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2号 薬膳(甘さを追ってはダメ・五つの味を均等にとる)

2004-11-06

 2年以上前の事ですが、NHKの番組で、中国を代表する一料理「魯菜(ろさい)」(山東料理)を継承している佐藤孟江さんの番組を見た。それは正に薬膳であり、とってつけた今風の薬膳とは全く違っている。彼女は、多分、70才代の老婦人で、ご主人と二人で、四谷で魯菜料理の店を営んでおられる。そもそも佐藤さんは、山東省で10代の時、皿洗い、雑用から料理の世界に入ったとの事 。厳しい修行だった事は容易に察しがつく。砂糖も一切使わない、大棗、桂皮、陳皮、拘杞子、生姜、甘草、木天蓼(もくてんりょう)等の薬草から旨味を引き出すらしい。彼女が何故、正統派とも言うべき真の魯菜料理を継承できたかは、やはり努力の人で、老板(料理長)が見込んだからであろう。

 寛いだ気分で見ていたので、それ以上の薬草は、目に留まらなかったが、前出の薬草の効能を考えてみた時、それは正に、宇宙的で、全人的で、人を慮んばかった「持て成し」の精神が充分に伺える。胃腸の弱い人、腰の悪い人、心臓が弱く浮腫(むく)み易い人、風邪を引き易い人等々である。番組では、現代の中国の新魯菜料理の紹介もしていたが、甘みを出す為に塩の4倍の白砂糖を使いなさいと、その料理長は誇らしげに言っていた。

 過量の甘みは脾胃(胃腸の働き)を損ない、胃下垂、下痢、出血、免疫能の異常、等を引き起こす。特にアトピー性皮膚炎、癌、リウマチを治す為には、腸管を整える事が先決であろう。腸の消化管組織にあるM細胞から取り込まれたある種の物質が、特殊化されたリンパ節を刺激し、マクロファージやNK細胞等の免疫細胞を活性化します。成熟した樹状細胞にも働きかけ、免疫調節や能力を高めると言われている。従って、これは単なる消化管だけの問題ではなく、全身の免疫力の問題ということを物語っている。  話は若干それたが、要は免疫力を向上させる為には、胃腸(脾胃)を整えることが大切であり、その為には、甘みを過量に摂らないことも免疫力を向上させる一つの方策であるという事ができる。そうすると、新魯菜は、もはや薬膳ではないという事ができる。

 その年の五月、連休を利用して、観光を兼ねて北京へ行った。他の目的は、中国で漢方書を手に入れる事でもあり、お陰で帰りの荷物の重量が増し、ほとほと困った。漢方の専門書のコーナーでは、その本の豊富さと廉価さ、更に英訳本が数多く揃っていたのが驚きであった。日本人の著した中国語訳も揃っている。 何冊かピックアップして選んでいた所、現地のガ イドさんから片言の日本語で「お父さん(私の事)、これ解るんですか?」と聞かれた。「見ていると何となく意味が訳るんです」と答えると、「私、解らない」と言うんです。中国人が中国語の本が読めないなんて事があるんだ・・・。これもまた驚きであった。(文化大革命の影響もあるとの事でした。)

 話は変わりますが、ガイドさんの説明で、皇帝の居た所は、黄色の屋根瓦、黄色の垂れ幕等、黄色を使ったという事であった。黄色は地上の王を意味し、一番重要な所 (物)を意味している。漢方の弁証論 治の一方法に五行論があるが、青は春で肝臓を、赤は夏で心臓を、白は秋で肺を、黒は冬で腎臓を意味し、黄色は土用で脾胃を意味している。従って、脾胃(黄色)は人体の中で一番重要な所という事になる。  これは、いみじくも免疫の話と一致するのである。金の時代に李杲(東垣)が著した「脾胃論」がある。それは、土は万物の母であり、脾胃を確かなものにする事が最重要課題で、そこから健康が生まれるという考えであり、医王湯なる処方を考え出した。医王湯とは、現代では補中益気湯と名付けられている。「甘」「黄」「脾胃」「王(皇帝)」「土用」「湿」「涎」「棗」等は、同じ範疇に入るのである。

 序(ついで)に、胃に関係する話題として、ピロリ菌について書いてみたい。漢方処方の中に柴胡桂枝湯加茴香牡蛎というのがある。牡蛎とはカキ殻のことであるが、北海道のサロマ湖に注ぐトカロチ川流域には六ヶ所の牧場があり、その糞尿処理にホタテ貝を、また瀬戸内海に面する養豚業者から出る糞尿処理にアコヤ貝を利用している実験がある。何れも貝殻を敷き詰めた所に汚物と水を共に流すというものであるが、貝を使うと使わないでは、BOD(生物学 的酸素要求量)は3450mgから17mgに、およそ200分の1になったとの事である。

 自然の培地と人間の培地(胃袋)とでは環境が違うかも知れないが、過去に当店で胃症状をこの柴桂湯加茴香牡蛎で治した方がおられるが、ひょっとしたら、ピロリ菌除去が出来ていたのかも知れない。

(大津市薬会報 2004年11月号掲載)

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