滋賀県の漢方相談薬局

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8月, 2005年

5号 衆方の祖(西洋医療と漢方の違い・人間へのやさしさ)

2005-08-12

 漢方薬局を標榜していると様々な相談がある。中でもメディアが放った○○○に効果がある薬草がありますか、と言った内容のものが一番多い。例えば、麻黄が欲しいというものもあった。何の目的に服用するのか尋ねて見ると、痩身の為との事である。

 それは、ある週刊誌に書いてあったというもので新陳代謝がよくなり、結果、やせるというものである。麻黄が配剤された代表的処方は、麻黄湯や葛根湯であるが、どちらも実証若しくは中間証に使用するものである。その根拠は、主薬である麻黄に拠る所がある。麻黄を、一味で寒の邪を駆逐出来るものではないがエフェドリンが係っている事は疑いの余地はない。近年、アンフェタミン等の原料としての可能性から、輸出入が問題化している時代背景の時節柄、痩身の為に、単味で煎じて服用すれば良いとは正に言語道断である。

 そもそも、漢方という言葉は、中国、朝鮮半島にはなく、日本独自のもので、漢の国(中国)の処方が語源とも言われている。処方とは、様々な薬草の組み合わせであり、単味で使う事は例外(甘草湯等)を除いて、殆どない。びわこ漢方サークルで、桂枝等の説明をしたあと質問がありました。桂枝湯の使い方の説明は訳ったが、結局の所、所詮、経験学であり、根拠のないものではないか?つまり、科学的ではないのではと言った主旨のものであった。

 桂枝で血管を拡張し、汗を出させ、気化熱を奪わせて解熱する。つまりNSAIDで発汗解熱すると似たもの考えてよい(体温調節中枢の閾値の低下の結果発汗すると似たもの)。果して、発汗しっぱなしで良いのか?・・・と古代の中国人は考えたのである。そこには、人間の生理機能を深く考えた、妙味があるのである。彼らは、汗をとても大切に考えたのである。人間には、陰なる物質(ここでは血液、リンパ液、組織液、細胞間液等)があって、汗として発散したあとは、当然、陰なる物質は、絶対数が不足するであろう事を予感し、その結果、芍薬、大棗、生姜、甘草が加味されたのである(詳細は省きますが、これらの薬草が陰なる物質の不足を補おうとする)。

 漢方は、人にやさしくないと駄目と嘗つての市薬会報で申し述べましたが、NSAIDの様に、発汗しっ放しで良いとは大きな違いがある。芍薬の意義、大棗、生姜、甘草の意義が夫々、存在するのである。汗を発して、それでいて、汗を止める妙味(解肌作用)があるのである。つまり、発汗後のケアー迄も考えているのである。その桂枝湯を応用、変化させて、様々な疾病が治療出来る。その為、日本の古医方家達は、桂枝湯を衆方の祖と言ったのである。

 T社の漢方調剤研究3月号に記載してあるコラムをご紹介したく思います。物の数え方というタイトルがついている。羊は一匹二匹・・・、山羊は一頭二頭、蝶々は、ありふれた蝶は一匹二匹、珍重される蝶は一頭二頭と数えるそうである。ある時は大きさを規準に、又ある時は、価値感によって数え方が変わってくる。要するに尺度次第で変わるという事である。東洋医学でいう、陰陽虚実、寒熱といった尺度も絶対的なものではなく、人夫れ夫れなのである。つまり個々人によって尺度は変わるのである。体温計で計って、39度だから、抗生物質なり、解熱鎮痛剤が投与される現代医学とは、尺度が違うのである。

 ある人は、壮健な体質だから、強力な発汗剤(例えば大青竜湯)、虚弱体質なら、桂枝二越婢一湯を使う。又同じ人でも、その時の状態によっても、処方が変り得るのである。発熱しているからと言って、水枕で頭なり体幹を冷やすと言った一元的ではないという事である。

 ご近所の○○さんが、39度の熱で寒がっているお孫さんを医院へ連れていった時の事である。39度の発熱だから、素肌にして熱を発散させる様に若いドクターに指示をうけたそうです。○○さんは、その若いドクターに、言い放った。この寒空に、発熱していない(寒くない)大人である貴方だって、寒くって素肌になれないだろう・・・と。

 西洋医学にも、出来るだけ「個」の医療を取り入れなければならないと思いますが、ガイドラインとの整合性もあり、難しい局面に立っている場面もあり得る事は、想像に難くない。

(大津市薬会報 2005年8月号掲載)

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