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漢方の風 46号 肺MAC症の漢方治療

2021-08-04

漢方塾…肺MAC症の漢方治療


なかがわ漢方堂薬局 中川義雄(昭)


抗酸菌群は結核菌群と非結核性抗酸菌群(Non‐tuberculous Mycobacteria(NTM)に分けられます。
非結核性抗酸菌による感染症を非定型抗酸菌症と言い頭文字を取ってNTM症と言っている。因みに定型とは結核菌感染を言う。NTMは土壌、水系、食物、動物に生息していて、肺や皮膚※等に感染症を引き起こす。
中でもMycobacterium avium とMycobacterium intracellulare の2種類の菌をComplex(合わせて)して、頭文字を取ってMAC菌と呼んでいますが、近年、世界中で免疫力に異常がないのに肺にMAC菌が感染する肺MAC症が増えている。
中年以降の女性に感染者が多いが、理由はわかっていない。近年、若い人にも感染者が出ていると言われている。
風邪も引いていないのに咳が続いたり、咳と共に痰に血が混じり(血痰)肺癌になったと悲嘆にくれて急いで病院にかかる人もおられる。反対に気管支拡張症や慢性気管支炎と診断されてきた人の中に痰を検査するとMAC菌が見つかるケースもあるそうです。
肺のNTM症の内、肺MAC症が70~80%でカンサシ菌(Mycobacterium kansasii)が肺に感染した結核によく似た肺カンサシ症が10~20%程度と言われています。症状は咳、痰、血痰、食欲不振、発熱、羸痩、全身倦怠感などです。

肺MAC菌は浴槽のお湯の注ぎ口やシャワーヘッド、湯垢、風呂場のぬめり等に生存していて、風呂掃除やシャワーを浴びた時などにMAC菌を吸い込んで感染すると言われています。又、土壌にもいるので土いじりをして感染することもあるそうです。


治療法は抗酸菌である結核菌に準じた治療が行われる。
具体的にはストレプトマイシン、カナマイシン、クラリスロマイシン、リファンピシン等の抗生物質とエタンブトールなどの抗結核剤を多剤併用して治療が行われる。
エタンブトールの視神経障害、肝障害。ストレプトマイシン、カナマイシンの第八脳神経障害による聴覚障害、腎障害等の副作用に注意しなければならない。


漢方治療の着目点は痰が多い事と倦怠感、食欲不振等から水毒と気虚が絡んでいると弁証する事である。
水湿が停滞すると水毒となって“痰”が多くなり、これは五行論で言うところの“土”である脾(消化管)の運化機能の失調によるものである。
他にも水湿の絡んだ症状としては浮腫み、食欲不振、倦怠感、頭重感、めまい、羸痩、軟便、下痢などの症状が現れる。

又、肺の機能低下(肺気虚)による症状としては咳、痰は勿論の事、息切れ、呼吸の苦しさ、動悸などがでる。感染にも弱くなり微熱や盗汗(寝汗)、数脈(さくみゃく:頻脈)といった風邪症状が出る。

薄い痰が多く出るようであれば水毒を取る沢瀉、白朮、蒼朮、茯苓などの入った処方を考え、風邪をひきやすい、倦怠感、食欲不振などの症状を改善するために人参、大棗、生姜、甘草、黄耆などの気を補う処方を用いる。
これらの根治療法に加えて咳症状を取る半夏、生姜、五味子、杏仁などを含んだ処方で標治療法を考慮する。


肺MAC菌の感染力は弱く、通常人から人へ感染することは無い。体力の落ちた免疫力の低下した人に感染する。なかでも肺の粘膜の乾燥した防御機能の落ちている人に感染するのである。従って滋陰しながら去痰し、肺と脾の虚を補って治療すれば良いのである。


生脈散、補中益気湯、四君子湯、六君子湯(加黄耆)、苓甘姜味辛夏仁湯、柴胡桂枝乾姜湯(加茯苓、杏仁)、参苓白朮散、帰脾湯、滋陰至宝湯、黄耆建中湯、人参湯、人参養栄湯…他から選用して治療すれば良いであろう。

※皮膚非結核性抗酸菌症:肘、膝、手、腰、下肢に膿疱、潰瘍、発赤、しこり等が現れる。

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