滋賀県の漢方相談薬局

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30号 漢方の風 ーアトピー性皮膚炎の根治療法

2012-01-12

 比叡山延暦寺の根本中堂は織田信長の焼き討ち後、徳川家光により1642年に再建された。根本中堂を支える76本の柱は全て直径67cmに統一されていると新聞記事で読んだ。使われている木材は欅(けやき)だそうですが、腐朽し易い材芯を避けるが為に直径2mの欅を縦に4分割して夫々を1本の柱としている可能性があるらしい。つまり1本の木から4本の柱を作っている。耐用年数は800年で、築後約310年の1955年に腐朽した部分を取り除き、「根継ぎ」の技法で修理が行われている。耐用期限の800年後(西暦2400年頃)には、確実に木材の調達は不可能である(日本では伐採が祟って、多くの神社仏閣の大柱を海外から調達しているのが現状である)。そこで延暦寺は遠い先を見て10年前から比叡山中に欅を育てている。(無事育つ確率は10%だそうです)。又、創建時、檜(ひのき)の調達が難しかったが為に止む無く欅を使ったとも云われている。調査研究で腐朽の一番の原因は木の乾燥が充分で無かった為と考えられている。

 

 奇跡的に大空襲による焼失から逃れた姫路城の昭和の大改築は1955年から行われた。その2年前からの調査で天守閣を支えている東西の2本の大柱が夫々東南に50数cmずれている事が判明した。更に調査でその一本の西の大柱が芯から腐朽しており、継ぎ足しもまま成らない状況で再利用が出来ない事が判明し、直径1m以上長さ20数mの檜を探すことになった。やっとの事で木曽の山中で見つけたものの、切り出す途中で折れてしまい、工事は中断した。暫くして、同じ木曽の山中で2本目の檜を見つけ、山林鉄道で搬送途中、崖の所で重さに耐えられなくて、16mの所で折れてしまい、その先の部分(約11m)は谷底に落ちてしまった。その時の事故の場面はNHKのドキュメント放送でも捉えていた。結局、その残った16mの檜に姫路近郊の神社の境内の檜を継ぎ足して(木組みして)西の大柱として、無事、大天主は改築されたのである。

 

 延暦寺の根本中堂の柱は腐朽し易い芯を避けるが為に4分割したもので、姫路城の西の大柱も芯から腐朽が始まっており、漢方医学から見て、アトピー性皮膚炎の原因と通じる所がある。つまりアトピー性皮膚炎も体内、若しくは皮下の「湿」がそもそもの元凶であるからである。ステロイド剤は体内に湿を貯め込むが故にあとあと様々な問題を惹起するのである。しかし乍ら素早く炎症や痒みを抑える即効性があるのでそれを使用する有用性はある。その場合も湿を溜め込まない為に、未病を治す意味も含めて漢方薬を利用すると良いのは自明の理であろう。かと言って、なかがわ漢方堂では大半の患者様にステロイド剤は極力避けて頂いております。

 

 体内の湿(湿熱)を如何に取るかがアトピー性皮膚炎の漢方治療なのですが、その一方、痒みは心の火(厥陰心包経)を冷ます事で治療出来ます。詳しくは“漢方の風”28号をお読み下さい。甘い食べものは糖質(炭水化物)で細胞内のミトコンドリアのTCAサイクルで炭酸ガスと水に分解される。乃ち、湿を発生する。甘さのおっかけっこをしている現代社会の犠牲者が、つまりアトピー性皮膚炎や糖尿病の患者様である。

 

 湿(水)は様々な問題を惹き起こす。関節部位に溜まると関節炎になる。膝痛、腰痛、五十肩には防已黄耆湯、越婢加朮湯、疎経活血湯、ヨクイニン等で湿を取り除く。脳の網様体の湿(頭重、眩暈、耳鳴り、他)には半夏白朮天麻湯、温胆湯、当帰芍薬散、他から撰用する。産婦人科領域では、多嚢胞性卵巣も湿が絡んでいる。

 

 昔から石や鉄を多用せず木を使う日本の建築様式に係る人は木の特性を熟知している。木材の一番の敵は内外の湿である。東洋医学も又、湿は邪となり得ると捉えている。木も人間も自然の中に存在しており湿とのせめぎ合いの中で健やかさを保っている。

(大津市薬会報 2012年1月号掲載)

28号 漢方の風 ーアトピー性皮膚炎

2011-05-21

 東日本大震災に被災された方々には衷心よりお見舞い申し上げます。又、お亡くなりになられた御霊に十念(南無阿弥陀仏)を唱和し、ご家族には哀悼の意を表します。

宮古市の重茂半島の姉吉地区には先人が海抜60mの場所に“此処より下に家を建てるな”と刻んだ石碑を遺しているそうで、重茂地区の住民は以来それを守って来た結果、全ての世帯が今回の大地震の津波から被災を免れたと報じられていた。現代の科学的予測の或を超えた大津波の災禍から免れた先人の知恵の確かさを顧慮しなければならない。今回の大震災を見るに付け科学的根拠の危うさ(高さと強固さを計算して作られた防潮提と防波堤が破壊された等)を露呈したと言っても過言ではない。福島の原子力発電所も又、然りである。ダブルフェイルセーフ以上の安全を担保する知恵を絞らなければならない。想定外だったではすまされない…。佐藤栄佐久前福島県知事は起こるべくして起こったと憤っておられます。(前知事は原子力発電推進派でもあるが、原子力政策の隠蔽体質と闘って来られた)

アトピー性皮膚炎の治療においても、同じ事が言えると私は考えております。例えば、喘息の漢方治療をする時には背の青い魚だけでなく肉食をも極力避けるようにして戴く。これは先人の古書に書いてあることなのですが、漢方の臨床では経験的に実践して好結果を得ています。同様にアトピー性皮膚炎の治療においてもアレルゲン検査も大切ですが、何よりも大切な事は湿熱を溜め込まない食し方をする事と考えています。従って漢方治療では、間違った食生活から発生した湿熱を如何に捌くかを徹底して行うと、重度のアトピー性皮膚炎でさえ自然に元の綺麗な皮膚に戻るのである。湿熱を発生させる可能性のあるステロイド療法は漢方医学的にはしてはいけない事になるのですが、一時避難的には有効な手立てではあると考えております。

 

 湿熱とは湿邪と熱邪がくっ付いたもの。湿度の高い日本では湿邪(湿気)が外因(外敵)として皮膚を攻めて来る(風の邪が表を攻めて来て守りきれず発症するのが風邪と同じ考え)。昔なら汗をかいて皮下の湿を発散したものですが、冷房完備下の環境では発散は不可。それどころか口からは更に追い討ちをかける様に必要以上のジュース、ビール、アイス等の飲食物を摂る。内外から湿に攻められる結果、体中(細胞から組織、器官、夫々の間隙迄も)水が氾濫する。一方、フライ物、生クリーム、スナック菓子、インスタント食品等の甘食厚味な食べものの摂取過多が熱を生じ、地球温暖化も相俟って“湿熱”が出来上がるのである。この湿熱が体中を席巻し心の火と出合って強烈な痒みを発するのである。又、有機物を含んでいるであろう黄砂や花粉、ホルマリン、トルエン等が皮膚を攻め立て、体の防衛軍である衛気(えき:体表を守っている気)と遭遇し熱を生じ、湿熱は更に増長するのである。

 

 漢方薬でこれらの湿熱を捌き、一方、口からは前出の飲食物の制限をすると、あれほど頑固なアトピー性皮膚炎も改善して来るのである。これらの漢方理論及び食養生を“想定外だった”と社会が顧慮する日が来ると、反省が生まれ、より健康的な生活が保障されるであろう。何よりも医療費の削減迄もやってのける事が出来るでしょう。 ここで、あと一つ弁証しなければならない事が有ります。それは現代社会の作り出したストレスが火と化し病証を悪化されておられる患者さんも多く見られる事です。

漢方医学では肺は皮毛を主り、脾(大雑把に言えば胃腸機能)は肌肉を主ると言います。従ってアトピー性皮膚炎は肺と脾の病証といえます。又湿熱の充満しきっている少陽三焦と表裏関係にある心包経の病証とも言えます。又先天の腎の虚も考える必要が有ります。

 

 消風散、十味敗毒散、黄連解毒湯、辛夷清肺湯、六味丸、補中益気湯、猪苓湯、三物黄?湯、当帰飲子、温経湯、四逆散、加味逍遙散、荊艾連翹湯、抑肝散加陳半、麻杏甘石湯、地竜、越婢加朮湯、白虎加人参湯、竜胆瀉肝湯、柴胡桂枝湯辺りから3~4処方をうまく使い分けて治療します。治療には苦心惨憺するものの長年苦しんでこられた重症のアトピーが治って行かれる患者さんの笑顔に接し、漢方医学を勉強して良かったとつくづく感じております。

(大津市薬会報 2011年5月号掲載)

23号 漢方の風 ーアトピー性皮膚炎・肥満症ー

2010-01-12

 空蝉に最早命の臭いなし…  これは亡き長兄が詠んだ詩です。蝉の抜け殻は、俳句の季語になりますが、漢方薬では、“?風剤”になります。?風とは、この場合は痒みを取ると言う意味になり、漢方処方としては、消風散に配合されています。その消風散はアトピー性皮膚炎によく使いますが、患部が湿潤している事が使用目標になります(それ以上に風証が見られる事が必要ですが)。乾燥性のアトピーに使用すると症状を悪化させるので注意が必要です。これは決して副作用ではなく、あくまでも使い方の問題であり、消風散の構成生薬をよく考えて使用すると失敗はしないものです。漢方薬の使用については、慎重に行わなければなりません。同じ動物生薬の中に“地竜”(みみず)が有ります。最近、地竜の使い方の吉岡先生の講演を起こした資料をk社が提供してくれ、追試した所、非常に良い結果を得ております。麻黄と石膏で皮下の“水”を捌き、更に地竜で血流を良くしてより水の捌きを高めて、鎮痒作用を高めます。痒みで、夜眠れない時は麻黄杏仁甘草石膏湯と地竜を併用すると、痒みが取れて、かきむしる事無く良く眠れます。

 

 当薬局の難治性のアトピー性皮膚炎の最近の治験例を挙げて見ますと、30代の女性には、猪苓湯と補中益気湯に加味逍遥散で治癒。20代の女性は猪苓湯と補中益気湯に荊介連翹湯で治癒。その他温清飲、温経湯、梔子柏皮湯、黄連解毒湯、十味敗毒湯、柴胡清肝散、四物湯、黄ギ建中湯等をうまく組み合わせて使用すると難治性のアトピーでも大部分は治癒する事が出来ます。  所で、最近、漢方薬の保険適用を外す議論が、事業仕分けの俎上にあがりましたが、上記の30代の女性のアトピー性皮膚炎を漢方処方を使って“保険医療”で治療するとしたら、夫々の処方に適応する“架空の病名”をいわば作り挙げなくてはならない。病名と漢方処方が一致しなければ健康保険法に抵触するからである。即ち、不正請求になる。上記の30代の女性には、夫々、例えば膀胱炎なり胃下垂なり冷え性の病名を付けなければならない。実際はアトピー性皮膚炎の治療なのだが。漢方薬の保険適用には、やはり無理がある様に思えます。とはいえ、抗ガン剤や放射線療法での体力、気力の落ち込みに、漢方薬を医療保険扱いで投薬され恩恵を受けておられる方が大勢おられる事を考えると保険適用外とは、軽々には言えない。公平に考えて見て、何らかの落としどころを見い出さないと、現状のままでは、医療費の削減はもとより、ややもすると、生薬の無駄使いが行われ、延いては漢方薬その物の存在が危うくなる。絶滅の危機に頻している薬草は大切に扱わなくてはならない。漢方薬は“薬草に感謝”の気持ちを抱きながら使用しなければなりません。

 

 話は変わりますが、アメリカでは国民の肥満が問題になっております。このままでは10年後には肥満症に関る医療費が現在の4倍になる試算が出ており、財政が持たないのだそうである。現在の日本の状況から見て、わが国でも、4倍はともかくとして、同じ事になるであろう事は十分に察しが着く。患者さんが病院で、痩せる漢方薬を出して下さいと言えば、鸚鵡返しに防風通聖散が処方されます。(漢方には詳しくないからと断る先生も居られますが…)私の経験では防風通聖散の90日分の院外処方箋を受け取った事が有りますが、表寒裏実熱とは決して見えない患者さんでした…。勿論、効き目は無かったと思われます。体調に不具合を感じたら服用を中止して下さいとお伝えしました。この事例も医療費の無駄かも知れません。防風通聖散には麻黄、荊芥、防風と言った辛温解表剤(発汗剤)が配合されています。発汗は注意しなければなりません、心臓の弱い患者さんには特に要注意である。心臓の気陰不足の人は意外に太っている人がおられるからです。OTC薬の九味半夏湯加減なる「扁鵲」(へんせき)と言う漢方薬を扱っておりますが、メタボリックには防風通聖散より、もっと安全で効果的と思っております。水毒、臓毒を捌き脂肪過多を減らしてくれます。因みに防風通聖散が身体に合う方(防風通聖散証と言います)は決してKYではなく、気配りの出来る方が多い様に思います。

 (大津市薬会報 2010年 1月号掲載)

22号 漢方の風 ーアトピー性皮膚炎ー

2009-10-19

 知り合いのAさんの息子さんは、幼少の頃からアトピー性皮膚炎で悩んでいました。彼のお母さんは、かなり神経質な方で、傍(はた)から見ていても、その息子さんには、あれこれ“口うるさく”接しているのが見て取れる程であった。その息子さんには、ルイボスティーを勧めて飲んで頂いておりました。ルイボスティーを飲むと、確かに、カサカサの肌が綺麗になるとの事で長らく愛飲して頂きました。私から言わせると、本来の病因は、母親、乃ち“母原病”なのであるが(全てのアトピー性皮膚炎がそうだとは限りません)、その事を話すと、話がややこしくなるので、取り敢えずルイボスティーで事を済ませていたのである。然しながら、ねらい通りに、よく反応してくれました。母親からのストレスが脾(消化吸収機能)に影響を与え、ペプシンによる蛋白の消化が圧迫を受け、本来より分子量の大きいペプチドが生じ、それがアレルゲンと成り、アトピー性皮膚炎を引き起こしていたのであろうと考えたからである。それは、漢方の世界で、補中益気湯が脾気を高め、更に、水を捌(さば)いて呉れる作用を利用して、アトピー性皮膚炎に使用される事と通ずる所が有ります。その母親には、抑肝散なり加味逍遥散辺りを服用して頂くと、更に効果的であったであろう。

 

 私と、ルイボスティー(学名 アスパラサスリネアリス)との出会いは20数年前になります。当時は、カフェインを含まず、スカベンジャー機能を高めてくれ、皮膚が綺麗になりますといったキャッチコピーで販売しておりました。多くの人に飲んで頂いている間に、あるお客さんが、庭の枯れかかった木の根っこに煮出し終えたティーバッグを置いていた所、枯れる筈の木が花を咲かせたので、ビックリしたと仰有れ、何かしらのパワーを持っていると確信を持ちました。

 

 南アフリカ原産のこのお茶は、微量ミネラルやケルセチン(フラボノイド)を多く含有し、脾の働きを改善し、腸管の蠕動運動を促して便通を良くして便秘を改善したり、又、蛋白質の消化を良くして、より分子量の小さいペプチドにしてくれて、アレルゲンを少なくして、アトピー性皮膚炎を改善してくれるのであろうと私なりに解釈しております。因みにルイボスティーは巷に多く売られておりますが、粗悪品が多く、よく撰品する必要があります。

 

 アトピー性皮膚炎を治すには、食事に気をつけなければなりません。少なくとも昭和30年台の食事にすると自然にアトピー性皮膚炎は治るものと確信してはおりますが、その一方、生活水にも気をつける必要があります。昔の琵琶湖のクラスターの小さい、カルシウム始めミネラルたっぷりの水を摂る事が大切なのですが…。

 

 漢方では、アトピー性皮膚炎は“湿熱”が、諸悪の根源と考えます。甘いもの、油で揚げたもの、炭酸飲料、ビール、生クリーム製品等、枚挙に暇がありません。昭和30年台には、そう簡単に、口に入らないものばかりです。“湿熱”を引き起こす食べ物が氾濫している現代では、アトピー性皮膚炎や花粉症を、いつ発症してもおかしくないのである。昭和30年台の大津の朝は、納豆売り、瀬田川シジミ売り、煮豆売り等の独特の行商人の売り言葉で朝がやって来たものです。現代では、朝食はマーガリンのトースト、コーヒー、ミルク、甘いジャム、目玉焼きといった所でしょうか。東洋の思想を学校教育、栄養学、医学が取り入れなければ、医療費の削減にはならないであろう。

 

 アトピー性皮膚炎を治すには、黄連解毒湯、温清飲、補中益気湯、猪苓湯、黄ギ建中湯、加味逍遥散、抑肝散、十味敗毒湯、白虎加人参湯、麻黄附子細辛湯、辛夷清肺湯、桂枝湯加黄ギ、消風散、越婢加朮湯、桂枝人参湯、三物黄ゴン湯、六味丸等から撰用すれば良い。  アトピー性皮膚炎治療で、ステロイド剤を多用し、腎の陰精を傷つけると、漢方的手立てを打たなければ、取り返しの着かない状況を招きかねない。

 

 一口で漢方と言っても、古方、後世要方といった日本の漢方と中国の中医学等がありますが、日本の漢方理論では、なかなかアトピー性皮膚炎は治せません。日本の漢方理論と中医理論を上手くミックスして弁証すると、可なりの確率でアトピー性皮膚炎は“本治”出来ます。つまり、体質改善出来ます(見かけだけの治療を標治と言いますが、体質改善にはなりません)。

 

 食養生無くしては、漢方と言えども治せません。従って、本当の治療をするには、施治者と患者さんが、力を合わせて取り組まなければならないのは言うまでも無いことです。

 (大津市薬会報 2009年 10月号掲載)

13号 漢方の風 ーオーガニックコットン(抵抗力をつける)ー

2007-08-01

 最近のテレビ番組から、感じた事を、書いてみたいと思います。オーガニックコットンの生産に係っている女性の番組で、彼女は、バングラデシュの農業従事者の困窮を救いたい気持ちを前面に出し、頑張っている姿が、放映されていた。バングラデシュは、北海道の約2倍の面積で、人口は、14000万人。元々低地で、その上、温暖化に伴う洪水で、せっかく手入れした畑が、流されてしまったりで、生活の厳しさが伺える。彼らの大きな生産は、主に、綿花の栽培から、糸紡ぎ迄なのだが、オーガニックでない場合、出来上がったコットンの売り上げの半分が、農薬代に消えてしまうのである。ちなみに、その農薬を一番売り込んでいるのは、ドイツの企業だそうである。オーガニックの元になるのは、アヒル、牛などの糞なのだが、彼らは、その糞を、手で扱っているものの、その表情には、将来を見据えた喜びが満ち溢れている。

 農薬を使った畑は、翌年は使い物にならない。一方、オーガニック畑は、毎年植え付けが可能であり、いわば無機質な土と有機的土壌の違いがあるのである。有機的土壌には、ミミズ等の生物が棲んでいる。お名前は、覚えておりませんが、とてつもなく美味しい、又一年経っても腐敗しないリンゴを作っておられるりんご農家の方と重ねて、番組を見ておりました。  一方、私が関係しております医学の世界では、私が、子供の頃、回虫を持っている生徒は、恐らく二桁を占めていたと思いますが、今は皆無に等しい状況である。ある医学博士は、30年前(私が勝手に感じている数字で、不確かですが)、余り見られなかった花粉症が、増え続けているのは、回虫の駆除と関係していると自説を唱えておられます。  私も、同感ですが、漢方的には、もっと、重要な事があるのです。其れは、資本主義社会の宿命なのですが、食環境、住宅環境、嗜好品、…と言った、日本人の体内環境を無視した所から、始まっている。  原稿を書いている今、タイミング良く、ご近所のMさんが、自分の畑で作ったキュウリを届けに来てくださいました。大根、三度豆、キャベツ、ほうれんそう、トマト…等、季節毎に、正に“旬”を戴くのである。スーパーで買ったものとは、味は、勿論の事、日持ちが、全然違うのは、何故なのか。いわば、オーガニック栽培だから、ちがうんヨ…と、Mさんは、ニッコリしながら教えて下さいます。

 端を更めますが、漢方では、『気』『血』『水』と言った概念を、重要視します。「麻芍乾桂、関西のご飯」…これは、私がお弟子さんに教えている、小青龍湯の処方内容の覚え方ですが、麻黄、芍薬、乾姜、桂皮、甘草、細辛、五味子、半夏なのですが、これらの内、麻黄、乾姜、桂皮、細辛、五味子と何れも、温める作用のある薬草が、大半を占めている。一方、体内で、身体を冷やしている水を駆水する薬草も含まれている。つまり、簡単に言うと、身体を冷やしている水を、温めて、主に尿として駆水してやると、花粉症は治るのである。ある種の喘息も、同じ理由で、この小青龍湯で、簡単に治るのである。(素人療法は、危険ですので、必ず、専門家に相談して下さい。)  元に戻ってみると、食環境、住環境、嗜好品が問題と言っているのは、冬に、アイスを食べ、秋には、秋味のビール、冬には、冬のビール、冬に夏野菜、又その、真逆の事もありで、東洋医学的見地からすると、最早、正気の沙汰ではないと言っても過言ではない。  現代医学では、花粉症、喘息に、一部お手上げ状態の患者さんが、見受けられるのは、当然と言えば当然なのである。冷えと水毒が原因の喘息のお子さんが、薬嫌いで、アイスクリームに混ぜて服薬させるよう指導している、小児科医、薬剤師がおりますが、如何なものかと、思っております。

 無機質な肉体と有機的複合体としての身体の捕らえ方の違い(つまりホリスティック)が、一番大切と考えているのは、漢方家の一致した考えであります。水飲み健康法を実践して、アトピー、ニキビ、生理痛を悪化させて、私に、診を乞うてやって来た患者さんが、多く居られますが、これは、正に、肉体を無機質なものと、かん違いしているほんの一例である。癌患者さんの放射線治療(全てでは有りませんが)も、その一例と思っております。人間の身体は、正に、有機的に複雑に、精神と肉体までも含めて、リンケージしているのである。  ずっと以前の番組で、VRE(史上、最強の耐性菌)感染は、何故、おこったのか(タイトル名は、違ったかも知れませんが)の放送の中で、産卵するニワトリの餌の中に、抗生物質が混ぜてあって、知らず知らずの内に、抗生物質を体内に摂り込んでおり、その結果、耐性菌が増えている。又、何かに感染すれば、兎に角、抗生物質、化学療法剤を、子供の頃から、度々投与するのも、耐性菌を増やし続けている要因にもなっていると番組では、言っていた。

 体内環境をある意味、破壊し、純粋培養人間を作ってしまっている現代社会は、一体何処へ行き着くのであろうか。然しながら、適格な抗生物質の使用は、絶対的に必要である。密かに、蔓延しているSTD(性感染症)の撲滅には、正にその通りなのだが…。やはり、予防即ち、性教育の遅れが、結果的には、耐性菌を作ってしまう事にもなるのであろう。  オーガニックコットンを栽培した“土壌”を見るにつけ、抗生物質を頻用した肉体の何らかの“危うさ”を感じるのは、私だけで、あろうか?

(大津市薬会報 2007年 8月号掲載)

8号 ペンギン堂経験記(アトピー性皮膚炎・子宮内膜症・子宮筋腫)

2006-04-22

▲エピソード1) 手指のアトピー性皮膚炎で悩む看護助手の女性

 患者は病院勤めの50歳代の女性で、医療用具の消毒薬を使用する必要から、恐らくそれにかぶれたのであろう。見ると、所どころひび割れがあったり、ガサガサで皮膚が剥離して赤むけ状態の所があったり、所どころ分泌物が出ていて痒みが強く、一見して、正視出来ない程の気の毒な皮膚炎であった。患者は子供の頃からの汗かきで、特に頭に汗をよくかく。又、夜間、尿が一乃至二回ある。便秘気味で、ガスがよく溜まり、硬便を排便する。仕事がハードである為か、疲れ易く、睡眠は熟睡との事であった。漢方的診断で重要なのが、汗の有無と発汗する状態、そして排便の状況である。恐らく発症前は、手に大量の汗をかいていたと推察出来るが、今は手の汗腺がやられ、却って乾燥している。更に質問を重ねた所、人よりも手が熱いという事が分かった。最初、小建中湯と桂苓丸料に、別に知母・地骨皮を加えて服用願った。地骨皮はクコの根皮で、知母共々、手の熱、(煩熱という)をよく取ってくれる。次いで黄ぎを加えて再服して頂き、約四割方改善するも、汗は続いている。痒みもまだあるので、最終的に加味桂枝湯と消風散を兼用して頂いた所、まるで別人の手の様に奇麗になった。コーヒーとパン食を禁じ、米飯に切り替えて頂いた事も見逃せない。

▲エピソード2) 子宮内膜症を併発した不妊症の女性

 患者は長崎県佐世保市に住む36歳の女性で、遠隔地である為、FAXで問診を送付頂き、後はそれを元に電話で証の確定を行った患者さんである。ご主人の精子にも問題があり、妊娠はほぼ不可能である。ご主人は特に子供が欲しい訳でもなく、その後、自らの不妊治療は極めて消極的で、夫婦間の温度差は歴然としている。とにかく、奥さんの不妊を睨み乍ら内膜症の治療をする事になった。訴えは、激しい生理痛と時々生理が遅れる事があり、膣周りのカンジダによる痒みが時々起る。肩こりが強く、足先が冷え、腹が張りガスが溜まる・・・等の訴えがあった。最後に、不可欠な質問事項の汗はなく、便はかなり出にくい事が分かった。以上を漢方的に診断すると、子宮がかなり冷えている事が想像出来る。これは「お血」のなせる業と考え、桂苓丸料に牛膝と延胡索を加えて煎じて頂き、寝る前に桂苓丸加大黄を一回服用して頂いた。最初の30日分で、生理痛がかなり改善し、合計120日分服用後、主治医の診断の結果、悪い所見は全く無く、いつでも妊娠可能と太鼓判を押された。

▲エピソード3) 手術を薦められた月経過多出血を伴う子宮筋腫でお困りの女性

 患者さんは、平成元年にペンギン堂を開店して間なしの患者さんで、大変苦慮して治癒できた思い出深い治験である。昭和24年生まれの方で、来局された時は血色素6.8で、立っているのも大変と思われる程貧血が強かった。立ち眩み、朝の目覚めの悪さ、便秘,下腹部の張りが強く、何よりも筋腫(手拳大)による出血過多で、HRT療法も過日受けていたとの事で、最早、手術しか打つ手がない様な状況であった。どうしても手術したくない理由で、当店の漢方になった訳である。 又、激しい生理痛もこの患者さんを苦しめていた。先ず当帰四逆湯と牛膝・延胡索を同時に煎じて頂いた所、生理痛はほとんどなくなったが、出血量は相変らずで、折衝飲や十全大補湯・?帰膠艾湯等を経て、考え抜いた末、使ったのが温清飲と折衝飲と三七人参の併用であった。生理痛・出血が止まり、長服の結果、いつの間にか筋腫はなくなっていたのであった。

(大津市薬会報 2006年4月号掲載)

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