滋賀県の漢方相談薬局

〒520-2153 大津市一里山2-14-13 一里山ユーベルハイム2F

Archive for the ‘風邪’ Category

15号 漢方の風 ー風邪と免疫力ー

2008-01-16

 最近、タクシーの乗車拒否ならぬ、調剤拒否らしき話をよく耳にします。遠まわしに、やんわり断るパターンが最も多いのではないかと思いますが、患者さんにしてみれば、拒否したがっているのを明白に感じ取っているのである。患者さんとの接遇、応対に誠心誠意尽くさなければならないと感じて居ります。諸先輩と共に、医薬分業の進展に努力して来た過去を、ふと思い出している今日この頃である。

 本題に入りますが、物(事)には、ほとんどのものに、表と裏が有ります。漢方の考えにも、表と裏が有ります。内外、表裏といった概念です。一見して相反するこの二面性は、東洋医学的弁証法として最も大切であり、臨床に当り、この弁証なくして、治療は有り得ないのである。

 そこで、先ず、「内外」について説明しますと、内は、内の原因(内因)であり、外は、外の原因(外因)である。病気はこのどちらかが、原因で発症するのである。どちらもが絡んでいる場合も当然有り得ますが。“内因”には、「喜怒憂思悲恐驚」つまり「七情」が有り、この七つの感情のコントロールが宜しく無ければ、病気を惹き起こすのである。更に、内因として、あと一つ重要なのは、「房室の不摂生」つまり「過度な性行為」が有ります。これについては、後ほど、追記します。

 一方“外因”としては、「風寒暑湿燥火」つまり「六淫」が有ります。例えば、風(ふう)が悪さをした時、その悪さをしたものを邪と言いますが、この場合、風の邪が悪さをしたので、風邪(ふうじゃ)に中(あた)った、若しくは、風邪を受けると言います。又、同様に寒邪、暑邪、湿邪、燥邪、火邪と言います。

 これら六淫の中で、取り分け、夏のエアコンによる過度な冷え、冬のアイス、ビールによる体の冷えが原因で発症した寒邪による病気に注目しなければならない。往々にして、風と同時にやって来たり(風寒の邪)、湿と共にやって来たり(寒湿の邪)します。

 時は冬、エアコンの効いた室内で、冷えたビールを飲み、デザートにアイスクリームを食べる。乃ち、寒、湿を同時に取り込み、揚句の果てに、ある人はリウマチを、ある人は扁頭痛を、ある人はアトピーを、また、ある人は鼻炎を惹き起こすのである。治療には、風寒湿の邪を取り除かねばならない。

 内因としての、前出の「房室の不摂生」つまり「過度な性行為」にも、注意を払わなければならない。その理由は、人体内で最も重要な腎精を損うからである。

 あるホームページをみて、驚きました。本当なのか、真偽は、定かではありませんが、ある塾では、射精したあと、脳内物質が活発に働くのが、その根拠らしいのですが、試験が始まる直前に自慰行為を奨めていると言う。その為、試験会場のトイレは一杯になると、実しやかに書かれている。一方、ある番組で、射精時に10万ボルトの電流が流れ、脳細胞が破壊されると、学者が言っていたのを見ました。漢方的には、前者が謬っているのは、明白ですが、間違いなく脳内物質の活発な働きが見られ、一時的に脳を活発にして、目の前の受験戦争を勝ち抜く為の必要悪なのでしょうか。

 この議論の論点は考えさせられます。つまり、その生徒の半世紀後の精神生活を考えて見た時に、どちらが正しかったかは、その時に気がつくのであろう。恐らく、その生徒の自慰の習癖が、問題なのであろう。漢方的には、つまり、腎精の事を考えると、免疫にも関ってくるであろうし、若し、その生徒がアトピー性皮ふ炎を罹患していたならば、治癒機転を得るのに、更なる時間を費やす事になるであろう(ある種のアトピーの場合)。勿論、個人個人により、腎精の量的ボリュウムや腎精の生産能力の高低が関っているので、一概には、言えませんが…。当方の患者さんが、ゴルフの前日は、スコアが落ちるので、性行為をしないと真剣に言っておられます。ここらあたりに、何か、ヒントが隠されている様に思います。

 端を更め、話を戻しますが、文字通り、風邪の季節がやって来ました。風寒の邪の感受を避ける事が、一番大切であるのですが、その方法としては、(1)暖かくする事。(2)睡眠を充分にとる事。それでも‘寒いな’と思ったら、(3)熱い生姜湯を飲むことをお勧めします。どこかのメーカーの風邪薬より、間違いなく効く事、請け合いです。(4)最後に、塩入番茶のうがいが、お勧めです。

 それでも、風邪、寒邪に浸襲された(中った)時、桂枝湯、葛根湯、麻黄湯、小青龍湯、五苓散、桂麻三兄弟の何れか、参蘇飲、香蘇散、真武湯、麻黄細辛附子湯、防風通聖散、五積散、銀翹散、等から撰用すると良い。それでも、こじれてしまった時は、柴胡桂枝湯を始め様々な漢方処方が対処して呉れます。

 何といっても、漢方は、『未病』を治す考えがあります。乃ち、風邪を引き難くする予防の為の処方が沢山有ります。一人一人の体質を見極め、投与すると、確かな手応えが有ります。これは、風邪に限った訳ではなく、膀胱炎、腎盂炎、扁桃腺炎、副鼻腔炎、鼻炎、耳下腺炎、尿路感染症、性感染症、気管支炎、口内炎、結膜炎、膿痂疹…等、様々な感染症の予防に、確実に役に立って呉れます。この事は、多くの医療人が東洋医学の研鑽をした時、医療費の削減に大きく貢献する事になるであろうし、感染症で悩んでいる多くの患者さんの健康で快適な生活を約束するものである。最も、現在の医療保険制度では、“予防”に対して保険診療は認められていない。漢方薬は、そもそも、自宅で煎じて服用するものである。私の母親は、7人の子供を育てあげましたが、何かあった時、薬草を土瓶で煎じ、兄弟姉妹が、それぞれが子供の頃、苦かったり、臭かったりの煎じ薬を飲まされたものです。若い方は想像もつかないでしょうが、ミミズ(漢方では、地竜と言います)も煎じて服まされたものです。

(大津市薬会報 2008年 1月号掲載)

0号 漢方雑感 -間違ってはいけない漢方の使い方-

2002-10-26

 漢方と出会ったのが、昭和四十五年に購入した「症候による漢方治療の実際」(大塚敬節著)である。大学を出て製薬メーカーの拡宣の仕事についたが挫折してしまい、そこで大学の先輩の経営するドラッグストアに誘われて、およそ二十年間、薬の相談販売をしてきた。そのドラッグストアに勤務して、まもなく先輩が紹介してくれたのが、前出の書籍である。七百頁を超える分厚い本であるが、何度も何度 も読み返し強い衝撃を覚えた。自らのライフワークに出会った気がした。以来様々な漢方書を読み続けている。漢方と言っても数々あって、日本に仏教と共に伝来した古代の民間療法、室町時代に伝わったとされる後世要方、江戸時代のルネッサンスの象徴である古医方、明治時代から関東以北で拡まった一貫堂医学、ここ最近日本へ紹介された中医学、中国の南の暖かい所で培われた温病学等々である。流石に、最近は、漢方は迷信であると、暴言を吐く 医師はいなくなったのだが・・・。

 漢方は立派な体質医学であり、論理的、唯物論的に体系化されている。基礎的なものから臨床まで、現代医学を上回る勉強と経験が必要と言われている…。十年近く前に発生した小柴胡湯事件なるものがあった。全国で小柴胡湯を服用した患者さんが十人前後亡くなられたのである。当時C型肝炎の蔓延と共に大量に使用され、そのお陰で多くの患者さんが救われたのであるが、漢方的な弁証論治がなされなかったが為に起こった不幸な出来事であった。傷寒論なる難解な古医書にその使い方が記載されており、その通り使用されれば、ほぼ必ずと言ってよい程効果が出るのであって、この様な結果にはならなかったであろう。

 毎年寒い季節になると流行るのが風邪である。文字通り「風」の「邪」である。その風邪にかかる事を「風に中(あた)る」と古人は言ったのであり、 傷寒論という古医書では中風の病(風に中った病)と言っている。中風の病にも色々種類があるが、日本ではその代表格が葛根湯になります。そして傷寒論では葛根湯の使い方を厳重に規定しているのである。何故ならば、使い方を誤れば心臓に悪影響を及ぼしたり、極端な場合は三途の川をさまようことにもなりかねない。傷寒論では、「太陽病、項背強几几、無汗、悪風、葛根湯主之。」と規定しているのである。即ち、項から背中に沿って凝りがあって、汗はなく、寒気があり、そして脈が浮いている時と規定されているのである。

 蛇足ではあるが、ついでに付け加えておきたいのが、夏風邪は一体どうか、という事である。そうです。よくよく前文を見て頂くと、汗は無く、寒気があり、と規定されており、夏の風邪は、有汗で、寒気が無い(あっても少ない)事が多く、合わないという事である。そして、その夏風邪に対しては、温病学や中医学では、別の処方メニューが準備されている。温病学の発展した地域は、中国の南の温かい所であり(亜熱帯の所もある)、当初、日本へ伝来した傷寒論は、どちらかと言うと、中国北部の寒い所で発展した理論である。

 交通手段の発展した今日、世界はグローバル化し、消費を奨励している経済等々が、昔の日本には上陸しなかった南の暖かい地域に棲息しているウイルスを日本に持ち込む事になった。斯くして、日本の漢方は、江戸時代に比べて、更に難しくなっているのである。五月の連休の後、またお盆の休みの後等に流行る咽痛や熱発等は、恐らくこれらが原因しているからであろう。今、世界が一番問題にしている地球温暖化現象は、凍土に閉ざされていたウイルスを現出させ、そのウイルスは、渡り鳥と共に地球規模的に広がっている、又アフリカの奥地に棲息していたウイルスは、蚊を媒介として、飛行機と共に地球規模的にひろがっている。漢方の治療法も中国、韓国の医術を取り入れないと日本の古医方だけでは、立ち打ち出来ない状況になって来ている。

 (平成14年10月)

ページ最上部へ

Copyright© 2013 なかがわ漢方堂薬局 All Rights Reserved.