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漢方塾…バルトリン腺炎・嚢胞・膿瘍の漢方治療
なかがわ漢方堂薬局 中川義雄
バルトリン腺は膣腔の後方の左右に位置し、性交時に潤滑液として役割を果たす粘液を分泌する排泄管である。バルトリン管が何らかの理由で閉塞するとバルトリン腺は分泌液で増大して嚢胞を生じるのである。
現代医学的には何故、閉塞するかは解明されていない。バルトリン腺嚢胞は20歳代で多く発生し加齢と共に発症率は下がる。約2%の女性に発症するとされている。
大部分のバルトリン腺嚢胞は無症状であるが大きくなった嚢胞は性交時や歩行、座位時に痛みを発することになる。
そのバルトリン腺が感染するとバルトリン腺炎を発症する。常在するブドウ球菌や連鎖球菌、大腸菌、嫌気性菌などが原因菌であるが性感染症を引き起こすクラミジアや淋菌も原因となる事もある。
感染してバルトリン腺開口部周辺に炎症が波及すると排泄管やバルトリン腺は塞がった状態になり分泌物は溜まった状態になる。その結果、バルトリン腺嚢胞に感染が引き起こされ、最終的に膿が溜まりバルトリン腺膿瘍が発症するのである。
漢方医学の本質は“未病を治す”事にある。現代医学的には原因は不解明であるが、個々の患者さんの体質を見て、発症しやすい体質を見極める事が出来るのである。
そこを弁証すると自ずと全く苦痛を伴うことなく漢方薬で治療することが出来るのである。
現代医学的バルトリン腺治療の多くは溜まった分泌液や膿を穿刺術で取り除く方法が一般的である。
多くは再発、再再発…を繰り返し、そのたびの穿刺術は心理的苦痛と肉体的苦痛を強いられる。
最終的にはバルトリン腺開口部を開放する為にバルーンカテーテルを挿入留置して開口部の線維化を図り永久的な開口部を作る方法や嚢胞の端を反転させ外部に縫合して開口部を作る方法が施術される。
薬物療法としては耐性黄色ブドウ状球菌(MRSA)を対象としてトリメトプリム(合成抗菌薬)とスルファメトキサゾール(サルファ剤)の合剤やアモキシシリン、クラブラン、クリンダマイシンで治療するが再発を繰り返す事がある。
一方、漢方医学的治療はバルトリン腺が肝経に位置している事から①肝経湿熱を排除する漢方薬を主処方として更にその患者さんの状況(②免疫力が落ちている、③膿を排出する漢方薬を使う必要性がある、④抗菌作用のある処方の選択等)を見て治療を行う。①、②、③、④の処方をうまく組み合わせて治療すれば精神的、肉体的苦痛を伴うことなく上手く治療できるのである。