滋賀県の漢方相談薬局

〒520-2153 大津市一里山2-14-13 一里山ユーベルハイム2F

10月, 2005年

6号 こむら返り

2005-10-02

 以前入会しておりました、日本漢方協会の季刊誌に、この様な記事がありました。証をきちんととって、漢方薬を服用して頂き、症状が取れた時、その寛解さをきちんと認識して、喜びの表現をされる方と、まちがいなく証をとり、思い描いた通り治療出来たと、こちらが思っていても、漢方薬で治ったとの認識がなく(認識があっても表現しない方もおられるが)、ただ、自然に、勝手に治ったと認識される方と二通りのタイプがある。概ね、前者のタイプは、実証の?血者に多く、後者は、虚証者に多い・・・と。私も全く同感である。治療出来た満足感は、どちらもあるものの、その比はやはり前者の方が強い。その点において、私はまだまだ漢方の世界ではひよこなのかも知れない。  16年前、漢方薬局の看板を揚げた時、ある先生からは、漢方相談を受けた時、その処方が合わなかった時の為に次の処方も考えておきなさい。出来ればその次の処方も考えておきなさいと教えられた事があります。AにしようかBにしようか、それともCにしようかとほとほと迷う事があります。その時点では、Aが良いと思い投薬したものの、患者さんからは、漢方薬は効かない、或いは自分に合わないと言ってそれで終わってしまう事がよくあります。その時点で、元に戻ってよくよく考えた時、Bなる処方の方が間違いなく効いたかも知れないと思い返す事がよくありますが(勿論、問診での一言が足りなかったばっかりにと思うことが多い)、それは最早あとの祭りである。結局その患者さんは漢方を諦め、現代医療に戻ってしまうのである。その時の私の胸中は内心忸怩たるものがある。肌が合う合わない問題なのかそれとも私の不徳の致す所なのかも知れない。出来るだけ1stチョイスでの治癒確率を高めねばと常々思っている。漢方の世界では、その漢方家の持っているレベルの高さに比例して、難易度の高い患者さんがやって来るものである。10年前の治癒確率と現在の治癒確率を比較した時、10年前の方が高かった様に思うのは、その様な理由からであろう。それ故、漢方は、一生涯(半生涯が正しいかも知れない)を費やす事になるのである。  話は変りますが、この8月よりH17年度びわこ漢方サークルを月1回のペースで始めました。傷寒論を最初から最後迄を目ざしております。宜しければ、途中からでもご参加下さい。その傷寒論の太陽病扁に出ている、芍薬甘草湯について書いてみたいと思います。産婦人科の漢方治療なる本を読んで見ると高プロラクチン症に芍薬甘草湯が効果があると書かれている。陰陽虚実、方証相対も何のその、芍薬甘草湯が良いというものである。渡辺武先生の平成薬証論には、芍薬の寒熱度はマイナス1で、「主腹痛」「除血痺」「利小便」とあり弁証の大切さが伺える。効けばそれで良いと言われれば、言葉を返す気はないが、少々荒っぽい気がしてならい。亦、院外処方箋を応需していると、年に1から2回芍薬甘草湯の処方箋が迷い込んでくる事があると思います。大略、腓腹筋の攣縮を目標に処方されている場合が多いと思いますが、その芍薬甘草湯は「傷寒論・弁太陽病脈証并治上第五」にあります。「傷寒、脈浮、自汗出でて、小便数、心煩し、微しく悪寒し、脚攣急す。反って桂枝を与え、其の表を攻めんと欲するは、此れ誤りなり。之を得れば便ち厥し、咽中乾き、煩躁して吐逆する者には、甘草乾姜湯を作りて之を与え、以って其の陽を復す。若し厥愈えて足温なる者は、更に芍薬甘草湯を作りて之を与えて、其の脚即ち伸ぶ。」とあります。要略すると陰陽倶に不足、及ち陽気不足(冷え)があるから小便数であり、陰気不足があるから脚攣急するのであり、陰陽不足する時は、汗を発してはいけない。若し桂枝湯で発汗すると陽気を損ずる事になり、咽が乾いて吐逆したりする。その様な際は、甘草乾姜湯で損った陽気を回復すると良い。さすればそれだけで、足攣急は治る事が多い。それでも治らない時は、芍薬甘草湯を与えると良いと言っており、軽々に芍薬甘草湯を使ってはいけない事を言っているのである。  10年程前になりますが、市薬の新年会だったと思いますが、元大津保健所所長の辻先生に講演をお願いした事があります。先生は、こむら返りを軽く見てはいけない、往々にして痴呆症(今では認知症)の前ぶれになる事があると話され、カルシウム不足がその背景にあると説明されました。※  たかがこむら返り也、芍薬甘草湯を与えれば、それで良いとは傷寒論では言っていない。総合的に判断して、弁証論治すれば、乃ち認知症の予防にもなるし、ADLを高めることにもなるのである。されどこむら返りである。 ※(カルシウム剤の中で一番吸収が良いのは炭酸カルシウムであるとの説明もありました。) (大津市薬会報 2005年10月号掲載)

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