37号 漢方の風 - 腸内フローラ(多系統委縮症、鬱、食養)
今から十数年前、大津市薬剤師会会報(市薬ニュース)に口内炎と腸管内の細菌と漢方薬の作用について投稿したことが有ります。
それは、腸管内のある種の善玉菌がビタミンB2を作り出して口内炎を防いで居り、その腸管内のある種の善玉菌の増殖に半夏瀉心湯が一役買っていると言った内容である。
更に最近、記憶に新しい所では、腸管浸漏症(Reaky Gut Syndrome)
と漢方薬の関係を書いた所です。
それは腸管が冷えて柔軟性を失う事によって腸管にひび割れを起こし、そのひび割れ部分から、本来絨毛から吸収されない分子量の大きな(5000ダルトン)物質(主に蛋白質や菌類等)が腸管内に入り込み、その部分にある神経組織と抗原抗体反応を起こし、腸管神経組織と発生学的に同じ脳内の神経組織とも抗原抗体反応を惹き起こし多系統委縮症を惹き起こす。
それを防ぐには蛋白のペプチド結合を分解して分子量の小さい蛋白質にする必要がある。
ペプシンを活性化してペプチド結合を分解する為には胃酸(塩酸)が必要なのだが、様々な胃酸分泌を抑える医薬品を長期に亘って投薬する事のリスクが存在する。(ミネラルやビタミンは分子量の小さい蛋白と結合しなければ体内に吸収する事は出来ない事、又、細菌、真菌類等の有害菌も容易に浸漏して来る事等が言われている)
それに関係するその他の医薬品にはHRT療法のピル、NSAID、ステロイド剤等がある。夫々には勿論ベネフィットが有りますので一概には何とも言えませんが…。
漢方医学的にはその腸管浸漏症は脾虚が絡んでいるので精神的緊張を解きほぐしお腹を温める小建中湯が効果的である。
最近、NHKで腸内フローラ(細菌藁)に関する放映が有りました。凡そ100種類、100兆個のバクテリアが腸内に住んでおり糞便中の半分近くをバクテリアが占めているらしい。
肥満、鬱症状、癌、慢性疲労症候群等は腸内の悪玉菌が関与していることが実証されている。
出来得る限り善玉菌を沢山保持する事が大切な事は自明の理であろう。
乃ち鬱症状を惹き起こす腸内細菌を無くす事が出来れば鬱症状が改善する。
漢方薬では四逆散やその変方群(柴芍六君子湯、逍遥散、柴胡桂枝湯、柴胡疎肝湯他)、防風通聖散、竜骨牡蛎、帰脾湯、香蘇散、茯苓の配合剤、駆?血剤等を使って対応すれば良いのであるが、夫々が腸管に直接的或は間接的に作用している事を考えれば漢方医学の素晴らしさが理解できるであろう。
西洋医学でも今後は腸管に対してのアプローチが益々重要視されて来るであろう。
当店のお客様には以前から食養生の大切さをクドクドと話しておりますが、マクロビオテックも然りですが一番解りやすい言葉では、「マゴワヤサシイ」である。
マ…豆類 (イソフラボン、マグネシウム、蛋白)
ゴ…胡麻、クルミ、ナッツ、 (不飽和脂肪酸、ビタミンE)
ワ…わかめ、海藻類 (ヨード、微量ミネラル、カルシゥム)
ヤ…旬の野菜 (ビタミンC、βカロチン)
サ…魚、貝類 (オメガ3系脂肪酸、蛋白、亜鉛)
シ…椎茸、茸類 (繊維、多糖類)
イ…芋類 (セルロース、炭水化物)
更に主食が玄米であれば言う事は無い。(玄米には抗癌作用の有る物質が見つかっている)
1968年、アメリカでは“食”に関して、マクガバンが委員長となり上院特別委員会が発足した。
様々な方面の議論を尽くし1977年漸くマクガバン報告が発表されました。
1960年代のアメリカでは心臓疾患やHIV、癌、貧困層の栄養失調等が問題となっていたのである。
その原因を解明し、解決策を講じるためにこの報告書を発表したのである。
そこで目をつけたのが日本食である。
肉、玉子、乳製品を控えて穀物食を中心にした食事を実践するとそれらの疾患が予防出来ると言うものである。
オーガニックの言葉を広めたニューヨーク在住の久司道夫さんが大いに係って居られる。
久司道夫さんはマクロビオテックの提唱者で現代のアメリカを救ったと言っても過言ではない。
久司道夫さんは桜沢如一さんの弟子であるがその桜沢如一さんは、大津に所縁のある方で札の辻を京都方面に上がった所に研究所を構えられた。
私が40数年前、山科の自然食品店で買った桜沢如一著「食養療法学」に住所が書かれています。
21世紀に入りアメリカの癌発生率は右肩下がりで減少している。その反対に右肩上がりで増えているのが我が国日本である。
国は食の安全を担保する事が喫緊の課題であるが、現状では国の安全、経済、少子化、自然災害、福島の原発事故対策に取り組まなければならない。
そこで重要に成ってくるのがマスコミであろう。又、身近に医療現場に居る。
我々薬剤師の役割も非常に重要であろう。
なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄