アトピー性皮膚炎・滋賀県・漢方薬 | なかがわ漢方堂薬局

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漢方の風 42号 AD(注意欠陥症)/ HD(多動症)

2019-09-26

漢方塾…AD(注意欠陥症)/HD(多動症)

なかがわ漢方堂薬局 中川義雄


医学の言葉でADと言えば

  1. Alzheimer‘s Disease(アルツハイマー病)
  2. Atopic Dermatitis(アトピー性皮膚炎)
  3. Attention Deficit(注意欠陥症:注意欠陥障害)

を主に思い起こします。
Attention DeficitはHyperactivity Disorder(多動症:HD)の症状を往々にして併発しますのでADHDと並び称せられることが一般的です。
過去にアルツハイマー型認知症とアトピー性皮膚炎については以前に漢方医学サイドからの私見を漢方の風で書きましたが今回は注意欠陥障害/多動症について書いて見たいと思います。

注意欠陥症/多動症の症状は「不注意」「多動性」「衝動的な行動」といったものが知られておりますがその発症原因は定かでは有りません。

“脳の体積が小さく成っているから”や“左右にある海馬の形が非対称でその結果左右の海馬から出される脳波のネットワークが不均一になるのが原因”や“前頭前野に問題があるから”等の説が唱えられております。

ここでは大脳の前頭前野(ぜんとうぜんや)に問題がある説を取り上げて漢方医学的アプローチを書いて見たいと思います。

多様なストレスや不安感が続くと前頭前野の働きに悪影響を及ぼすと言われています。
前頭前野は人間らしさ、つまり思考や創造性を担って居り、反応抑制(行動を起こすときに不適切な行動を抑制し適切な行動を実行する)や、推論(生物は生存の為に外部環境において適切な行動の選択を迫られる。その際、過去に経験して得た知識のみから行動を固定的に選択するのではなく、それらを組み合わせて柔軟に行動をする事によって新しい事態に備える)等によって、判断力、適切な感情の発現などを主っています。この部分に問題が生じると注意力が散漫になり感情のコントロールが上手く出来なくなるとされています。

前頭前野に問題がある人は往々にして神経伝達物質であるドーパミンやエピネフリンが不足しており西洋医学では神経伝達作用を惹起するドーパミン製剤を投与して症状を改善します。
ドーパミン製剤は全身の神経の興奮度を高めますので、どうしても副作用を免れる事は出来ません。
副作用の一例としましては交感神経の働きを高めますので腸管(小腸、結腸)の働きを抑えて便秘を惹き起こしたり膀胱の平滑筋の緊張度を弛緩して排尿を阻害したりします。


一方、東洋医学では五蔵の一つである<肝>が自律神経始め精神状態をコントロールしていると規定しており、肝が不調になると情緒が不安定になりイライラ感が出たり、少しの事で怒りが表れたり、落ち着きが無くなったりします。従ってADHDの症状が表れたら先ず肝の陰陽に着目して弁証します。
肝の陰とは肝の血(けつ)であり、肝の陽とは気の働きであり気の流れを言います。肝の陰と陽はお互いに制御し合ったり、お互いを生じたりしています(陰陽互根)ので肝の陰(血)が不足すると肝の陽である気の働きが過剰になり怒りやイライラ感や落ち着きが無くなったりします。従ってADHDの漢方治療は先ずは肝の血を増やす薬草(地黄、当帰、酸棗仁、阿膠、竜眼肉、芍薬、鶏血藤等)を考慮し、気の鬱滞を疎通(そつう)させる薬草(柴胡、香附子、枳実、陳皮、半夏、厚朴等)も考慮しなければなりません。

又、<心>も精神活動に関わっていますので心の陰陽も考慮しなければなりません。
心の陰である心血を増やす上記の補血薬草を考慮し心の働きつまり精神生活を担保しなければなりません。

更に<肝>と<腎>は五行学説では母子関係に有り又、肝腎同源といって肝の働きが失調すると腎の働きに悪影響を及ぼします。
腎は成長、発育、発達、生殖を主って居りますので場合によっては補腎薬も考慮しなければなりません。

更に漢方医学では寒熱つまり、寒の症状か熱の症状かも弁証します。
熱証(熱の症状)になるとイライラ感が出てきます。従ってその方のイライラ感を熱証と捉えた時は熱証を取り去る薬草(清熱薬)で熱を取って気持ちを落ち着かせます。

又、気持ちを安定させる働きの事を安神作用といいます。
重鎮安神薬である竜骨、牡蛎を使う事も有ります。

肝の陽の気の上衝はイライラ感や怒りを惹き起こしますので、肝気の上衝を引き下げる薬草である釣藤(カギカズラ)を使う事もあります。

肝の失調がADHDの原因とした時、現代人は多かれ少なかれ発達障害を発症する可能性を持っていると言っても過言ではないでしょう。
(因みに今現在の統計では20人に1人がADHD症を持っていると言われています。)

片付けが出来ない人、人の話を最後まで聞けない人、自分の思っている事を話さずにはいられない人、話している間に自分が何を言っているのかが分からなくなる人、物忘れをし易い人等、私の周囲にも沢山の人がおられます。勿論、私も然りですが肝の失調を惹き起こすストレスが複雑に入り乱れている現代社会では益々後天的ADHD症は増えていくであろう。

最近、当方が優先道路を走っている時、右から明らかに狭い、狭小の道路から一旦停止することなく右折して来る車と衝突しそうになるケースを度々経験しています。これは前頭前野での「反応抑制」が出来ていない為ではないでしょうか。

漢方の風 41号 他力本願と自力本願

2018-01-19

1、肺の働きと排便の関係  2、遠志茶と物忘れ

なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄(昭)

日本の宗教では自力本願と他力本願があります。私の家は法然上人が布められた浄土宗ですので、他力本願になります。従って、只管(ひたすら)、南無阿弥陀仏を唱えると良いと菩提寺の住職から教わり、毎日仏壇に手を合わせて南無阿弥陀仏を唱えています。他力本願とは言うものの毎日、経を唱えるのは己であるわけで、決して人様が自分の代わりに南無阿弥陀仏を唱えてくれる訳ではないのでこれ自体は狭義の意味で自力本願と言っても良いのかもしれない。自力で只管、経を唱え、その先の魂の世界は阿弥陀様におすがりしようと思っています。“人事を尽くして天命を待つ”又“継続は力なり”とも申しますのでこれからも毎日続けようと思っています。


一方、昨今の日本の風潮は専ら他力本願に頼っている様に思える。これさえ飲んでいれば食事制限をしなくてもダイエット出来る…もそうです。又、平成の始め頃、麻黄を買いたいのだが、価格はいくらですかと電話が有りました。問うてみるとダイエットに良いと週刊誌に書いてあったとの事。呆れましたが丁重にお断りしました。

更に最近気になっているのが認知症を防ぐ事が出来ると喧伝(けんでん)され“遠志茶(おんじ茶)”がブームになっている事です。中医学では「心は神なり」つまり心が精神を主っているとされ、遠志はその心に血(陰)を補う作用、つまり養心安神して心の抑制過程の低下(心血虚)を改善して物忘れを防ぐとします。心労が継続すると心の気血を消耗してしまい、その結果、健忘が発症する。心労が元々の原因と考えた時、その発症の原因(心労)を先ず解消する事が肝要であり、それが根治に繋がるのである。

荒木正胤先生は「漢方鍼灸の治療」を著すに当たって先ず“養生編”で東洋の栄養学である正しい食生活と不老長生術、正しい性生活の意義について説いておられる。治療に際しては先ず患家が正しい食生活なり、つまり養生を実践して後、或は並行して漢方治療を施すべしと説いておられます。養生は自力のなすところであり漢方治療は他力の為すところと言う事が出来る。

遠志茶だけを飲んだだけでは効果は期待薄。漢方医学では陰陽互根と言って、陰が陽を生じ、陽が陰を生じるとしており“陰”である遠志だけを摂れば良いのではなく陽である“気”を同時に高める必要が有ります。心の気血両方が充実して初めて健忘が解消されるのである。


端を更め、“気”について書いて見たいと思います。漢方医学では陰陽虚実の弁証と気血水の弁証を行って初めて処方を決定します。中でも“気”は形なくして働き有るものと、いつかの漢方塾で書きましたが、最も分かり難いと思います。中医学では肺は気を主(つかさど)り粛降(しゅっこう)と宣発(せんぱつ)を主ると規定しています。粛降とは下へ内へと働きかける事を言い、例えば尿と便も肺の気の粛降作用が働いて初めて下へ排出出来るのである。


最近、私の知り合いで年齢も私に近い方ですが、便秘で困っていると相談を受けました。近医に受診して下剤を処方されたが効果が全く無く、そこで当薬局で相談になった次第である。順気作用(小承気湯を処方内に含んでいて順気作用、つまり蠕動運動を高める)のある麻子仁丸をお薦めしたのですが効果が無く、そこで受診勧奨をして病院の消化器内科を係院した。そこでも満足に排便が出来なくて、そこで初めて精密検査(CT)をした所、肺に癌が転移している事が解った。そこで再度、当薬局に相談に来られた。肺の粛降作用が阻害された結果、排便がうまく出来ないと弁証して、生脈散と麻子仁丸を併服して頂き何とか排便出来る様になった。

生脈散は人参、※五味子、麦門冬で構成されていて、肺の気と陰を補う事が出来、粛降作用を高めて排便をし易くしているのである。勿論、呼吸が楽になったのは言うまでもない。

因みに宣発とは外へ上へと働きかける事である。


 ※五味子:専収斂肺気、而滋腎水
      …専ら肺気を収斂して、そして腎水を滋す
  麦門冬:徐煩瀉熱、消痰止嗽、生津行水
      …煩を除き熱を瀉し痰を消し嗽を止め、津を生じ水を行らす

漢方の風 40号 ロコモティブ

2017-06-14

ロコモティブ(腰痛、関節痛、ひざ痛、認知症)

なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄(昭)

私の生家は創業160年の茶商で江戸時代に大名行列が行き来していた東海道(現在の京町通)に有ります。京町家(キョウマチヤ)と同じで、俗にウナギの寝床と言いますが「店舗兼用の母屋」と「離れ」の間には「庭先」と「蔵」が有って、更に「離れ」の奥(奥の事を「裏」と大津では言います)にはお茶の倉庫があり、表の店舗と裏の倉庫を、つまり「表」と「裏」をレールで繋いであって、その上を「トロッコ」が走っていた。

図式では、(表)店舗兼母屋-庭先-蔵-離れ-小倉庫-大倉庫(裏
     (表)店舗兼母屋……トロッコ(お茶を運ぶ)……大倉庫(裏)

表から裏迄約70メートル近く有りますので商品を倉庫から店舗に運ぶ為にトロッコが必要だったのである。第二次世界大戦までは男衆が7名と女衆4名とお手伝いさんが2名働いていたと聞いている。男衆は全員戦争に行ったので戦後生まれの私は知り得ません。江戸時代、その店舗の前を町人や武士が行き来していたのである。

ある時、薩摩藩の大名行列が京町通にやって来た。梅林(県庁の南側一帯をウメバヤシと言います)に住居するY青年(16歳)が行列の前を誤って横切り”手打ち”(切り捨てご免)になるところを当店舗に逃げ込んで来た。当時の店主の中川ミノが裏の大倉庫の茶箱の中にY青年を潜ませ、押し問答の末一命を救ったと当家では代々伝えられている。恐らく大倉庫の裏の塀を乗り越えて逃げて行ったとでも言ったのであろう。

江戸時代にその気丈なミノの長男として生まれた祖父は東洋の施術を心得ていて、本業の茶商の他に柔道整復師らしき整体や時には煎じ薬を使って困っている人に施術していたと聞いている。私は7人兄弟の末っ子で、私が生まれた時には祖父は他界しており私は知りません。桂皮、大棗等の薬草が家に有ったと兄から聞いていますので、恐らく桂枝湯加減や桂枝加芍薬湯加減を使って風邪、神経痛、関節痛、リウマチ等を治していたであろう事が察せられる。今の時代、この二つの処方の展開でこれらの症状は治しきれないと思います。取り分け腰痛や関節痛を治す事が得意だったと聞いているが現代漢方医術では前出の処方の他に独活寄生丸、疎経活血湯、?苡仁湯、通導散、防風通聖散、?帰調血飲第一加減、八味丸、地竜、附子湯加減…他が必要であろう。

最近ひざ痛のCMでよく耳にするイミダゾールペプチド(カルノシン)配合のロコモティブ製品は理に適った考えである。カルノシン(βアラニンとヒスチジンが結合したジペプチド)やアンセリンを摂取すると速やかに夫々のアミノ酸に分解され、骨格筋や脳へ運ばれて行き、速やかにイミダゾールペプチド合成酵素の働きでカルノシンに再合成される。このイミダゾールペプチド(カルノシン)は鳥の羽の胸筋部や回遊魚であるマグロの尾びれに近い部分に多く存在しており、筋肉の疲労物質である乳酸の分解を促し、又、強力な抗酸化作用を発揮して細胞内の活性酸素をスカベンジ(消去)して細胞の疲労を速やかに解消するのである。斯くして渡り鳥が1万kmをノンストップで飛ぶメカニズムが解明されたのである。

関節痛に対してグルコサミン、Nアセチルグルコサミンで軟骨の生成を促す(グルコサミン類は保水性のある軟骨の一種であるプロテオグリカンを生合成する為に必要な一成分)だけではなく関節の支持組織である骨格筋の維持にイミダゾールペプチドを同時に摂取する有効性、つまりロコモティブの考え方は重要である。

最近そのイミダゾールペプチド(カルノシン)が認知症の予防に係っているとする研究発表がなされている。筋肉の疲労を解消するカルノシンは生後、使い過ぎた脳の疲労をも解消し、認知症の予防になるのではないかと推論し、実験の結果それが立証されたのである。余談になりますが少し認知症と老人班とアルミニウムについて触れます。大脳皮質や海馬に沈着する老人班(アミロイド班)はアルツハイマー型認知症の原因と言われて久しいが最近の研究では老人班は結果であってアミロイド班が表れる前にβタンパクが神経細胞に沈着する。このβタンパクはアルミニウムによって凝集し、アミロイドβを作り出す。その結果、老人班が形成される(βタンパクを凝集させるアルミニウムはアジア大陸で発生した酸性物質が日本の上空で雨に溶けて降り、土壌を酸性化し、その結果土壌中のアルミニウムがイオン化して野菜に取り込まれ我々の口に入るのである。)

イミダゾールペプチドがロコモティブシンドロームのみならず、認知症に光明を持たらせてくれる可能性は高い。

前出のひざ痛や腰痛、下肢痛に使用する独活寄生丸(千金方)は八珍湯(去白朮)が処方内に含まれており、気と血の虚を補う一方、同じく処方内に含まれている桑寄生、杜仲、牛膝が筋肉と骨を丈夫にする(補肝腎、壮筋骨)作用を併せ持っている。独活寄生丸は当薬局の頻用処方の一つであり気血が虚している人にはとても効果を発揮する。

その独活寄生丸の処方内容を良く吟味してみると、1350年前(AD650年頃)に孫思?(ソンシバク)が千金方(センキンホウ)の中でロコモティブを実践していたと言う事が出来る。漢方医学は将来に亘って人類を救う一手段であると確信しています。生薬資源が枯渇状況に有る現在、エビデンスに則った漢方薬の使い方、乃ち弁証論治を肝に銘じなければならない。

漢方の風 39号 アナフィラキシー

2017-01-21

漢方ガン治療の考え。

なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄(昭)

大学の薬理学の授業で犬を使ったアナフイラキシーの実験が有りました。予め、ある蛋白質をアレルゲンとして注射しておいた犬に授業の始めに同じ物質を注射した所、犬は私達学生の前でたちどころにアナフィラキシーを発症して死に至った。

私の三番目の兄は52年前の大学3回生の6月に心臓弁膜症の手術を受け約2週間後に死亡したのですがその兄が術前自宅療養している時にペニシリン系の抗生物質の注射を受けた所、酷い薬疹が出た。主治医が急いで抗アレルギー剤かステロイド剤か定かでは有りませんが(私は高校3年生で分からなかった)何かを注射して事なきを得た。

又、平成4年頃当薬局の上階のマンションに住まいしていた医大の学生さんにOTCの総合感冒薬を販売した所(勿論薬剤アレルギーの確認をした事は言うまでも有りません)、服用後、峻烈な呼吸困難を伴うアレルギー反応を起こしたのですが急遽医大病院で点滴を受けて回復した。その学生さんの父親は医師で、その原因物質を特定する様に当薬局を通じてメーカーに求められたが、そのドクターも日頃良く使用する成分ばかりで、結局、明確に原因物質を特定できなかった。メーカーの学術の説明では成分中の抗ヒスタミン薬が原因物質であろうとの説明であったが父親である医師も私も納得出来るものでは無かった。

更に30年程以前に私が販売した咳止め薬のコ○○○○を服用した女性が酷いアレルギー反応を起こして救急車で緊急係院した事も経験している。その時はコーヒーを水変わりで服用した事が原因でしょうと係院先のドクターが指摘して終わったのですが結局は原因物質を特定する事も無く終わった。

数年前、先進国の殆どの若い女性が子宮頸がんワクチンを接種した。その結果EUのある国の女性達が子宮頸がんワクチンの後遺症であろうとの認識のもと、国と製薬会社と闘っているドキュメンタリー番組を見たことがある。最近、漸く日本でもその動きが有った所ですが彼女たちの苦しみを見るにつけ何とも言えない気持ちになります。早く健康を回復される事と迅速な因果関係の解明を願うばかりです。医薬品を扱う私達は覚悟して薬を扱わなければならないし、患者さんが薬の害作用を被らない様に最善の努力を尽くさなければならない。


漢方薬の世界では小青竜湯や麻黄湯を服用して脱汗を発症し死線を彷徨った方が少なからずおられます。これは上記のアナフィラキシーとは分けて考えなければならない。それは小青竜湯や麻黄湯が悪いのではなく飲み方、飲ませ方が悪かったのが原因であり(全てがそうとは言えませんが)、上記の薬品アレルギーとは別の問題と考えるべきです。脈診、問診をしっかり行い更に病機(病気ではなく)を見て使用しなければならない。夫々の漢方薬の使い方を傷寒論(漢方医学のバイブル書)では厳しく規定しているのである。


端を更めますが(平成28年)11月に中医協(中央社会保険医療協議会)がオプジーボの薬価について協議した。その結果、保険の適応症の拡大と引き換えに来年2月から薬価が50%引き下げられる事になった。その際小野薬品工業は25%の引き下げと目論んでいたと言われていますが当事者の小野薬品工業は当然として他の製薬企業も不安感に襲われたとネットに書かれていた。長い期間を要して多大の研究費をつぎ込んで開発した新薬が思うように薬価に反映されなければ製薬企業が不安を抱くのも無理はない。一方支払い側である保険者、国は大変な負担増になり保険医療制度が危うくなる。今後、この規模の新薬が開発されれば同じことが繰り返されるであろう事は察しが付く。難題である。

そのオプジーボの作用機序を勉強してみると人間の持っている免疫システムには驚くばかりです。唯、私が思うに一貫堂漢方医学の弁証論治から俯瞰して見るととても似通っている様に思えてならない。

一貫堂漢方医学では体内のガン細胞は保身の為に又遠隔に転移したいが為にある種の生理活性物質(仮にガン毒と言います)を放出しているであろうと仮定している。従ってそのガン毒である生理活性物質を漢方薬で体外に排出(解毒と言います)し乍ら、一方では免疫力を上げる漢方薬を投薬すると言う論治法である。

最近、医療界では薬物療法や放射線療法を実施したあとの血液データの改善に補作用(ほさよう)である漢方薬が頻繁に使われています。ガン毒である生理活性物質を解毒せずして補う漢方薬を与えればガン細胞そのものを補ってしまうから、一貫堂漢方医学ではこの投薬をとても危惧している。

38号 漢方の風 - 悪心(吐き気・胃部の気持ちの悪さ)

2016-08-04

大学に入学すると様々なコンパが待ち構えています。

クラス別のコンパから始まり、滋賀県人会、クラブに属するとクラブコンパ、寮のコンパ、早速仲良くなった数人の仲間コンパ等である。

私の父、兄(長兄)がお酒を嗜み、ご多分に漏れず私も好きで、大津祭り時や正月に良く飲んだものです。大学入学後のコンパでは、後先考えずに飲んだものです。

度が過ぎると決まって悪心が起こり、嘔吐することが度々であった。

社会人に為って、今日は飲み過ぎない様にしょうと心に誓って飲み会に出たものですが、飲み会が始まったら我を忘れて後先を考えずに飲酒してしまう、全く学習経験の出来ない私なのである。

卒後F社に入社した関係でプ○ン○ラ○の制吐作用を知るようになったにも関わらず、飲む前にプ○ン○ラ○を服むようになったのはF社を退社してから数年後の事である。

当時はプ○ン○ラ○の成分である塩酸メトクロプラミドを配合したOTC薬で『アペール』なる商品名の胃腸薬が上市されていて、それを服用するようになってからは悪心、嘔吐をしなくなった。(余程、度が過ぎると効かない事も経験した)

その後、漢方医学を学習してからは自分の体質を『半夏瀉心湯』証と弁証するようになり、お酒を飲む前には半夏瀉心湯と黄連解毒湯と茯苓末を併用する様にしている。

二日酔いを防いでくれて尿利が良くついて(利尿作用が有って)浮腫みを防いでくれます。

躁鬱病を思わせる30歳の女性は、下痢、悪心、不安感、頭痛、イライラ、臍部の動悸、舌炎等で悩んでおられました。

『甘草瀉心湯』と『抑肝散』を兼用して頂きました。排便が良くなり、気持ちの悪さも楽になり、頭痛も取れて良くなられました。

私の服用する半夏瀉心湯とこの甘草瀉心湯は心下部の痞えが最も大切な証である。又、これらの姉妹処方に黄連湯が有ります。

30歳代の第2子を妊娠された女性は悪心、乃ち悪阻(つわり)で何も食べられない状態で来店されました。

漢方医学書である新撰類聚方に太陽中風(たいようちゅうふう)、陽浮而陰弱(ようふにしていんじゃく)、陽浮者熱自発(ようふのものおのずからはっし)、陰弱者汗自出(いんじゃくのものあせおのずからいで)、嗇嗇悪寒(しょくしょくとしておかんし)、淅淅悪風(せきせきとしておふうし)、翕翕発熱(きゅうきゅうとしてほつねつし)、鼻鳴乾嘔者(びめいかんおうのもの)、本方主之(ほんぽうこれをつかさどる)…と桂枝湯篇に書かれています。

乃ち気の上衝が有って頭痛などがおこり、それに連れて胃気の上衝も起こり悪心、吐き気が起こる。と書かれております。そこでこの女性には『桂枝湯』と『半夏厚朴湯』を出産迄兼用して頂いた所、少しずつ食べられる様になり無事出産されました。

又、悪阻で何も食べられない人で胃が冷えて手足が冷たく心下部が硬く痞える場合は『乾姜人参半夏丸』が良いとあり、当薬局の薬篭に丸剤の乾姜人参半夏丸を備えているのですが、一度食道癌の術後の患者さんの酷い悪心に使った事があるだけで悪阻の方には使ったことが有りません。

私の次兄は数カ月前の昨年末に胃癌と診断されて胃の全摘術を受けた。

手術は無事終わり退院してからは悪心(ムカムカ)に悩まされ続けていた。

数日前に相談を受けた所、大建中湯、フォイパン、マーズレン、消化剤、下剤、それに前立腺癌薬カソデックスを服用していた。

漢方薬で何とかしてほしいと相談を受け、色々話を聞くと氷や冷たいものを摂取すると悪心が楽になるとの事であったので先ず大建中湯(熱を強く与える作用が有り、逆効果で有る)を止める様指導し、『半夏厚朴湯』と『六君子湯』を併用し『補中益気湯』を兼用するように投薬した所、一日服用しただけでとても楽になったと喜んでくれ、以来続けて服用している。

悪心は小柴胡湯始め上記の処方中に半夏(からすびしゃく)が入っています。

制吐作用が強い薬草である。大学の薬用植物学の授業で農閑期に是を採取し、換金して“へそくり”をしたとされ、別名“へそくり”と当時のお百姓さん達は言っていたと学んだ記憶が有ります。

性は温で燥湿作用が強く胃が冷えて湿邪が有り嘔吐する時に使用する事が基本である。

これに生姜と茯苓を加えたものが有名な『小半夏加茯苓湯』である。悪阻に良く処方されるが煎じ水に茯竜肝(竈の焼け土)を浸しておいた上澄み水で煎じた時に効果を強く発揮する。市販のものはそこの所は良く解らない。

刺激が強く、半夏の一片を口に含んだ時は早く吐き出さないと大変な事になります。

従って生姜を同時に煎じる事によって刺激が和らげられると学んだ。

なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄

37号 漢方の風 - 腸内フローラ(多系統委縮症、鬱、食養)

2015-09-28

 今から十数年前、大津市薬剤師会会報(市薬ニュース)に口内炎と腸管内の細菌と漢方薬の作用について投稿したことが有ります。

それは、腸管内のある種の善玉菌がビタミンB2を作り出して口内炎を防いで居り、その腸管内のある種の善玉菌の増殖に半夏瀉心湯が一役買っていると言った内容である。

 更に最近、記憶に新しい所では、腸管浸漏症(Reaky Gut Syndrome)

と漢方薬の関係を書いた所です。

それは腸管が冷えて柔軟性を失う事によって腸管にひび割れを起こし、そのひび割れ部分から、本来絨毛から吸収されない分子量の大きな(5000ダルトン)物質(主に蛋白質や菌類等)が腸管内に入り込み、その部分にある神経組織と抗原抗体反応を起こし、腸管神経組織と発生学的に同じ脳内の神経組織とも抗原抗体反応を惹き起こし多系統委縮症を惹き起こす。

それを防ぐには蛋白のペプチド結合を分解して分子量の小さい蛋白質にする必要がある。

ペプシンを活性化してペプチド結合を分解する為には胃酸(塩酸)が必要なのだが、様々な胃酸分泌を抑える医薬品を長期に亘って投薬する事のリスクが存在する。(ミネラルやビタミンは分子量の小さい蛋白と結合しなければ体内に吸収する事は出来ない事、又、細菌、真菌類等の有害菌も容易に浸漏して来る事等が言われている)

それに関係するその他の医薬品にはHRT療法のピル、NSAID、ステロイド剤等がある。夫々には勿論ベネフィットが有りますので一概には何とも言えませんが…。

漢方医学的にはその腸管浸漏症は脾虚が絡んでいるので精神的緊張を解きほぐしお腹を温める小建中湯が効果的である。

 最近、NHKで腸内フローラ(細菌藁)に関する放映が有りました。凡そ100種類、100兆個のバクテリアが腸内に住んでおり糞便中の半分近くをバクテリアが占めているらしい。

肥満、鬱症状、癌、慢性疲労症候群等は腸内の悪玉菌が関与していることが実証されている。

出来得る限り善玉菌を沢山保持する事が大切な事は自明の理であろう。

乃ち鬱症状を惹き起こす腸内細菌を無くす事が出来れば鬱症状が改善する。

漢方薬では四逆散やその変方群(柴芍六君子湯、逍遥散、柴胡桂枝湯、柴胡疎肝湯他)、防風通聖散、竜骨牡蛎、帰脾湯、香蘇散、茯苓の配合剤、駆?血剤等を使って対応すれば良いのであるが、夫々が腸管に直接的或は間接的に作用している事を考えれば漢方医学の素晴らしさが理解できるであろう。

西洋医学でも今後は腸管に対してのアプローチが益々重要視されて来るであろう。

 当店のお客様には以前から食養生の大切さをクドクドと話しておりますが、マクロビオテックも然りですが一番解りやすい言葉では、「マゴワヤサシイ」である。

 マ…豆類          (イソフラボン、マグネシウム、蛋白)

 ゴ…胡麻、クルミ、ナッツ、 (不飽和脂肪酸、ビタミンE)

 ワ…わかめ、海藻類     (ヨード、微量ミネラル、カルシゥム)

 ヤ…旬の野菜        (ビタミンC、βカロチン)

 サ…魚、貝類        (オメガ3系脂肪酸、蛋白、亜鉛)

 シ…椎茸、茸類       (繊維、多糖類)

 イ…芋類          (セルロース、炭水化物)

 更に主食が玄米であれば言う事は無い。(玄米には抗癌作用の有る物質が見つかっている)

 1968年、アメリカでは“食”に関して、マクガバンが委員長となり上院特別委員会が発足した。

様々な方面の議論を尽くし1977年漸くマクガバン報告が発表されました。

1960年代のアメリカでは心臓疾患やHIV、癌、貧困層の栄養失調等が問題となっていたのである。

その原因を解明し、解決策を講じるためにこの報告書を発表したのである。

そこで目をつけたのが日本食である。

肉、玉子、乳製品を控えて穀物食を中心にした食事を実践するとそれらの疾患が予防出来ると言うものである。

オーガニックの言葉を広めたニューヨーク在住の久司道夫さんが大いに係って居られる。

久司道夫さんはマクロビオテックの提唱者で現代のアメリカを救ったと言っても過言ではない。

久司道夫さんは桜沢如一さんの弟子であるがその桜沢如一さんは、大津に所縁のある方で札の辻を京都方面に上がった所に研究所を構えられた。

私が40数年前、山科の自然食品店で買った桜沢如一著「食養療法学」に住所が書かれています。

21世紀に入りアメリカの癌発生率は右肩下がりで減少している。その反対に右肩上がりで増えているのが我が国日本である。

 国は食の安全を担保する事が喫緊の課題であるが、現状では国の安全、経済、少子化、自然災害、福島の原発事故対策に取り組まなければならない。

そこで重要に成ってくるのがマスコミであろう。又、身近に医療現場に居る。

我々薬剤師の役割も非常に重要であろう。

なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄

36号 漢方の風 - アルツハイマー型認知症・アトピー性皮膚炎

2015-01-08

 数年前の事ですが、某大学の薬学部に在籍する学生さんとお話しをする機会が有りました。

その際、その学生さんはアトピー性皮膚炎を罹患して困っておられ、私が漢方医学に携わっている事を知って、質問をされた次第である。

その学生さんは皮膚が乾燥して痒みが強く皮膚科の医院に受診した。

保湿剤の軟膏と抗アレルギー剤と抑肝散が処方されたとの事であるが、将来の薬剤師の卵である学生さんは自分に抑肝散が処方された作用機序が解らず、ネットで調べて見たとの事である。

神経症、不眠症、小児夜啼き等が書かれておりアトピー性皮膚炎の際のイライラ、不眠、痒みにも効果があると書かれていたとの事である。

14日分を服用したが効果はサッパリで、自分には合わなかったのだろうと思っていたのだが、この機会に私にエビデンスを聞いて見たいと思った訳である。

その学生さんはサッパリした性格で言葉が流暢で会話が楽しく、自分の気持ちを素直に表現出来る、落ち着いた明るい性格の持ち主であった。

決して肝血(※)が虚していて、肝陽が抑えられないタイプではなかった。なので、その学生さんには効果が無くて当然で、抑肝散に効果が無かったのではなく、又、合わなかったのでも無く、合わせられなかったと考えるのが妥当でしょうと説明し、大切な事は望診や問診を行った上で、つまり“抑肝散の証”<肝血の虚に乗じて肝陽が上亢している>を弁証した上でアトピー性皮膚炎の患者さんに投薬する事が基本であると説明した所、複雑な気持ちを抱いていた。漢方薬は東洋医学的EBMに則った使い方が大切であるとその学生さんには教える事が出来た。

 今から20年近い前に、生前、親しくさせて頂きました故広瀬滋之先生(数多くの漢方の著書が有ります)の京都での漢方講演を拝聴しに行った時に、世の漢方施術者に対して、漢方薬が合わなかったのでは無く、合わせられなかった事を深く考えるべきと仰っておられました。

その言葉を聞いて私自身も身が引き締まる思いを覚えた。

アトピー性皮膚炎に対する抑肝散の作用は前号の“LEAKY GUT SYNDROME の所で書きましたが”脾“のペプシンの作用をフリーにしてより小さいペプチドに分解する事であろう。又、三焦の流れを良くする事も考えられる。

 その抑肝散は最近、アルツハイマー型認知症(AD)、レビー小体型認知症に高頻度に処方されます。所謂、周辺症状(怒り、イライラ、不安、妄想、徘徊他)の改善に使用されます。根治療法にはならないとされております。

ADの場合は(アミロイドカスケード仮説)はアミロイドβの沈着が重要視されていますが最近の研究で陳皮に含まれているノビレチンが非常に有効であるとされる研究論文が発表されております。

ノビレチンの抗認知作用は

  1. 記憶障害改善作用
  2. 脳コリン作動性神経変性抑制作用
  3. アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβの沈着抑制作用
  4. 神経成長因子

が動物実験で確認されている。(東北大学で抗認知症への動物実験を行っている。又、最近、それに基づいて東西の大学病院で臨床実験が開始されたと聞いております。)

 ノビレチンはシークヮーサー始め柑橘系の果皮に含まれているが、通常の温州みかんの果皮にも若干含まれている。

所が、最近、コタロー社がある地区で高濃度にノビレチンを含有しているミカンを見つけ、その果皮のエキス剤をノビレチンピ(第3類医薬品)と号して発売を始めた。乃ちノビレチンピは一種の温州みかんの果皮で健胃、鎮嘔、鎮咳、去痰の効能・効果で上市されております。

当薬局では現在3名の方に服用して頂いている所です。

 認知症の漢方治療は古くは桃核承気湯、当帰芍薬散が取り沙汰されておりましたが最近では「釣藤散」「?帰調血飲第一加減」「加味温胆湯」「通導散」「通導散合桂枝茯苓丸」「通導散合竜胆潟肝湯合補中益気湯」「加味帰脾湯」「通導散加桃仁牡丹皮合?帰調血飲第一加減」他から弁証を行って理法方薬通り行うと良いでしょう。中でも通導散には大いに期待が持てます。(通導散は強い薬方で使い方が難しく素人療法は禁物です。その際は漢方の専門家にご相談ください。)

 ※肝血:「肝は血を蔵す」とされる。腸管で吸収された栄養物質を含んだ血(けつ)は門脈系を通じ肝蔵に入り、分解、合成され貯蔵される。更に肝は自律神経系を主る為、血管運動に関与し身体各部の血流量を調節する。

更に女性には子宮に血液を供給し子宮の平滑筋や内膜を濡養(なんよう)して、或は自律神経を介してホルモン分泌を調節して月経を正常に行わせる。

陰陽互根であり、肝血は陰で、肝陽をコントロールしている。

なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄

35号 漢方の風 - 多系統委縮症とLeaky Gut syndrome

2014-08-21

アトピー性皮膚炎、パーキンソン病、ピル

 最近、多系統委縮症でお困りのお二人の方のお世話をさせていただいております。

漢方的弁証から見てお一人目の方は様々な症状や生活習慣をお聞きし、先ず初めに小建中湯を服用して頂きました。その後数年が経ち、現在は理法方薬に則り、臨機応変に処方を使い分けしております。

そして、つい最近お二人目の方が遠方から来局されました。

問診を丁寧に行い日常生活のお話をお伺いしました所(漢方で言う“証”を見極める事)、やはり小建中湯証である事が解りました。つまり“脾”が“虚”しているのである。

何となく脾の虚と多系統委縮症が関連しているのかも知れないと思いめぐらせておりました所、たまたま、多系統委縮症について述べておられるみきやまリハビリテーション病院の宮口修先生の文章を読ませて頂きました。

先生はやはり小建中湯が良いと仰っておられ、Leaky Gut Syndrome(腸管浸漏症候群)が脳を萎縮させているのではないかと文章を書かれておられます(実践もされておられます)。

 

 小建中湯と言えば桂枝加芍薬湯に膠飴(こうい:糯米粉を麦芽で糖化して作った飴)を溶かせて作るのですが、その桂枝加芍薬湯には芍薬の量が多く(6g)処方されています。

芍薬は「大小腸の水滞を尿で排泄する水剤」で「腸管に水滞が有りそれが故に腸管の筋肉が冷えて固くなり、攣急、拘攣を起こしているものを治す」又、肝気(※)を柔げて筋肉を柔和(柔肝作用)する働きがあるとされており、冷えて柔軟性を失した腸管がひび割れを起こし、浸漏している状態を改善するであろうことは容易に察しが付きます。

通常、腸管の絨毛組織は炭素原子を12ダルトンとした時、500ダルトン迄の分子を吸収するとされているが腸管に浸漏なるひび割れがあればもっと大きな分子迄(5000ダルトン)もが体内に入ってくるとある栄養学者は言っておられます。

例えば胃の低酸症によってペプシンが充分に働かず分子量の大きいペプチドが腸管から吸収されてしまうとアトピー性皮膚炎が発症するのではないかと嘗ての市薬ニュースの漢方塾で書いた事が有りますが、あながち間違っていなかったと今更ながら思っております(ルイボスティにその改善作用が有るのではないだろうかと私見を述べました)。

又、その栄養学者は、分子量の大きな物質が浸漏(腸管から入ってくると)して来ると、当然、抗体が作られ、腸管にある神経組織と発生学的に同じ脳組織にも脳関門をすり抜けて抗体が作られ抗原と反応して脳が委縮するのではないかと述べられておられます。

多系統委縮症のみならずパーキンソン病もひょっとしたら同じ腸管浸漏症が関係しているのかも知れない。と言うのも、私の義兄はパーキンソン病を患った(数年前に60歳代後半に他界しました)のですが、振り返って見ると、やはり脾虚で小建中湯証で有った事が解ります。

 

 又、その浸漏を惹き起こす物質の一つにピルが絡んでいるのではないかとその栄養学者は書いておられます。

そこで、ピルの副作用について朝日新聞デジタル(平成25年12月17日)に書かれていた内容を要約してみます。

生理痛や避妊目的で2012年度は推定100万人が服用していると書かれており、ピルの副作用は悪心、乳房痛、不正出血は良く見られるが、やはり血栓が出来やすい事が一番問題であると書かれている。

ピルを服まないグループでは10万人でおよそ5人に血栓が出来るとされているが服用グループでは10万人で3~5倍乃ち15~25人に血栓が発症する。ピルを服用する人は血栓が生じ得ると思って服用することが大切であると厚労省研究班の小林隆夫先生は述べられておられます。

頭痛、ふくらはぎ痛、胸部痛、視野の異常があればすぐに受診すべきであるとも述べられておられます。

上記の副作用が表出する迄もなく、密かに腸管に浸漏が隠れて進行している可能性も視野に入れなければならない。

 

 私たちは(特に日本人は)、肝気を整え(※)、腸管が冷えない様、食生活に気を配り、腸管に水滞を起こさない先人の知恵を顧慮しなければならない。

 

※肝気:肝の機能を言い、昇発・透泄作用を行う。乃ち肝気を整えるとは

 全身(身体、精神)をのびやかにする事。

(大津市薬会報 平成26年7月号)

なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄(昭)

34号 漢方の風 - 鼓脹・腹脹、腹満(放屁、お腹のはり) –

2014-01-19

 日を過ぎる事、数日前、ある人の紹介で60歳代の女性がご相談に来られました。相談机の前に座られた瞬間、可なり体力が落ちているのが見て取れた。

乃ち漢方医学的表現で言う大いなる虚証である。又、大いなる虚労(可成り疲れている)でもあるのが見て取れた。その女性は様々な主訴を持っておられる事(ここでは割愛します)がお薬手帳を見せて頂き良く解りました。同時にお薬手帳の必要性を改めて思い知りました。

当方への主訴は鼓脹と腹脹である。又便秘症でもあるとの事。このお腹の張りの苦しさは経験したものでないと解らないが、漢方の口訣を数々読んでいると、この腹脹、腹満が度々出てくるので私にはその辛さが良く解ります。

そのお薬手帳を見て目を疑いました。

ガ○モ○ン、ガ○コ○、ビ○フ○ル○ン、カ○グとあり最後に防風通聖散(各30日分)と有りました。恐らく便秘が有るので防風通聖散が処方されたのであろう事は察しが付きます。

 

 腹満、腹脹、便秘は漢方では実証(体力がある人)でも見られ、防風通聖散には調胃承気湯が入っており、実証の患者さんの腹満、腹張、便秘に使っても問題は有りませんが、この患者さんは明らかに虚していることが解り(虚証である事が解るの意)、服用する事により更に体力を失い、更なる腹満、腹張を惹き起こした事も充分察しがつきます。

悪いことに、生真面目なこの患者さんは30日分全て服み切ってしまった。

防風通聖散は体内の“毒邪”を二便(大小便の事)、皮膚(発汗、皮膚呼吸)、肺呼吸から食毒、風毒、水毒、梅毒、酒毒、鬱毒を排出して体調を整える処方である。

つまり体内のあり余った邪をあらゆる手段を用いて排出して、体調を整える作用である(その際、体内のエネルギーも体外に出してしまうので虚証の患者さんには絶対に使ってはならないのである)。その結果、実証の人の中性脂肪値、コレステロール値、血糖値、尿酸値等を下げてくれます。

防風通聖散の使い方は「漢方一貫堂医学:矢数 格著」に詳しく書かれていますので参考にされたい。

 

 ふと思い起こしてみて、当方の薬歴を調べてみた所、平成10年にお腹が張って辛く苦しい思いをされておられた73歳の男の方が相談に来られておられます。

やはり痩せていて、見るからに虚証で有ることが解ります。そこで厚朴、生姜、半夏、人参、甘草を購入いただき、同時に煎じて服用して頂いた所、あの辛く苦しいお腹の張りが、忽ち取れてとても喜ばれた経験が有ります。因みに大建中湯では全く効果が有りませんでした。

当時50歳代後半の女性はC型肝炎でやはり腹満で苦しんでおられましたが、便秘も有り茵陳蒿湯で治まりました。この方はその後しびれ、腰痛、ひざ痛等で困った時は当方へご相談にお見えになられています。

西洋医学と東洋医学の良いところを上手くミックスした医療が待ち望まれている今日この頃ではないでしょうか。

 

 それにしても、先出の60歳代の患者さんの処方を調剤した薬剤師さんにも上手く対応して欲しかった事は言うまでもない事です。

なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄(昭)

33号 漢方の風 ー人体は自然界・宇宙と同じ (めまい、のぼせ、頭痛、肩こりの発症の気機)

2013-07-21

富士山はいつ噴火してもおかしくないとある地質学者がテレビ番組で仰っておられました。

若し噴火すれば東京都までもが影響を受けて(火山灰の悪影響で都市機能がマヒし、政治、経済が大混乱に陥るとのこと)、数兆円の被害が発生するそうです。

私が住んでいる滋賀県は東南海地震が近い将来起こると多くの地震学者が言っておられ、津波の被害は無いものの震度5ないし6の揺れが来るそうです。

原稿を書いている(5月14日)この数十日間の間に淡路島初め3回のマグニチュード5以上の地震が日本列島を襲っている。これらの3回の地震に関して、地震予知の観点から興味深い事をテレビで言っておられました。

2年前の東北の大地震の際も一日前は、勿論の事、数時間前、更に数十分前にはマイナスイオン電子が東北の上空にどんどん集まっており、異常なマイナスイオンが固まりとなって表示されておりました。

東北沖の震源地では、北アメリカプレートの下に太平洋プレートが潜り込みプレートに巨大な圧力がかかると電位差を生じ(岩石に圧力を加えると電位差を生じる実験データが有る)、エネルギー乃ち電気エネルギーが発生し、その結果そのプレートの上部の海底の地表部(日本海溝付近)にプラスイオンが集まる。その結果、プラスイオンに引き寄せられる様にその上空にマイナスイオンが集まって来て、マイナスイオンの固まりが出来る。そこへ宇宙から(主に太陽からか?)やって来た電磁波がマイナスイオンにぶつかる。そのぶつかったエネルギーを観察するとマイナスイオンの固まりを映像として捉える事が出来る。番組では東北のあの巨大地震の際のその映像を時系列でテレビに映し出していた。

学者はプレートのせめぎあいの結果、震源地の上空にマイナスイオンが集まり、それに電磁波がぶつかり生じる現象の事を“擾乱”(じょうらん)と言っておられました。

漢方用語に“上擾”(じょうじょう、上部を擾乱の意)と言う言葉が有りますが、「地表と上空」は人体における「下部(体部)と頭部」と同じで、地震の前兆は、人体の下部のトラブルが頭部を撹乱しその結果発生する頭痛、肩こり、眩暈、不眠、イライラ、ニキビ等の一連の症状と同じである事が分かります。

巨大プレートの鬩ぎあいに対して人類はどうすることも出来ませんが、人体の下部(体部)のトラブルは漢方薬で解消することが出来ます。

人体の上部の症状とは、乃ち、上出の頭痛、眩暈、イライラ、不眠等であり、下部の症状とは悪心、口苦、口の粘り、胃重、舌苔が黄膩、胸脇部がはって苦しい、食欲不振等である。これら痰濁上擾、痰熱上擾には、半夏白朮天麻湯、温胆湯が効果を発揮します。

半夏白朮天麻湯は、元々胃腸虚弱で胃内停水があり、その上、風邪に感染したり、重い精神負担がかかったりすることに因って胃内の水毒が上逆し、それが元で頭部を擾乱し、頭痛、眩暈を惹き起こす…その様な状態のときに使用します。その眩暈はぐるぐる回転性だったり、天地がひっくり返る様だったり、地に足がつかない浮遊感だったりと様々です。

 

話は変わりますが、昨今の電気料金の高騰は生活に工業に影響を与えています。

原子力発電に期待出来ない昨今、火力発電に重きを置いている現状では為替レート、天然ガス、重油等で電気料金が左右される。地震帯に日本列島が位置しており地震からは逃れようがありませんがその分地熱はたっぷり有ります。

八丈島が地熱発電で島内の電気を賄っている様に地熱発電の効率を高め、又、風力発電、更には最近脚光を浴びている炭酸ガス及びPM2.5の発生を最大限抑えた安価な石炭による火力発電等を行えば技術力で日本は更に安価なエネルギーを手にすることが出来ます。

その為の最も重要な施策は発送電分離の法整備を行なうことであろう。

(大津市薬会報 2013年7月号掲載)

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