滋賀県の漢方相談薬局

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10月, 2006年

10号 漢方の風 ーうつ病ー

2006-10-06

 バイオリニストの千住真理子さんがボランティア活動を実践されている事は、ある施設に訪問演奏された事を聞いていた時から知っていた。その施設の職員さんは、単にバイオリンの好きな女性が腕だめしに奏でに来ていると思っていたらしく、私が彼女の略歴を教えてあげた所、驚いた表情を見せていた。小学生の時に、天才と言わしめた彼女は、父親の期待を一身に受け、一日のほとんどの時間をバイオリンの練習に励んでいた。ところが、絶頂期を迎えていた20才で挫折を覚え、数年間バイオリンには一切触れなかった経験をしておられる。正に鬱的症状も出ていたらしく、最早、家族もバイオリニストとしての彼女の将来を諦めていたと述懐しておられた。その彼女を立ち直らせたキッカケは、ホスピス病棟での、ボランティア演奏だったとの事で、死を目前に迎えた患者さんに、同じく絶望の淵にいた自分が満足に演奏できなかった事が、ボランティア活動の・・・ひいては立ち直るキッカケになったとTVで話しておられた。

 私は、何故彼女がストラリバリのデュランティを手に入れたかは、知らなかったが、フランスの貴族であるデュランティ家から、最終的に、彼女が選ばれたとの事であった。幼少の頃、一日14時間も練習に励んだ事も努力家である彼女をして選ばしめた一因であったと私なりに勝手に想像している。

 その鬱的症状は、逍遥散や柴桂湯、柴胡疎肝湯、大柴胡湯、等の四逆散の変方とされる処方群や、香蘇散、分心気飲、半夏厚朴湯、柴胡加龍牡湯、防風通聖散等を選用すれば、良く効いてくれます。

 モーツアルトがもてはやされている昨今、彼女はバッハが好きで、好んでバッハを演奏するそうです。彼女の一番好きな言葉は、バイオリン、ギター、ウクレレ等の共鳴板の中の支えとして入っている“魂柱”だそうです。

 上記の防風通聖散が、depressionに効果がある事はあまり知られていないのではないでしょうか。構成生薬からみてみると表と裏に倶に実の状況で、5月病や、月曜病等、又、ストレス性の喘息にもよく応じてくれます。TVでのCMで脂肪太りに“防風通聖散”とは、全く恐れ入っております。私の近所のDBの患者さんで防風通聖散がぴったり効きそうな方は、脂肪太りではなく、筋肉質の体型をしておられます。関東の患者さんで統合失調症と喘息とアトピー性皮膚炎を併発しておられる患者さんには、防風通聖散と通導散を合方して頂き良い結果を得ています。  ところで話は変りますが、医療保険の世界では今やジェネリック医薬品が医療費の削減には欠かせない存在となっておりますが、あるメーカーの5月号の情報誌に貝原益軒の養生訓の一節が記載されております。『東垣が曰く、細末の薬は、経絡にめぐらず、只、胃中臓腑の癪を去る。下焦の病には大丸を用ゆ。中焦の病は、之に次ぐ。上焦を治するには極めて小丸にす。丸薬、上焦の病には、細やかにしてやはらかに早く化しやすきがよし。中焦の薬は小丸にして堅かるべし。下焦の薬は大丸にして堅きがよし』

 医療受給者の納得を得る為と、医療経済の視点とから、先人の知恵の剤型の大切さを、我々薬剤師は、注意を払う必要があろう。私自身、多くの患者さんを見るにつけ、麻子仁丸料エキス顆粒と本来の麻子仁丸の丸剤との効き目の違いを実感しているところである。(DB:糖尿病)

(大津市薬会報 2006年10月号掲載)

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