を奏したのだろうと思って居ります。

その後、妊娠中毒症後の腎炎(蛋白+4、尿潜血?+)で強い倦怠感の方に柴苓湯で、潰瘍性大腸炎で人工肛門の施術日程が決まっていた方が帰耆建中湯他で手術を回避出来た方、心臓の病気(病名は不明)で手術日が決まっていた方が手術を回避出来た…等この大塚敬節先生の本を参考にして多くの方の健康に寄与出来た。

そののち、陰陽虚実の弁証法や五行論、気血水(きけつすい)理論を勉強して、再度読み返した時、この本の真の素晴らしさが理解出来、更に様々な疾患でお悩みの方の治療のお手伝いが出来るようになりました。今ではこの十味敗毒湯の使い方はただ闇雲に使っては駄目で十味敗毒湯“証”(症では無く)を把握した上で使用すると様々化膿性疾患を上手く治療する事が出来ます。現在の当薬局では抗生物質代わりに他処方として「荊防敗毒散」「千金内托散」をよく使います。


大学の2年先輩で同じMRを経験して薬局に転職された同じ境遇の故岡本邦夫先生は西洋医学に自分の道を見いだせず東洋医学に関心を持ち大塚敬節先生の本と出会い、後輩の私に勧めてくれました。

故岡本邦夫先輩には今なお感謝しております。因みに岡本邦夫先生は大学の合唱団の先輩で音楽的素養が素晴らしく私が入団した時の指揮者で選曲が「眠れ幼き魂」「童謡」「真間の手古奈」「スティーブンフォスター集」「旅」「蔵王」「子守歌」「富士山」等、反戦の歌からミュージカル、童謡迄幅広いレパートリーを目指されておりました。

漢方の風音 9号 腸内フローラ 自律神経失調症 生理痛 口内炎

2018-02-11

腸内フローラ。自律神経失調症。生理痛。口内炎

      

なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄(昭)

可成り以前、口内炎と腸内細菌とその漢方治療について薬剤師会の会報に寄稿した事が有ります。

通常は腸管内に有るある種の細菌がビタミンB2を作り出し、そのビタミンB2が補酵素として働いて代謝(クエン酸サイクル)を円滑にして口内炎を防いでいるのだが、そのB2生産細菌が何らかの理由で減少した時に口内炎が発症します。漢方医学では<上熱下寒>と言ってお腹が冷えてゴロゴロと鳴ってトイレに行き下痢をする(下寒)…その結果、ビタミンB2生産細菌を下痢で消失する。一方、上半身は熱を持ってニキビが発生したり脳が興奮して不眠だったり、又、炎症を発生しやすい状況を作り出す(上熱)。その結果、その両面が相まって口内炎が発生します。

上半身は熱を持ち下半身(お腹)は冷えて下痢をする時に半夏瀉心湯を服用してお腹を温め、(上である)口内の熱を冷ますとその細菌が再び増殖してビタミンB2を作り出し、その結果、口内炎は治癒するのである。

これは腸管内の細菌が人の健康に大いに係っている。つまり後出の腸内フローラが疾病に関与している事を示唆しているのですが当時、今ほど腸管と健康の因果関係は分かっていなかった。只、アメリカのハウザー食の提唱者であるゲイロード・ハウザー博士は腸管と健康の関係を説いて、乳酸菌、酵母を主成分にしたハウザーローヤルを上市していた。同時にハウザー小麦胚芽とケールを主成分にした緑の野菜…ハウザーグリーンを摂取することを提唱して健康長寿法を説いた。当時、医学界はその説には殆ど関心が無かった様に思います。


最近、その腸管内の細菌叢(腸内フローラ)と疾病との関係が多方面(主にアメリカ)で研究、発表されている。アメリカでは慢性疲労症候群や鬱病、肥満の患者さんに健康な人の糞便を移植して夫々の疾患を治療する試みがなされて良い成績を収めている。

最近では30種類の病気と腸内フローラが関係していることが解明されている。糖尿病、癌、肥満、アレルギー、鬱病、慢性疲労症候群などである。

腸内フローラはテレビで再三、取り上げられて放映されており、視聴された方も多いかと思います。

そこで、漢方医学と腸内フローラとの関係を考えて見ましょう。

四逆散(柴胡・芍薬・枳実・炒甘草)と言う漢方処方が有ります。この処方薬は「肝気鬱結」を目標に使用します。肝気鬱結とは肝の本来の働きが疏滞した状態を言います。肝は感情、情緒を主っていますので、肝の気が疏滞すると感情、情緒が鬱滞します。つまり、鬱症状や不安感やイライラ、自律神経失調症と言った症状が出てきます。肝の経絡は子宮、卵巣に繋がっていますので生理痛や月経不順も出てきます。「五行論」では肝は自然界の木に配当します。木は土(土壌)の栄養を吸い上げて宇宙へ向かってノビノビと伸びて行きます。謂わば、土の犠牲の上に乗っかって居るわけです。従って木と土は良好な関係ではありません。

臨床では、四逆散は木(自律神経等)が伸びやかでない時に効果を発揮してくれます。

肝の気が異常になれば「脾」である土(土壌)にも悪影響を及ぼしてきます。「脾」とは胃、腸管などの消化器官全般を主る臓器を言い、自然界では土に配当します。現代医学の脾臓とは違います。

ここで、自律神経と消化器官、主に腸管との関係が分かって来ます。正常な腸の働きと自律神経、脳神経には相関関係がある訳です。

自律神経が安定し感情が安定している時は腸内も安定している事が理解出来、感情が鬱的であったり、ストレスを受けている時は腸内フローラも正常さを失う事になるのである。

正常な脳のネットワークを維持する為の主な刺激電動物質はセロトニンである。人体のセロトニン分布は腸管が90%で脳内が2%であり、最近の研究で脳内のセロトニンは腸管から供給されていることが解明されている。腸内環境が良いと脳にセロトニンを確り供給出来る事が想像できます。

以上の事を踏まえると肝の気の鬱結を治療する「四逆散」の重要さが分かります。

以前、※大津市薬剤師会の会誌に腸管侵漏症(腸漏れ)の記事を書いたことが有りますが、その内容は本来吸収されない分子量の大きい物質(ホルモン剤や未消化の蛋白質等)がひび割れした腸管から侵入して腸管の神経叢と抗原抗体反応を起こし、腸管の神経叢と発生学的に同じ脳内の神経に抗原抗体反応が波及して委縮症やパーキンソン病を惹起していると言うものである。これも又、腸と脳の病気の関係性を言ったものです。

※詳しくは当ホームページに記載してあります。

漢方の風音 8号 阿膠(アキョウ)

2016-12-08

甲状腺機能亢進症。結代脈。膀胱炎。

バリトン 中川 義雄

随分長い期間、気になっていたアメリカの大統領選挙が終わった。ヒラリーに投票した人達の落胆さはイギリスのEU脱退に反対した人達以上のものが有る様に思える。

ラスベガスのトランプタワーで働く下流層の従業員(ヒスパニック系の女性従業員が70%を占めている)の時間給の低さは言うに及ばず、労働組合(ユニオン)の設置を妨害したりで、女性従業員は全てにおいて虐げられている。

その彼女達はトランプの会社の従業員にも拘らずヒラリーに投票したと公言して憚らない。

全米のヒラリー支持者は明日の希望が持てないと虚脱感に苛まれた。一部の支持者は“トランプは我々の大統領ではない”とデモを繰り広げた。


トランプが大統領に就任した暁には日本においてとても気になるのが防衛費の問題であろう。

アメリカの軍事費がGDPの3.3%に対して日本の軍事費が0.99%だからその差の2.31%を埋め合わせる負担を日本、ひいては韓国、NATO等に求めると選挙演説で語った。

最近のニュースで、ウクライナへのロシア軍の侵攻を目の当たりにしたポーランドの若者達はロシアの侵攻に備えて自主的に軍事訓練を行っていると伝えている。

今の緊迫した世界の渦中にあって日本は如何なる道を執るのであろうか。

或るジャーナリストがアメリカ軍は今現在何も日本を守っていないのが現状でトランプが日本から米軍を撤退すると言えばどうぞ撤退して下さいと応じれば良いと記事に書いていた。(今の日本にはその様な度胸を持っている政治家はいないとも書いていた)。

米軍に使っている年間5000億円~7000億円の費用が浮いてくるし、就中、沖縄県民の念願が叶うと言うものである。

因みに中国の軍事費は1.6%と言われている。


その中国で最近気になっているインデペンド紙の記事を米CNNで放送していた。

記事の内容はロバの輸入の事(爆買)で中国がやり玉に挙げられていると言うものである。

爆買先はアフリカ諸国である。ロバの皮を除毛した後に皮を煮詰めて作ったのが阿膠(アキョウ)であり、漢方医学ではとても重要な生薬である。

つまりロバの爆買はロバから作られる生薬の阿膠が目的なのである。阿膠の効能は生血、止血、潤肺(咳止め)、滋養等で使用される。又、ある種の不妊治療(これが一番重要である)には無くてはならない生薬でもある。

膀胱炎、尿道炎で血尿が出ている時は阿膠が含まれている猪苓湯で止血出来る訳である。中国山東省東阿県の阿膠が最も品質が良く当薬局でも創業以来ずっと山東阿膠を仕入れている(十数年前山東阿膠が品薄で仕入れられない時期がありましたが…)。

中国山東省の農家では畑の耕作や運搬にロバを使っていたのだが農機具、トラクターの普及と共にロバを飼育する農家が激減した為に阿膠が不足しているのである。

20年前と比較すると1100万頭いたロバが年に30万頭ずつ激減して現在では600万頭になっている。

業界では牛、馬、豚で作った偽物の阿膠が出回っている次第である。そこで中国人が目を着けたのがアフリカである。


因みに阿膠を使用している処方は前出の“猪苓湯”始め“温経湯”“黄連阿膠湯※”“婦人宝”“芎帰膠艾湯”“炙甘草湯”等がある。

どれも重要な処方である。例えば甲状腺機能亢進や脈の結代や極度の疲労には炙甘草湯が月経不順等の婦人科系疾患には温経湯が無くてはならない。


そのアフリカの農業の市場規模は現在29兆円であるが20年先では92兆円が見込まれており世界の穀倉地帯に成長する事は必至である。

2025年までに中国のアフリカ投資は100兆円になるとの事。食料自給不足の日本にとっては他人事ではない。

幸いに南鳥島近海の海底に多量の希土類(レアアース)が見つかって居り、それを基に、又、独自の技術力で日本は何とか生き延びられそうである。

話しがそれましたが西アフリカのブルキナワアソでの第1四半期のロバの輸出量は18000頭で、1年で72000頭になろうとしていて、急遽ブルキナワアソの政府は輸出を禁止した。同様にニジェールも輸出を禁止した。

ニジェールでは数年前は1頭3500円だったのが今や15000円になっている。そこに目を付けた経済力のあるケニア、南アフリカはロバの飼育を開始して積極的に取引を始めている。

アフリカにも南北問題が有り、富める国は益々富むのである。アフリカ南部のボツアナではロバの密輸組織がブラックマーケットでロバを売り捌いている所を捉えられた。


記事では爆買している中国人を批判しているがその阿膠を大量に消費しているのが日本である。漢方薬は生薬である。

陰陽虚実に則った理法方薬の弁証の基に漢方薬を使用し、ロバの命を無駄にしない様に販売、投薬していきたいものである。


※黄連阿膠湯…傷寒論(しょうかん論)の少陰病(しょういん病)篇に記載されている。目標は内熱が有って体液が枯燥し、熱が心胸に差し迫り胸苦しくて眠れない。傷寒論では臥する事を得ずと記載されている。


私自身の治験では難病疾患で死期迫った年長の女性がベッドの上で煩躁甚だしく苦しくて何日も寝ていない。

看病している家族もその苦悶している姿を見るにつけいたたまれなく疲労困憊している…と相談を受けた。

問診をしたところ患者は氷を口に入れる事を盛んに乞う事が解り、黄連阿膠湯証と弁証した。

家族は早速煎じて主治医の同意を得て与えた所、暫くしてスヤスヤと気持ちよさそうに眠りについた、と大変喜ばれた。

漢方の風音 7号 学生時代の思い出(副題:嗄声、小児疝痛、心臓病、冷え性…について)

2015-10-09

バリトン 中川 義雄

生来、小脳(運動神経)の働きの良さが有ったためか、体育の通知票の評価は高校二年を除いて全て最高の評価を頂きました。

中でも球技(野球は勿論、サッカー、バスケット、バレー、ハンドボール)は特に群を抜いていたと自他ともに認めるところです。

中学時代は野球部に所属し、1番バッターで打撃、選球眼、盗塁と野球センスは良かった。当時は大津市内の町単位の少年野球大会が有り、キャプテンをした中学二年次はキャッチャーで4番を任され、中央学区の大会で優勝して皇子山球場での決勝大会に進んだものです。

高校時代はラグビー部に所属し、足の速さを認められウイング(右)を任されたものの、試合になればトライゲッターより寧ろタックルばかりしていました。

公式試合で相手の選手をタックルで2名骨折させ(夫々別の試合で)、相手チームに目を付けられた。当時、同好会的側面が有った我が高校ラグビー班(部)も全員の努力の甲斐あって滋賀県で優勝し、近畿大会に進出した。進学校乍ら良く頑張ったものである。その時の仲間はその後の人生に大きな自信と影響を持ったと思っています。

私の運動神経の良さは、漢方医学で言う「小建中湯」体質であったからだと思っています。

この小建中湯体質は全員がそうではないが瞬発力が優れている事が間間有ります。

ラグビーで言えばステップを切って(瞬発力)相手選手をかわし突進する事が出来る。反面、この小建中湯体質はスタミナがなく持久力はからっきし駄目な所は特筆すべき所です。従ってこの私の小建中湯体質は放課後の練習後の自宅学習や塾は体力不足で辛いものが有ります。

小学生の内科検診で心臓の精密検査を指摘される事が往々にして有り、多くは成長するにつれて治って行きます。


子供の体質は大きく分けてこの小建中湯体質と小柴胡湯体質(一貫堂漢方医学では柴胡清肝湯体質)に分ける事が出来ます。前者は内向性で心臓、膀胱等のポテンシャルが低く筋肉が冷えやすく、心身共に緊張し易い性向があり、小児疝痛を訴える事が多い。性格は大人しく優しいが時に篤くなります。又、夜尿の傾向が有ります。

漢方医学を実践していると夫々の体質に依って、所謂、未病が分かり、性格までもが或る程度分かります。

例えば、六君子湯加柴胡、芍薬(柴芍六君子湯)体質の人は咽喉が弱く、ある特有の性格を持っている(ここでは省きます)。


大学に入学してからは、音楽好きの私はスポーツを離れて合唱団(混声)に所属した。

コーラス部の二年先輩のSさんが大学のコーラス部と京都男声合唱団とを掛け持ちしていた関係で当時の京都男声合唱団の指揮者であり、創設者でもあった故佐々木日出夫先生(平成13年に他界されたとホームページに記載されている)が我が合唱団の客演指揮をして下さいました。

私の所属していた大学の合唱団の同期の2名も京都男声合唱団に所属していた。

佐々木日出夫先生は大谷大学グリークラブ出身でお寺の住職をされていて、自らのお寺の本堂を練習場とされておりました。私も一度同期のH君に誘われて練習を見学させて頂きました。

先生の合唱に対する情熱は篤く、何より、響きのある美声の持ち主であった。又、優れた“耳”を持っておられ、指揮者として卓越した素養をお持ちでした。

京都と言う、同じ都市名が冠名の合唱団の大津男声合唱団に入団させて頂き、ふと佐々木先生を思い出します。

一回生で佐藤眞作曲“旅“を二回生で”蔵王“を指揮して下さり、猛練習をして合唱の素晴らしさを教えて頂きました。私の合唱に対する思いは先生の影響が大きくかかわって居ります。

ついで乍ら、その頃(3回生、4回生の頃)、地元の大津で8名がバリトンに属しておられます曽根さんを中心に男声合唱団”オクトコーラス“を立ち上げました。入団した経緯は思い出せませんが…。


当時、大学の部室には誰が購入したのか思い出せない龍角散と部費で購入した吸入器が置いてあり、よく使用したものです。龍角散は桔梗、杏仁、セネガ、甘草(何れも国家試験に出る傾向が高い生薬)が主薬で鎮咳去痰作用が有ります。

美声が出る様に期待して龍角散を練習の前や演奏会の前に一匙、口にいれたものですが、美声と鎮咳去痰とは関係性が見当たりませんが、発声が上手く出来る錯覚効果は絶大なものが有りました。

当時は他にも、ボンボックスなる商品名の美声の出る医薬品も有りました。

これは二年先輩のSさんから教わりましたが今、思うと如何なる作用機序だったのだろう。興味が有りますが、廃番となった今では知ることは出来ない。


細野史郎先生の“方証吟味”に声をよく使う人の嗄声の治療法が書いてあります。

外台秘要の四物湯加三味が良く効き、漢方の独壇場であると書かれてあります。又、麦門冬湯合半夏厚朴湯も良いと書いておられます。

因みに私は四小節、ノンブレスを可能にする為に柴胡桂枝湯(時に補中益気湯)と生脈散倍量を併用して演奏会に臨みます。

大津男声合唱団 Monthly booklet Vol 226

漢方の風音 6号 ベートーベンの難聴・耳鳴り

2015-02-12

バリトン 中川 義雄

ベートーベンは古典派3大音楽家の一人。モーツァルトの生誕より十数年後、1770年ドイツのボンで生まれ、20歳代から聴覚障害を患い、その後32曲のピアノソナタ、9曲の交響曲、16曲の弦楽4重奏曲を作曲し、更にピアノ協奏曲やバイオリン協奏曲等多数の作曲が有ります。

彼を楽聖と呼び(私は中学の音楽の授業で音楽の王と習った記憶が有りますが…)、当に音楽の聖人でしょう。

中学生の頃から、クラッシック音楽が好きで、中でもベートーベンが好きで交響曲1番から9番まで、何度も何度も繰り返し聞いたものです。単純な旋律が繰り返し出て来る、それでいて展開が素晴らしい4番が特に好きです。


彼は1827年、56歳で亡くなりましたがその26年前、31歳の時にハイリゲンシュタットで遺書を書いており、彼の死後、隠し引き出しから遺書が見つかっている。

耳鳴り、難聴と戦った苦悩がしるされている。自殺も考えていたとも書き記されている。

若い時にウイーンでピアニストとして活躍していたころ、彼の演奏を聴いた聴衆は余りの感動で涙したと言われている。

モーツアルトの音楽はその音の次の音は想像できるがベートーベンは、どんな音が出て来るか判らない、そこに彼の魅力を感じると言う音楽家もいる。それ程考え抜かれた作曲であり、聖人たる所以である。

当時、宮廷音楽が主流で、貴族をパトロンとして音楽家は生計を立てていたとされている(オーストリアのシェーンブルン宮殿の絵画にはマリアテレジアの婚礼晩餐会の画に幼少のモーツアルトが画かれている、つまりモーツアルトは宮廷音楽の中で育った)がベートーベンはそれを嫌い音楽は芸術であると唱えてその言葉どおり卓越した音楽を今日まで遺したのである。

プライドが高く偏屈者と流布されるがそれを超える高い音楽性が彼を支えていたのであろうか…。

彼の病名は耳硬化症だったのだろうと言われている。つまり感音性難聴ではなく伝音性難聴で耳鳴りとも戦っていたのである。

伝音性難聴は鼓膜の振動が3つの耳小骨、つまり、つち骨、きぬた骨、あぶみ骨と順番に伝わり、最後のあぶみ骨が聴覚神経に振動を伝えて音を認知する仕組みになっているのであるが、伝音性難聴は多くはあぶみ骨の硬化に原因があるとされている。

そして多くは耳鳴りも伴うのである。遺された彼が使った数種類の補聴器を見るにつけ、彼の苦悩が身近に感じられる。

発症原因は女性の罹患率は男性のほぼ2倍あり、ホルモン説も有りますが西洋医学的にはよく解かっていないのが現状である。


ベートーベンが活躍していた頃、日本は江戸時代で、漢方医学は変革の時代で有ったかも知れない。

滋賀県守山で佐々木一族として生まれた曲直瀬道三<室町時代、明へ渡り、李朱(りしゅ)医学を日本へ持ち帰り関東で活躍した田代三喜の弟子。後に戦国時代にかけて京都で啓迪院を開き漢方医学の門下生を育てた偉大な漢方医>が広めた後世要方(ごせいようほう)は廃れ、古医方が盛んに行なわれる様になった時代である。勿論、折衷派もいたであろう。


その時代、若しベートーベンが日本に来ていたら、当時の漢方医学で、耳鳴り、難聴を治せていたのではないだろうかと思って居ります。

完治とは言わないが日常生活に不自由なく生活出来たであろう。又、私にも若干の自信は有ります。


骨(あぶみ骨も含め)の代謝が上手くいかなくて硬化するのは、腎の主り(つかさどり)が上手くいかない為と考えます。

又、偏屈者と言われた所を考えると肝の問題も有ったのかもしれない。そして気を主る肺も考えなければならないしカルシゥムや細胞外マトリックスを考えると脾の働きも考えなければならない。私の経験から、彼の性格を考えると、元々の遠因は耳鼻咽喉を含めた感染から始まっている可能性も視野に入れて考慮しなければならない。


彼から得た様々な情報を五臓の働きと照らし合わせホリスティック的な弁証をすると治療法が見つけられたであろう。

ベートーベンはむしろ耳の障害を負った後、数多くの名作を書き上げたと言われており、耳の治療が上手くいっていたら、若しかしたら、数々の名曲は生まれていなかったかも知れない。


因みに私は、ベートーベン作品全体に溢れている“苦しみを突き抜けて歓喜に至れ”…の言葉が好きです。

漢方の風音 5号 認知症と漢方薬(めまい、耳鳴り、不眠、高血圧)

2014-07-29

バリトン 中川 義雄

 以前の漢方の風音の凌霄花(ノウゼンカズラ)の所で書きましたカギカズラ(釣藤)には,枝から鈎が伸び出て、他の植物などに絡みつこうとする性質が有ります。

枝部には有効成分が少なく、鈎部にリンコフィリン(アルカロイド)なる有効成分が多く含有されております。その鈎が伸びきらない内に採取して薬用に使用します。

最近の分析では葉部に、より多くのリンコフィリンが含有している事が解って来ましたが漢方薬では鈎部を使用します。従って生薬名は釣藤鈎(ちょうとうこう)と言います。

リンコフィリンは血管を拡張して血流を高める作用が2重盲検法で確かめられております。又、精神を安定させる作用もあり、最近では脳血管性認知症に釣藤散を使用されておられる薬剤師、医師が多く見受けられます。

釣藤鈎の働きを漢方医学では“鎮肝熄風(そくふう:風をしずめるの意)”作用と言っており、高血圧、頭痛、子供の夜啼き、耳鳴り、眩暈、不眠等を目標に使用します。気が上衝するのを引き下げる働きがある訳で、謂わば、気の“頭でっかちを”正常に戻す働きと考えると解りやすいと思います。

 

 漢方医学では気・血・水を多角的に弁証します。気と血の上衝を同時に治そうとすれば通導散も認知症に使用します。

気と水を同時に治そうとすれば加味温胆湯になるわけです。

ストレス等で気の滞りが有って血流が悪くなっていて認知症を発症していると弁証出来たら芎帰調血飲第一加減を使用します。(他にも有りますがここでは割愛します)。 総じて、体や脳に悪い影響を及ぼす事無く脳血流を良くする治療を漢方薬はやってのける訳で、現代医学では難しい所です。 最終的には肝、心、脾、腎、肺の五臓の弁証をしっかり行い処方の決定をするわけです。

 

 端を更ますが、呼吸は肺のストローク作用に因るわけですが、漢方医学では呼と吸に分けて考えます。

呼は肺の気が司っており吸は腎の気が司っていると考えます。

腎と言えば老化と密接に係っており、深呼吸や調息法、丹田呼吸法、太極拳、ヨガ等が老化を防ぐ目的で、日本でも最近よく行われております。

我々合唱団では4小節をノンブレスで歌いなさいと良く指揮者の先生より注意を受けますが自分の腎を養う為にも歌の表現の為にもしっかり腹式呼吸を体得すると一石二鳥であろう。

 

 然し乍ら、声帯その物の強弱が個人個人で違います。それによって声帯の振動の効率も違ってきます。

胸隔が狭く、その上、少しの肺気で効率よく声帯を振動させる事が不得手な私は“4小節をノンブレス”で歌う事が結構難しく、団を辞めようかと真剣に考えた時期がありましたが今は開き直っております。

2小節で感情を切らない様に歌う事を意識して居ります(笠谷先生曰く5~6人いるらしい)。

BS日本 こころの歌 で気をつけて見ていると、フォレスタでさえ2小節でブレスをしていることが結構見受けられますが(我が団と同じ曲目で…)ブレスの仕方が上手く、詩情は繋がっています。紙面を借りてExcuseしておきます。

 

 肺と腎の気が虚して来ている年齢の集団の合唱団であれば、それなりの(レベルがそれなりでは無く)特質を考慮して、より高度なハーモニーを目指す事が肝要ではないかと自分なりに考えております。

お仲間のお一人がメールのやり取りの中で認知症の漢方薬を教えて欲しい旨の言葉が有りましたのでこのタイトルで書いて見ました。

大津男声合唱団 Booklet「ハーモニー」寄稿文より

漢方の風音 4号 パウロとザビエル(アトピー性皮膚炎とバリア機能)

2013-12-12

バリトン 中川 義雄

ポーランドのワルシャワでCOP19が行われています(11月12日原稿を書いています)。その最中(さなか)フィリピンのレイテ島を巨大台風が上陸した。

895hPaの気圧で瞬間最大風速95メートル(メディアによっては103メートルと報道)の風が襲い、気圧による海面上昇と風が海面を素早く通り過ぎた為に海面上が陰圧となり上昇した結果数メートルの高潮が襲ったと報道されており1万人近い死者が出るだろうと報道されている。

COP19(国連気候変動枠組み条約締約国会議)で、そのフィリピン代表のナデレヴ・サニョー氏が涙ながらに演説した。今ここに出席している各国が地球温暖化に如何に対応するかが問われており、その結果将来の悲劇を繰り返すか食い止めるかが問われている。…(略)。良い結論が出るまで絶食すると宣言した。サニョー氏は既に3日間絶食していると言う。

一方、日本が脱原子力下で温暖化ガスを押さえながらエネルギーを如何に作り出すかを世界が注視している。

福島の原子力発電所の収束も然りである。この事については日本が最近開発した二酸化炭素の発生を極力抑えた石炭によるエネルギーの確保等、又、発電と送電の分離政策を含めた政治の決断が最重要課題であると最近の文章で書いた所です。

 地球温暖化は自然現象のみならず人間の健康生命をも脅かしている事も顧慮しなければならない。惹起している症状の第一は多汗症であり熱中症であろう。

 漢方医学では温暖化は健康生命に対して、汗の不快感のみならず様々な病的症状を引き起こすと考えている。

口渇を解消したいが為に摂る水、清涼飲料、ペットボトルで摂るお茶等はお腹(中焦、下焦)を冷やすことになるし又湿邪が発生する事にもなる。

最近京大病院の皮膚科が発表した皮膚バリアに関与している蛋白質(フィラグリン)の低下によるアトピー性皮膚炎も惹き起こされるし、ニキビ、不妊症、免疫力の低下等も惹き起こされると考えられる。又、湿と熱が関与している前立腺ガンの発症にも繋がっているであろう。

 漢方薬でアトピー性皮膚炎の治療を実践している施術者は昔から絶えず皮膚のバリア機能を高める事を念頭においている。今に始まった事では無い。最近、汗を多くかくと痒みが強くなる患者さんを多く見かけます。この様な患者さんには桂枝湯と黄耆、茯苓を同時に服用して頂きます。(この手法を漢方では「解肌(げき)」と言います)汗が減じ皮膚が綺麗になってきます。この場合恐らく皮膚バリア物質フィラグリンが多く作られているのではないかと想像しています。追試が待たれます。

 今から十数年前、京都のホテルで薬剤師の漢方調剤研修会が有り、演者を務めた事が有ります。

私の講演のあと昭和薬科大学教授田代真一先生が研究の一端を講演されました。

漢方薬が効く事の薬理学的(科学的)解明であった。先生は講演後の食事会で私の傍にお出でになりに私のコップにビールを注ぎながら…

“先生(私の事)頑張って多くの患者さんを救ってあげて下さい、先生はパウロです。私(田代先生)はザビエルとなってエビデンス(証拠、根拠)を確立し、医療界を納得させますから…”と話された事があります。

 これからは西洋医学と東洋医学が“真の”合体をした新しい感性を持った医療が待ち望まれている様に思います。

西洋医がむやみに漢方薬を処方するのではなく、人の“心”を中心に据えた真の東西合体医療が待ち望まれているのではないでしょうか。

大津男声合唱団 monthly booklet 「ハーモニー」寄稿文より

漢方の風音 3号 漢方薬の発祥

2013-10-03

バリトン 中川 義雄

7月のある日、漢方薬を作っている時に電話がありました。それは私の出身高校の後輩の生徒さんからであった。

学校の設定科目で「探究」に係る学習科目が有り、グループでテーマを設定し、それに仮説を立てた上で、夏休みを利用して探究活動(取材、調査、実験等)を行い、その結果を発表する「課題解決型」の学習活動の一環として、当方を訪問したいと言う内容であった。

その生徒さん達のグループのテーマは「東洋医学と西洋医学の発祥の違いについて」であり、私には漢方薬の発祥について教えて欲しいと言う内容であった。

後輩の学習のお手伝いが出来る事はこの上ない喜びで有り、又微力ではありますが学校に恩返しが出来る喜びも有ります。

1時間の予定が2時間以上も時間を取ってしまい生徒諸君には負担をかけてしまったと後悔しております。そこで、漢方の発祥について書いてみたいと思います。漢方(所謂漢方薬)の医学書として最も古く記されたものは、後漢(AD200年頃・1800年前)の時代に「張仲景」が著した「傷寒雑病論」である。

その傷寒雑病論は時代の変遷を経て、脱字や加字(後人が加筆したと言われている)は有るものの、現代に残っている。

何故、張仲景が傷寒雑病論を書き上げたかは以下の理由が有ったからである。

後漢のその時代には神仙道方術家なる漢方家ばかりで、彼らは不老長寿の処方の組み立てばかりを目標に日々を送っていた。従って抗生物質の無い時代の伝染性疾患の治療はお手上げの状態で、実に大勢の民が感染性疾患で亡くなった。

漢方的手立てが無いまま、むざむざと多くの民が亡くなって行ったと傷寒雑病論“序文”に書かれている。

「張仲景」の一家一族郎党も例外ではなく、建安元年(AD196年)から10年の間に200人以上の大家族の内3分の2の身内が主に感染症で亡くなったと書かれている。

張仲景は現在の河南省南陽県で官吏として仕事に付いていたが“感染性疾患の治法の確立”を念頭に、一念発起して張伯祖に師事して漢方医学を学び、師を超えて前出の最古の感染性疾患治療の医学書を書き上げたので有る。

因みに、風邪の引き始めに使用する葛根湯はこの医学書に書かれたもので有り、日本では一番馴染みの深い処方である。最近、日本では病医院でも度々処方されますが、残念ながら張仲景が書き残した理論とは違った使い方をしているのが現状である。

寧ろ、やみ雲に使っていると言った方が正しいかも知れない。

張仲景は葛根湯の使い方を厳密に規定しているのだが、使い方を間違えると、場合によっては脱汗といって心臓性ショックをおこし、三途の川を渡った人も多くおられると有名な漢方の先生の講演で聞いたことが有ります。

毎月おこなっている漢方勉強会(びわこ漢方サークル)受講の薬剤師さんから、ひどい“多汗症”のお年寄りの患者さんに、肩こりを治す目的で葛根湯が処方されているのだが…と相談を受けた事が有ります。

服用している本人は何も分からず服用しているのですが、これは当に命がけである。葛根湯のせんじ薬で投薬していたら恐らく危うかったであろう事は想像に難くない。

私は日々の仕事の中で葛根湯はそんなに使うことは有りません。

張仲景は書の中で葛根湯の使い方を以下の様に規定している。

つまり太陽病(感染の始まりで)で、項背強張り(首こり、肩こりがあって)、脈浮緊(緊張した脈で浮いている)、汗無く…と規定している。従って、この項背強張り、脈浮にして、汗をかいていない状況であれば副鼻腔炎に、蕁麻疹に、咽痛に、腰痛に、ニキビに、中耳炎に使用するとうまく治療できます。

抗生物質や鎮痛剤を使わなくてもうまく治るのである。言い換えると葛根湯は有汗時には使ってはいけないのである。

漢方薬の副作用情報も大切であるが、施治者は真の使い方を会得しなければならない。

漢方医学では間違って処方することを“誤治”と言い、強く戒めているのである。しかし乍ら傷寒雑病論では誤治をした時の対処法迄言及しているのである。

漢方薬は使い方次第では毒にもなるのである。

更にその傷寒雑病論序文に張仲景が時の医療者を嘆いて次の様に書き記している。

「ただ空しく栄華権勢を求め、権力者になろうと必死にもがき、名誉と利益を得んとして大事な所をなおざりにしてしまい、外面を華やかにして内面は窶れている様では、真の栄華は得られない」…と。

 大津男声合唱団 Ⅿonthly booklet ハーモニー寄稿文より

漢方の風音 2号 腰痛、ヒザ痛、脚弱、尿不利

2013-06-09

バリトン 中川 義雄

 人間の老いは目及び下半身からやって来ると言われて居ります。私も最近、頓にその衰えを実感している所です。漢方の言葉ではそれらの弱りの事を“腎虚”といいますが、腎虚になると脳細胞の衰えは先ず有ります。又、腎機能の衰えも読んで字の如く有りますが、副腎(副腎ホルモン)の衰えも含んでいるのが漢方医学の考え方の特徴です。従って副腎の機能である糖の代謝、ミネラルの代謝(尿量、血圧と関係します)は勿論の事、排尿困難、排尿異常(漢方用語で尿不利と言います)も骨の代謝(骨を丈夫にする)も弱ってきます。更に“肝腎要め”の言葉通り東洋医学では肝と腎は母子関係にあり、肝もそれに連れて弱ります。そうすると、肝と腱は元々深い関係が有るので骨を支持している筋肉も弱って来る。かくして腎が弱ると一連の老化現象(下半身の弱り、躓きやすい等)が現れるのである。これら一連の関係は漢方用語で〝腎は骨髄(こつずい)を主る〟と言う言葉に帰着する。

腰痛、ヒザ痛、骨粗鬆症、脊柱管狭窄症は“骨”(こつ)であり 物忘れ、シビレ、パーキンソン病は“髄”(ずい)である。だからと言って物忘れ、パーキンソン病を治そうと腎を強化してもそう簡単には行かない。認知症、パーキンソン病は心も脾も絡んでいるし、血流も絡んでいるからである。

 風邪の引き始めは、先ず悪風、悪寒(所謂さむけ)がします。又それと同時に関節(ふしぶし)が痛む場合が有ります。風寒と言う“さむい邪”が体表にとり付いたが為に“寒さ”を覚える訳であり、同時に関節にも風寒の邪が襲ってくる為に腰痛、ヒザ痛、顎関節痛もおこる。この様に風邪のひき初めと各関節痛とは大いに関係が有ります。そこで腎虚による痛みなのか風寒の邪による痛みなのか、どちらも絡んでいるのか若しくは全く別の問題が絡んでいるのかを良く弁証します。

体表(皮下)は前述しました様に関節と同じなので、膝関節に水が溜まると体表にも水が溜まる場合が有ります。乃ち、浮腫んで来ます。そのむくみは漢方医学では虚腫と言って力のない浮腫みである。整形外科で水を抜いても、又、溜まってきます。漢方薬で体表の水をぬいてやると関節の水も抜けていきます。虚腫は漢方に熟達してくると皮膚の虚実や顔貌と絡めて膝を診るとよく分かります。一方、膝の腫れに実腫が有りますが、この場合は顔が腫れることは先ず有りません。整形外科ではこの様な概念が有りませんので漢方医学の方がより実態にあっており、うまく治せると筆者は確信を持っている。

大津男声合唱団 Booklet 「ハーモニー」寄稿文より

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