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20号 漢方の風 ー「知覚過敏」「利尿作用」「緑内障」

2009-04-25

 正月からの暴飲暴食が祟り、又、仕事の忙しさと建物のメンテナンスのストレスが加わり、二月に入ってから、熱い飲食をすると“歯がしみる“のを感じていたのですが、今朝はいよいよ、しみると言うより、歯が浮いて、可なりの痛みを感じる様になってしまった。所謂、知覚過敏に、なったのであろう。朝から、仕事の合間を見て、煎じ薬の「柴胡清肝散」(寿世保元)を作り、急いで煎じて服用した。原稿を書き始めた閉店前のこの時間には、痛みは和らぎ、多少の違和感はあるものの、このまま治まりそうな予感がします。驚いたのは、知覚過敏の治癒傾向よりも、排尿量の多さと排尿時の心地良い排尿感覚である。その後も、その排尿は続いている。可なりの余分な、体内の水が出たのは、充分察しがつく。さすれば、心臓の拍出に労するエネルギーの負担が軽減されているのも間違いないであろう。漢方で言う、心は神(精神活動)也を思うと、今晩の熟睡は、保証されているであろう。喜ばしい事である。

 臨床で、患者さんの浮腫みを見て、或いは浮腫みの訴えを聞いて、柴苓湯なり猪苓湯 (所謂、利尿作用が有るとされている処方)で余分の水を出そうとしても、そう思う様には効いてくれません。そこが、漢方薬の難しい所なのですが。逆に、歯の知覚過敏を治そうとした所、利尿作用が働いて、浮腫みが取れた事を考えると、これぞ、まさしくside effect つまり、狙いの主作用(知覚過敏)に付随した副作用(正しくは傍作用というべきかも知れませんが…)である。西洋医学で言う副作用(身体にとって悦ばしく無い作用、端的に言えば、害作用)とは異質な現象である。この様な、思いも寄らない「副作用」現象は、漢方を長く携わっていると、よく経験します。例えば、悪阻(つわり)を解消しようと、半夏瀉心湯を投薬したら、浮腫みが取れたりする事があります。その際、精神安定作用(悦ばしい副作用)が有るのは当然の事です…。他に、その半夏瀉心湯で経験する「副作用」現象では、胃の痞え、下痢を治そうとした所、精力が増強された事も経験しています。患者さんにとっては嬉しい副作用現象である。

 高血圧の治療を考えた時、ものの本には、大柴胡湯、柴胡加龍骨牡蠣湯、釣藤散、防風通聖散、黄連解毒湯、通導散、七物降下湯、八味丸、苓桂朮甘湯、加味逍遙散等が記載されています。どの処方にも、「証」があり、その患者さんが何れかの「証」、つまり何れかの体質かを見極める必要性に迫られる。所が、どう考えても、上記の処方に該当しない場合が有ります。患者さんの、あらゆる情報を考えて出た結果が、上記以外の処方であっても、一向に構わないのである。その患者さんが持っている体質、つまり“証”を把握すれば、その“証”にあった“処方”を思い切って投薬すれば良いのである。日本の漢方では、この事を「方証相対」と言っております。慣れてくると、望診だけで(見ただけで)その患者さんの“証”が解る事が多い。

 話は変わりますが、最近、緑内障の患者さんのお手伝いをさせて頂く事が多い。現代医学的には、緑内障の原因がよく解っていないのは周知の事ですが、漢方的には、浅田宗伯の勿誤薬室「方函」「口訣」に詳しく書かれています。  『腎気明目湯』   労神、腎虚、血少、眼痛、昏暗を治す。   当帰 川キュウ 熟地黄 生地黄 芍薬 桔梗 人参   梔子 黄連 白シ 菊花 蔓荊子 甘草   右十四味。  此の方ハ内障眼ノ主方トス。内障二気虚、血虚ノ分アリ。血虚ノ者ハ此ノ方トス。気虚ノ者ヲ益気聡明湯トス。…と有ります。  患者さんの腎、気、血を全体視して、良く弁証すれば、体質改善も可能と思っております。  数年前に人の紹介で来られた京都の患者さんでは、(その人の弟さんが、眼科医で、近い将来の失明を予告されていた)柴胡桂枝湯と釣藤散で失明を防げた症例も経験しております。何れも、アントラニール酸の網膜への働きを考えると天然タウリンの摂取も(合成タウリンは効果が無い)考慮すると良いと私は考えております。眼圧のコントロールに照準を合わせた現代医学とは、本質的に違います。  因みに、医王湯加防風、蔓荊子、白豆ク。十全大補湯加沈香、白豆ク、附子も撰用しなければならない…と書かれている。

 (大津市薬会報 2009年 4月号掲載)

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