滋賀県の漢方相談薬局

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4月, 2022年

漢方の風音 15号 桂枝茯苓丸

2022-04-27

桂枝茯苓丸で※瘀血(おけつ)を改善して肩こり、冷えのぼせ、頭痛、月経痛、粘膜下筋腫の初期、不妊、肌荒れ、にきびetcを治す。

なかがわ漢方堂薬局 中川義雄

4月、桜の季節が終わると我が家のベランダでは2種類の牡丹が蕾を膨らませて花を咲かせる。
その牡丹が花を咲かせると今度は芍薬が蕾をつけ、牡丹が終わると芍薬が開花して順番に心を和ませてくれるのである。

この二つの花木は漢方薬では重要な働きをするのである。
牡丹の根皮(こんぴ)を牡丹皮(ぼたんぴ)と言い、牡丹皮は※瘀血(おけつ)、つまり血液が粘って流れが悪く、口が熱を帯び常に水で湿らせていたい(口渇ではなく口乾)、唇や舌の色が紫暗紅色を呈し、皮膚は鮫肌で青たんを生じやすく(知らないうちに青あざが出来やすい人)、歯茎や子宮に出血傾向を認める等…を改善する働きがある。
芍薬は根を乾かしたもので、筋肉の痙攣(子宮など)を緩め、鎮痛鎮痙作用や補益作用がある。
表題の桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)はこの牡丹皮、芍薬の他に桂皮、桃仁(桃の核)、茯苓で構成されている。
桃仁も又、牡丹皮と同様に瘀血を取ってくれます。瘀血の瘀は汚或いは悪に近い意味合いである。

瘀血を解消する事を駆瘀血(くおけつ)作用と言いますが、桂枝茯苓丸の駆瘀血作用(桃仁、牡丹皮)についてもう少し詳しく説明していきます。
桂枝茯苓丸は男性にも女性にも使えますが、一番よく使う症状は女性の卵巣、子宮に関わる病態である。
瘀血は骨盤内に炎症を起こし易く、子宮は血液の循環不良を起こすのである。
つまり、桂枝茯苓丸は下腹部の腫瘤や血腫、子宮内膜炎、卵巣嚢腫、月経不順、月経痛、不妊症、産後の子宮復古不全等を治す働きがあるのである。

毎月の月経血の排出が十分出来ないと骨盤内全体が瘀血を生じ様々なトラブルを引き起こすのである。
例えば卵巣に瘀血が生じた時を考えると二種類の女性ホルモン(エストローゲン:卵胞ホルモン、プロゲステロン:黄体ホルモン)の分泌の問題が考えられるし、優生卵胞(毎月排卵される卵子の素)の発育にも悪影響を及ぼします。
子宮には腫瘤が生じ、卵管にも悪影響が生じるのである。詰まるところ不妊を引き起こすのである。最近の当薬局での症例では卵巣捻転(卵巣が捻れて腹痛を起こし、酷い時は救急車で搬送され緊急手術となる)を瘀血が原因として駆瘀血剤で治した所です。

前稿で書きましたが明治生まれの女性の生涯の月経回数はざっと250回。一方、現代の女性の生涯月経回数は凡そ450回で回数だけを見ても現代女性は瘀血を発生するリスクが高く、その上、間違った食生活や社会の複雑化によるストレス(病理機序はここでは省略します)も瘀血を生じ、現代に生きる女性のリスクは計り知れないものが有ります。
数十年前、旅行の帰りに機内で隣りあった医師と漢方談義になり、その医師は桂枝茯苓丸にヨクイニンを加えると肌が見る見る綺麗になると仰っていましたが、美肌だけではなく骨盤内の瘀血が解消され、その女性の将来をも保証しているのである。

私の治験例では不妊でお困りの女性が無事妊娠し出産された例、ニキビ、肩こり、多嚢疱性卵巣、頭痛などが有ります。
男女を問わず骨盤内の欝血(痔、虫垂炎など)、自動車事故の後の瘀血の処理、スポーツによる打撲、体にメスを入れた手術の後にも広く使います。

昔、私の母親は血の道症と言う言葉を使っていました。
血の道症の意味は瘀血が原因で発症した神経性疾患(ノイローゼ、ヒステリー、うつ病、自律神経失調症など)の事を言い、桂枝茯苓丸で治す事があります。これは瘀血の上衝が原因であり、桂枝(=桂皮)が相俟って効果を発揮するのである。この瘀血の上衝による他の疾患としては様々な眼疾患(麦粒腫、角膜炎、眼底出血、虹彩炎、フリクテン性角結膜炎)がありますが、桂枝茯苓丸で治す場合があります。
瘀血の上衝を処理する他の処方を使って目眩(めまい)、耳鳴りを治療することもあります。

漢方の風音 14号 月経前症候群と月経前不快気分障害

2022-04-02

月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)と月経前不快気分障害(PMDD:Premenstrual Dysphonic Disorder)

なかがわ漢方堂薬局 中川義雄

最近、生理(月経)をテーマにした記事や放送が多く取り上げられるようになった。
先頃、NHKでは月経困難症や月経前症候群をテーマにした番組が放送された所です。又、新聞、TVのマスメディアでは生理の貧困の話題も取り上げられている。
18~49歳の女性3000人を対象とした調査では8%の女性が生理用品の入手に苦労し、30歳未満では13%の女性が苦労した事があると回答している。背景には若い女性の年収の低さが関係しているとされている。

扨、本題のPMS、PMDDの漢方治療について書いていきます。
月経前症候群:PMSは腹部や胸の張り、頭痛、腹痛、下痢便秘の排便異常といった身体的症状と憂鬱感、イライラ、怒気などの精神症状があります。
通常、身体症状と精神症状が同時に現れますが、取り分け精神症状が強く表れるPMSをPMDDと分けて言うことが有ります。
このDはDysphonicの略で“憂いの”“悲しい”の意味です。PMSは女性ホルモン分泌の急激な低下が原因とされています。
子宮では受精した卵子を受け入れて育て上げる子宮内膜が2種類の女性ホルモン(エストローゲンとプロゲステロン)の働きで作られ維持されています。
若し、受精卵が出来なかったら女性ホルモンの分泌は減衰して、その結果子宮内膜は不必要になり崩壊して剥がれ落ちる事になります。これが月経です。
この不要となった内膜を排出する際に子宮は収縮して排出を促しており、その際何らかの原因で子宮筋(平滑筋)の柔軟性が乏しいと激しい痛みを伴います。
その昔(50年ほど前)では筋肉の収縮を抑えるパ〇リ〇(ブスコパンと同じ鎮痙剤)とピリン系鎮痛剤のスルピリンの合剤が月経痛に使われたものです。
鎮痛剤を使っても抑える事が出来ず日常生活に影響を及ぼす症状を月経困難症と言います。

PMSを発する女性は往々にして強い生理痛をおこす事があり、この場合はPMSが7~10日間あって、月経痛が数日間あるとするとひと月の半分は体調が悪いことになり、女性の社会進出を考えると社会問題と言っても過言ではありません。私の母親は明治40年代の生まれで7人の子供を育て上げた。
その頃の女性は5~8人を出産することは珍しくなく(11人兄弟姉妹の友人もいた)、妊娠中と授乳中は月経がなく、5人の出産の場合は妊娠中10か月と授乳中24か月を計算すると5×(10+24)÷12=14年となり月経年齢を当時14歳~49歳とすれば35年間の40%にあたる14年間は生理が無かった事になり逆に21年×12=252回の月経が有ったことになります。
現代の女性は生涯で450回月経があるとされておりPMSを発症する女性の苦しみは昔より約200回月経回数が多く遥かに辛いものがあります。

当薬局では多くの女性のPMS、月経困難症の漢方治療を行って来ましたが、漢方理論で対処するとうまく治療することが出来ます。

PMSの漢方治療は“気”と“血(けつ)”を弁証します。気の滞り(気滞)と血の滞り(瘀血)を解消するとPMSに対処することが出来ます。
生殖器は肝の経絡と繋がっており、自律神経とも繋がっており、その肝の経絡を流れる気が滞(気滞)ると自律神経は異常を起こし発汗や血流や女性ホルモンの分泌に異常を起こすことになる。自律神経はストレスによって乱れる事が現代医学で証明されており、逆にストレスの多い現代社会では生殖器に異常が起こっても不思議ではありません。
精神的ストレスは身体的には胸や喉、腹部のつまり感や張満感(張り)胸痛、腹痛を引き起こし、精神的にはイライラ、憂鬱感、怒気、を引き起こす。

つまりPMSは前出の気滞を解消する薬草(柴胡、枳実、厚朴、陳皮、香附子、半夏、烏薬、木香等)と瘀血を解消する薬草(当帰、芍薬、川芎、桃仁、牡丹皮、延胡索、紅花、牛膝等)を使ってうまく治療する事が出来ます。香附子、延胡索は鎮痛作用も併せ持っているので激しい月経痛には良く使います(例:芎帰調血飲第一加減、折衝飲、加味逍遙散加香附子、延胡索。etc)。

月経前になるとご主人に対して怒気を覚え包丁を持ってしまう、その為にご主人はPMSになると自宅に帰らず会社で暫く寝泊まりする例。逆に奥さんが子供とご主人に強く当たってしまう為に実家に避難する例。教鞭をとる女性の不妊治療漢方薬(40日間服用)では気滞と瘀血を取る薬草が入っていた為に「先生!この頃ニコニコしてイライラしなくなったね」と生徒から言われ、その後直ぐに妊娠された例。気持ちが滅入ってしまう例。その他、多数の症例があります。

月経困難症で鎮痛剤の減薬や使用しなくなった例など数多くの治験があります。

漢方薬は根本的な原因に対処して治療するためPMSや月経困難症は不妊治療共々最も得意とする分野である。

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