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1号 不妊症

2004-08-06

 5月25日の夜、山口先生より、原稿依頼の電話があり、一ツ返事で諒承し、漢方の事は勿論の事、免疫の事、医原病の事等について起草しましょうとお伝えしました。  その翌日、慌ただしく、調剤をしていた所、電話の向うに喜びに満ちた声がありました。何と44才にして、無事、女児を出産したとの御礼の電話であった。後日、母親を伴って、正式に、御礼に来られ、漢方薬の服用は勿論の事、私の教え通りに生活全般を見直した賜物と言っておられました。そこで、今回は、不妊治療について書いて見ました。

 漢方による不妊治療の第一人者と言われている寺師睦宗先生の不妊治療最高年令は、44才と言っておられた様に記憶しておりますが、私の手懸けた不妊治療で、44才は、これで二人目と言う事になった。30才台の方と比べ、40才だからと言っても、特に変わった事もなく、身体の歪みを是正するだけの事である。それにも増して気になるのが、男性不妊であろう。嘗って、副会長をしておりました時に、三師会協議会で、少子化の問題が俎上に登った事がありました。当時の医師会長をしておられた福井先生に、不妊の問題もあるのではと申し上げました所、数字的には、殆んど影響しないと仰っておられましたが、私は潜在的には、数多くの方が、おられる様に思います。

 前号の市薬会報で少し触れましたが、免疫の自律神経支配説(安保徹先生)の論理からすると、男女共々、大変な時代になったと思います。生理周期の異常、劇しい生理痛、過多月経、過少月経と様々な悩みを抱えておられる女性の多くが、不妊に悩んでおられます。産婦人科の門をくぐった時、そこには、ステロイド剤が待っており、生理痛には、NSAIDが待っているのである。様々な、子宮の叫びに耳を傾ける事なく、血液やその他のデータを根拠にしてである。これらの薬剤は、身体全体の代謝を抑制してしまう(陰的作用)事になり、延いては血流を更に悪くする結果を招く事になり、子宮は、益々悲惨な叫びを発するのである。

 漢方で、不妊治療をしている時、決まって感じる事は、女性が、みるみる美しくなって来る事であるが、その美しさが、見てとれて来たら、最早、治癒出来たも同然である。5月の連休に旅した時、機内でお会いした姫路のドクターは、桂枝茯苓丸加ヨクイニンは、女性を、みるみる美しくすると仰っておられました。見た目の美しさ以上に、子宮や卵巣が、キレイになっているのは、言う迄もない事です。

 上古天真論に、七紀の事が書かれておりますが、女子は、7才、14才、21才、28才、・・・と7年毎に節目があり、28才が最も強壮で、髪も豊かであり云々、・・・。49才にして、血脈に血が少くなり、月経が止まり、子供が出来なくなると記されており、44才と言うのは、ひょっとしたら限界なのかも知れない。

 漢方薬としては、当芍散、加味逍遙散、四物湯、温経湯、桂苓丸、呉姜湯、等の婦人薬は、当然として、柴胡剤、人参湯、六君子湯、牛車腎気丸、防己黄耆湯、香蘇散等を駆使すれば良いと思います。行間がお許し頂ければ、あと少し男性不妊について書いてみたいと思います。  精子に問題があるのは、免疫に問題があるとも言われており、漢方的には、胃腸が悪いと、免疫が異常を起こし、不妊になる場合もある事は、容易に察しがつく。男性不妊は、脾胃を念頭に入れなければならない。Kさんなる相談者は、ある病院で、八味地黄丸を投与されており、それは、さながら鸚鵡返しの処方と言える。服後、食欲がなくなり、胃が痞えるとの訴えがあり、奥さんからすれば、それでも、頑張って服用して欲しいと言うのは、解らない訳でもない。不妊と胃腸の虚弱の関係を説明した所、服用を強いた自分を反省しておられました。漢方はその人にやさしくないと駄目とも言えましょう。因に、Kさんには、黄耆健中湯を服用して頂きました。

(大津市薬会報 2004年8月号掲載)

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