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漢方の風 48号 慢性疲労症候群
胃腸虚弱(吐き気、食欲不振、膨満感)
なかがわ漢方堂薬局 中川義雄(昭)
数年前、当薬局の患者さんの紹介で他府県から来られた若い女性は来局当時、体調を崩し、体重40kg台から8kg痩せたとの事。掲題にあるように胃がムカついて食事が満足に摂取出来ない。問診票には虚弱体質でアレルギー体質(塵埃、花粉)、疲れやすく、暑がりで寒がり、汗かきで傷が治りにくく、季節の変わり目が辛いと書かれている。更に問診の中で過去に過呼吸歴があり、風邪をひきやすく、引いたらなかなか治らない。お通じは一定せず便秘だったり下痢だったりする。それに足先がとても冷えて辛い。月経は痛みが強く、不順で経血は少ない。甘さより塩分を好む事も確認できた。
病院で慢性疲労症候群と診断され、補中益気湯と睡眠薬を投薬されている。補中益気湯を食前に服用すると悪心(おしん:気持ちが悪い)がするので食後に服用しているとの事。数年間、服用しているが全く改善していないとの事で当方に相談に来られたのである。お話を聞いているとその辛さがヒシヒシと伝わってくる。又、問診の途中で数回咳払いをされる事も確認出来た。
それらの事からある体質を念頭に入れながら問診を続けると、喉は紅く腫れていて中耳炎歴、副鼻腔炎があって手掌と足跡に発汗しやすい事も判明した。病院からは風邪時に桂枝湯が頓服で出されている。
問診の結果、そもそもの発病原因は持続して繰り返すストレス(内容はここでは省略します)が原因である事は明白であるが、本人の生まれながらの体質も深く関わっていると弁証することが出来た。
そこで、柴胡桂枝湯と半夏厚朴湯、六君子湯と補中益気湯を服用して頂いた所、服用途中、風邪を引くことはあるが症状は軽く、しかも早く治る。生理は順調になり生理痛も軽くなってきた。更に食欲も出てきて、体重も徐々に増えてきた。
長期に亘って服用して頂いた結果、体調が凄く良くなってきたと喜んでいただいた。
上記の生まれながらの体質とは解毒証体質の事で更に持続して繰り返すストレスが自律神経を介して胃腸を傷つけ上記の様々な症状を引き起こしていたのである。
つまり、この患者さんは真の慢性疲労症候群ではなく、喉が弱く感染しやすい体質がもともと有って、その上に持続性のストレスが覆いかぶさって発病したのであり、治療はストレス性の消化器症状を改善しながら咽喉の感染を治療且つ予防していく事である。上記の漢方処方を継続して服用して頂いた結果、徐々に体力がついて来たのである。養生の面から大切なことはこの持続性のストレスから距離を置く事であろう。
よく、喘息には自然の多い所への転地療法が良いと言われておりますが、それは今の環境で受けているウイルスやバクテリア、花粉、塵埃の侵襲を避け、更に、受けているストレスから遠ざかる事に他ならない。この患者さんに行った漢方治療は喘息ではないがこの転地療法とよく似ていると私は思っている。
以前、アメリカ大統領諮問機関で報告書を作成した上院議員のマクガバン報告の事を過去の漢方塾で書いた事が有りますが、つまり肉食を減らしてアメリカの癌の罹患率を減らした内容でしたが、マクガバン報告では他にもミネラルやビタミンなどの栄養素が乏しい野菜や根菜類を改善して、本来の栄養素がしっかり入った食べ物を摂取する事が大切でありそれを摂取すると癌の発生を減らすことが出来ると言うものもあった。転地療法ではその土地の栄養価の高い野菜なども摂取できるのであろう。
アメリカの代理母制度では喫煙やアルコールを控える事は当然として、添加物が少なく、正食(栄養素がしっかり入った食べ物)を摂る代理母に対しての報酬は極めて高額に設定されている。