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漢方塾・・・月経痛(月経困難症を含む)・下肢静脈瘤・冷え性 ・不妊・更年期障害・etc
なかがわ漢方堂薬局 中川義雄
掲題の月経痛の漢方治療はいくつかの処方が有りますがその中のどの処方を使うかはその方の体全体の体質を問診や舌診を通じて把握し、更にその方の来し方と現在の経緯と現況をも勘案して処方を決めるのである。
場合によってはお住いの環境やご両親の体質(病歴等)をも処方選びの参考にすることが有ります。
30年ほど前は冷え症を中心に処方を考えたものですが時代の流れと共に最近は冷えは勿論の事ですがやはりストレスの有無とその強さを念頭にいれて問診しなければなりません。
ストレスの強弱は第三者的に判断する必要が有ります。
漢方医学では気(き)・血(けつ)・水(すい)を弁証するのですが、気は体内を縦横に流れているのですが、その流れが滞ると張り感や痛みが発症します。
よくバストが張るとかお腹が張ると訴えられますがこれが気滞です。気の流れが滞ると血も流れが悪くなります。
これを気滞血瘀と言います。血液の流れが悪くなると当然冷えるわけで、それらが合体すると強い生理痛を引き起こすのである。
この気滞血瘀による生理痛に対しては香附子、枳殻、陳皮、烏薬で気滞を解消し鎮痛作用がある延胡索、木香、烏薬と瘀血を取る桃仁、牡丹皮、紅花を含んだ漢方処方を選用します。
痛みが和らぎ鎮痛薬が不要になった、体が温かくなったと喜んでいただきます。
この処方は血流を良く改善しますので下肢静脈瘤や冷え性、不妊症にも効果を発揮します。更に自律神経、内分泌を整えますので更年期障害、生理不順にも使います。
漢方の風音 9号 腸内フローラ 自律神経失調症 生理痛 口内炎
腸内フローラ。自律神経失調症。生理痛。口内炎
なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄(昭)
可成り以前、口内炎と腸内細菌とその漢方治療について薬剤師会の会報に寄稿した事が有ります。
通常は腸管内に有るある種の細菌がビタミンB2を作り出し、そのビタミンB2が補酵素として働いて代謝(クエン酸サイクル)を円滑にして口内炎を防いでいるのだが、そのB2生産細菌が何らかの理由で減少した時に口内炎が発症します。漢方医学では<上熱下寒>と言ってお腹が冷えてゴロゴロと鳴ってトイレに行き下痢をする(下寒)…その結果、ビタミンB2生産細菌を下痢で消失する。一方、上半身は熱を持ってニキビが発生したり脳が興奮して不眠だったり、又、炎症を発生しやすい状況を作り出す(上熱)。その結果、その両面が相まって口内炎が発生します。
上半身は熱を持ち下半身(お腹)は冷えて下痢をする時に半夏瀉心湯を服用してお腹を温め、(上である)口内の熱を冷ますとその細菌が再び増殖してビタミンB2を作り出し、その結果、口内炎は治癒するのである。
これは腸管内の細菌が人の健康に大いに係っている。つまり後出の腸内フローラが疾病に関与している事を示唆しているのですが当時、今ほど腸管と健康の因果関係は分かっていなかった。只、アメリカのハウザー食の提唱者であるゲイロード・ハウザー博士は腸管と健康の関係を説いて、乳酸菌、酵母を主成分にしたハウザーローヤルを上市していた。同時にハウザー小麦胚芽とケールを主成分にした緑の野菜…ハウザーグリーンを摂取することを提唱して健康長寿法を説いた。当時、医学界はその説には殆ど関心が無かった様に思います。
最近、その腸管内の細菌叢(腸内フローラ)と疾病との関係が多方面(主にアメリカ)で研究、発表されている。アメリカでは慢性疲労症候群や鬱病、肥満の患者さんに健康な人の糞便を移植して夫々の疾患を治療する試みがなされて良い成績を収めている。
最近では30種類の病気と腸内フローラが関係していることが解明されている。糖尿病、癌、肥満、アレルギー、鬱病、慢性疲労症候群などである。
腸内フローラはテレビで再三、取り上げられて放映されており、視聴された方も多いかと思います。
そこで、漢方医学と腸内フローラとの関係を考えて見ましょう。
四逆散(柴胡・芍薬・枳実・炒甘草)と言う漢方処方が有ります。この処方薬は「肝気鬱結」を目標に使用します。肝気鬱結とは肝の本来の働きが疏滞した状態を言います。肝は感情、情緒を主っていますので、肝の気が疏滞すると感情、情緒が鬱滞します。つまり、鬱症状や不安感やイライラ、自律神経失調症と言った症状が出てきます。肝の経絡は子宮、卵巣に繋がっていますので生理痛や月経不順も出てきます。「五行論」では肝は自然界の木に配当します。木は土(土壌)の栄養を吸い上げて宇宙へ向かってノビノビと伸びて行きます。謂わば、土の犠牲の上に乗っかって居るわけです。従って木と土は良好な関係ではありません。
臨床では、四逆散は木(自律神経等)が伸びやかでない時に効果を発揮してくれます。
肝の気が異常になれば「脾」である土(土壌)にも悪影響を及ぼしてきます。「脾」とは胃、腸管などの消化器官全般を主る臓器を言い、自然界では土に配当します。現代医学の脾臓とは違います。
ここで、自律神経と消化器官、主に腸管との関係が分かって来ます。正常な腸の働きと自律神経、脳神経には相関関係がある訳です。
自律神経が安定し感情が安定している時は腸内も安定している事が理解出来、感情が鬱的であったり、ストレスを受けている時は腸内フローラも正常さを失う事になるのである。
正常な脳のネットワークを維持する為の主な刺激電動物質はセロトニンである。人体のセロトニン分布は腸管が90%で脳内が2%であり、最近の研究で脳内のセロトニンは腸管から供給されていることが解明されている。腸内環境が良いと脳にセロトニンを確り供給出来る事が想像できます。
以上の事を踏まえると肝の気の鬱結を治療する「四逆散」の重要さが分かります。
以前、※大津市薬剤師会の会誌に腸管侵漏症(腸漏れ)の記事を書いたことが有りますが、その内容は本来吸収されない分子量の大きい物質(ホルモン剤や未消化の蛋白質等)がひび割れした腸管から侵入して腸管の神経叢と抗原抗体反応を起こし、腸管の神経叢と発生学的に同じ脳内の神経に抗原抗体反応が波及して委縮症やパーキンソン病を惹起していると言うものである。これも又、腸と脳の病気の関係性を言ったものです。
※詳しくは当ホームページに記載してあります。
13号 漢方の風 ーオーガニックコットン(抵抗力をつける)ー
最近のテレビ番組から、感じた事を、書いてみたいと思います。オーガニックコットンの生産に係っている女性の番組で、彼女は、バングラデシュの農業従事者の困窮を救いたい気持ちを前面に出し、頑張っている姿が、放映されていた。バングラデシュは、北海道の約2倍の面積で、人口は、14000万人。元々低地で、その上、温暖化に伴う洪水で、せっかく手入れした畑が、流されてしまったりで、生活の厳しさが伺える。彼らの大きな生産は、主に、綿花の栽培から、糸紡ぎ迄なのだが、オーガニックでない場合、出来上がったコットンの売り上げの半分が、農薬代に消えてしまうのである。ちなみに、その農薬を一番売り込んでいるのは、ドイツの企業だそうである。オーガニックの元になるのは、アヒル、牛などの糞なのだが、彼らは、その糞を、手で扱っているものの、その表情には、将来を見据えた喜びが満ち溢れている。
農薬を使った畑は、翌年は使い物にならない。一方、オーガニック畑は、毎年植え付けが可能であり、いわば無機質な土と有機的土壌の違いがあるのである。有機的土壌には、ミミズ等の生物が棲んでいる。お名前は、覚えておりませんが、とてつもなく美味しい、又一年経っても腐敗しないリンゴを作っておられるりんご農家の方と重ねて、番組を見ておりました。 一方、私が関係しております医学の世界では、私が、子供の頃、回虫を持っている生徒は、恐らく二桁を占めていたと思いますが、今は皆無に等しい状況である。ある医学博士は、30年前(私が勝手に感じている数字で、不確かですが)、余り見られなかった花粉症が、増え続けているのは、回虫の駆除と関係していると自説を唱えておられます。 私も、同感ですが、漢方的には、もっと、重要な事があるのです。其れは、資本主義社会の宿命なのですが、食環境、住宅環境、嗜好品、…と言った、日本人の体内環境を無視した所から、始まっている。 原稿を書いている今、タイミング良く、ご近所のMさんが、自分の畑で作ったキュウリを届けに来てくださいました。大根、三度豆、キャベツ、ほうれんそう、トマト…等、季節毎に、正に“旬”を戴くのである。スーパーで買ったものとは、味は、勿論の事、日持ちが、全然違うのは、何故なのか。いわば、オーガニック栽培だから、ちがうんヨ…と、Mさんは、ニッコリしながら教えて下さいます。
端を更めますが、漢方では、『気』『血』『水』と言った概念を、重要視します。「麻芍乾桂、関西のご飯」…これは、私がお弟子さんに教えている、小青龍湯の処方内容の覚え方ですが、麻黄、芍薬、乾姜、桂皮、甘草、細辛、五味子、半夏なのですが、これらの内、麻黄、乾姜、桂皮、細辛、五味子と何れも、温める作用のある薬草が、大半を占めている。一方、体内で、身体を冷やしている水を駆水する薬草も含まれている。つまり、簡単に言うと、身体を冷やしている水を、温めて、主に尿として駆水してやると、花粉症は治るのである。ある種の喘息も、同じ理由で、この小青龍湯で、簡単に治るのである。(素人療法は、危険ですので、必ず、専門家に相談して下さい。) 元に戻ってみると、食環境、住環境、嗜好品が問題と言っているのは、冬に、アイスを食べ、秋には、秋味のビール、冬には、冬のビール、冬に夏野菜、又その、真逆の事もありで、東洋医学的見地からすると、最早、正気の沙汰ではないと言っても過言ではない。 現代医学では、花粉症、喘息に、一部お手上げ状態の患者さんが、見受けられるのは、当然と言えば当然なのである。冷えと水毒が原因の喘息のお子さんが、薬嫌いで、アイスクリームに混ぜて服薬させるよう指導している、小児科医、薬剤師がおりますが、如何なものかと、思っております。
無機質な肉体と有機的複合体としての身体の捕らえ方の違い(つまりホリスティック)が、一番大切と考えているのは、漢方家の一致した考えであります。水飲み健康法を実践して、アトピー、ニキビ、生理痛を悪化させて、私に、診を乞うてやって来た患者さんが、多く居られますが、これは、正に、肉体を無機質なものと、かん違いしているほんの一例である。癌患者さんの放射線治療(全てでは有りませんが)も、その一例と思っております。人間の身体は、正に、有機的に複雑に、精神と肉体までも含めて、リンケージしているのである。 ずっと以前の番組で、VRE(史上、最強の耐性菌)感染は、何故、おこったのか(タイトル名は、違ったかも知れませんが)の放送の中で、産卵するニワトリの餌の中に、抗生物質が混ぜてあって、知らず知らずの内に、抗生物質を体内に摂り込んでおり、その結果、耐性菌が増えている。又、何かに感染すれば、兎に角、抗生物質、化学療法剤を、子供の頃から、度々投与するのも、耐性菌を増やし続けている要因にもなっていると番組では、言っていた。
体内環境をある意味、破壊し、純粋培養人間を作ってしまっている現代社会は、一体何処へ行き着くのであろうか。然しながら、適格な抗生物質の使用は、絶対的に必要である。密かに、蔓延しているSTD(性感染症)の撲滅には、正にその通りなのだが…。やはり、予防即ち、性教育の遅れが、結果的には、耐性菌を作ってしまう事にもなるのであろう。 オーガニックコットンを栽培した“土壌”を見るにつけ、抗生物質を頻用した肉体の何らかの“危うさ”を感じるのは、私だけで、あろうか?
(大津市薬会報 2007年 8月号掲載)