アトピー性皮膚炎・滋賀県・漢方薬 | なかがわ漢方堂薬局

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28号 漢方の風 ーアトピー性皮膚炎

2011-05-21

 東日本大震災に被災された方々には衷心よりお見舞い申し上げます。又、お亡くなりになられた御霊に十念(南無阿弥陀仏)を唱和し、ご家族には哀悼の意を表します。

宮古市の重茂半島の姉吉地区には先人が海抜60mの場所に“此処より下に家を建てるな”と刻んだ石碑を遺しているそうで、重茂地区の住民は以来それを守って来た結果、全ての世帯が今回の大地震の津波から被災を免れたと報じられていた。現代の科学的予測の或を超えた大津波の災禍から免れた先人の知恵の確かさを顧慮しなければならない。今回の大震災を見るに付け科学的根拠の危うさ(高さと強固さを計算して作られた防潮提と防波堤が破壊された等)を露呈したと言っても過言ではない。福島の原子力発電所も又、然りである。ダブルフェイルセーフ以上の安全を担保する知恵を絞らなければならない。想定外だったではすまされない…。佐藤栄佐久前福島県知事は起こるべくして起こったと憤っておられます。(前知事は原子力発電推進派でもあるが、原子力政策の隠蔽体質と闘って来られた)

アトピー性皮膚炎の治療においても、同じ事が言えると私は考えております。例えば、喘息の漢方治療をする時には背の青い魚だけでなく肉食をも極力避けるようにして戴く。これは先人の古書に書いてあることなのですが、漢方の臨床では経験的に実践して好結果を得ています。同様にアトピー性皮膚炎の治療においてもアレルゲン検査も大切ですが、何よりも大切な事は湿熱を溜め込まない食し方をする事と考えています。従って漢方治療では、間違った食生活から発生した湿熱を如何に捌くかを徹底して行うと、重度のアトピー性皮膚炎でさえ自然に元の綺麗な皮膚に戻るのである。湿熱を発生させる可能性のあるステロイド療法は漢方医学的にはしてはいけない事になるのですが、一時避難的には有効な手立てではあると考えております。

 

 湿熱とは湿邪と熱邪がくっ付いたもの。湿度の高い日本では湿邪(湿気)が外因(外敵)として皮膚を攻めて来る(風の邪が表を攻めて来て守りきれず発症するのが風邪と同じ考え)。昔なら汗をかいて皮下の湿を発散したものですが、冷房完備下の環境では発散は不可。それどころか口からは更に追い討ちをかける様に必要以上のジュース、ビール、アイス等の飲食物を摂る。内外から湿に攻められる結果、体中(細胞から組織、器官、夫々の間隙迄も)水が氾濫する。一方、フライ物、生クリーム、スナック菓子、インスタント食品等の甘食厚味な食べものの摂取過多が熱を生じ、地球温暖化も相俟って“湿熱”が出来上がるのである。この湿熱が体中を席巻し心の火と出合って強烈な痒みを発するのである。又、有機物を含んでいるであろう黄砂や花粉、ホルマリン、トルエン等が皮膚を攻め立て、体の防衛軍である衛気(えき:体表を守っている気)と遭遇し熱を生じ、湿熱は更に増長するのである。

 

 漢方薬でこれらの湿熱を捌き、一方、口からは前出の飲食物の制限をすると、あれほど頑固なアトピー性皮膚炎も改善して来るのである。これらの漢方理論及び食養生を“想定外だった”と社会が顧慮する日が来ると、反省が生まれ、より健康的な生活が保障されるであろう。何よりも医療費の削減迄もやってのける事が出来るでしょう。 ここで、あと一つ弁証しなければならない事が有ります。それは現代社会の作り出したストレスが火と化し病証を悪化されておられる患者さんも多く見られる事です。

漢方医学では肺は皮毛を主り、脾(大雑把に言えば胃腸機能)は肌肉を主ると言います。従ってアトピー性皮膚炎は肺と脾の病証といえます。又湿熱の充満しきっている少陽三焦と表裏関係にある心包経の病証とも言えます。又先天の腎の虚も考える必要が有ります。

 

 消風散、十味敗毒散、黄連解毒湯、辛夷清肺湯、六味丸、補中益気湯、猪苓湯、三物黄?湯、当帰飲子、温経湯、四逆散、加味逍遙散、荊艾連翹湯、抑肝散加陳半、麻杏甘石湯、地竜、越婢加朮湯、白虎加人参湯、竜胆瀉肝湯、柴胡桂枝湯辺りから3~4処方をうまく使い分けて治療します。治療には苦心惨憺するものの長年苦しんでこられた重症のアトピーが治って行かれる患者さんの笑顔に接し、漢方医学を勉強して良かったとつくづく感じております。

(大津市薬会報 2011年5月号掲載)

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