アトピー性皮膚炎・滋賀県・漢方薬 | なかがわ漢方堂薬局

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9号 漢方の風 未病(妊娠中毒症・風邪のこじれ)

2006-08-02

 黄砂について知ったのは、中学生の授業であった。中国甘粛省の砂漠化が深刻化し、近年黄砂の降る量が増えている。中国本土は当然として、韓国京城の被害は、甚大だそうである。その砂漠化に応じて、生薬の生産への被害も出ているとの事。その砂漠化による影響を遥かに凌ぐ影響といえば、生薬の乱獲だそうである。元はと言えば、日本での、漢方エキス剤の使用の増大が、遠因の一つになっているとも囁かれている。五味子、遠志に至っては、80年台と比べ90%減少したと、chuui.comには書かれている。漢方エキス剤の薬価が下がる一方で、生薬原料の高騰があり、保険収載の扱いが難かしくなる局面はそう遠くないかも知れない。八味地黄丸に処方されている山茱萸は、中国、朝鮮半島で収穫される。実を使用するのだが、中の種を抜き取る手間は想像に難くない。中国経済の上昇を眼のあたりにして見ると手間のかかる生薬の価格の高騰も必然性がある。

 一方、海での乱獲が叫ばれている動物生薬にタツノオトシゴ(Sea Horse)が絶滅の危機に瀕している(絶滅危惧種に指定されている)。フィリピンの島々のサンゴ礁に多く棲息している。香港でのマーケット(日本とも結びついている)の要望にせきたてられ、地元の漁民は、体長10cm以下のもの迄、全て捕獲してマーケットに出すのである。1kgが約2万円の値がつくそうである。中国では喘息、更年期障害、ED等に用いられ、日本では、ドリンク剤に多く配合されている。思うままに食べ思うままに遊び、揚句の果てに、疲れたから海馬入りドリンクを服むのである。人間の果てしない欲望の餌食になっているといっても過言ではない。中医学の言葉に理法方薬がある。法に理って生薬を処方するのである。法とは乃ち、全ゆる東洋医学の知恵の集約と言い換える事が出来る。

 因みに、タツノオトシゴは、オスが赤ちゃんを産み(育てる)ジェンダーフリーの実践派でもある。亡き妻との約束事でもあり、この4月より保険調剤を辞退し、新たに漢方専門薬局を立ち上げた。以前当薬局の担当者であったMRのAさんはお弔みと開店祝いを兼ねて、身重の奥さんと子供を連れて、やって来た。その時の感想をAさんは、自から発行している“F通信”の5月号に記載している。奥さんは妊娠8ヶ月。心配性の奥さんは、舌に黒い斑点が出ているのをつい最近気づいたのである。その心配たるや相当なものであるが、ご主人(Aさん)は、お血やからそんなん心配しなくても良いと、インターネットの画面を開き乍ら説明したそうである。その説明では悩みを払拭出来ず私に相談となった次第である。頭痛とひどい肩こりが辛いとの事。そこで、問診となったのであるが、浮腫みと尿の出方を確認した所、見た目には浮腫んでいないが、尿の回数が20回と多い事が判明した。このままで行くと必ず浮腫む。乃ち妊娠中毒症になる可能性が充分ある。所謂る未病である。ここで、当芍散と五苓散を交互に服用する様指示をした所、3日目で尿回数が減り、5日目で頭痛、肩こりが消えた、2週間目から舌の黒点が薄くなってきたと“F通信”では絶賛している。

 若し私の所へ来ていなかったら、“ヤバイ事”になっていたかも知れないと思っているのは私だけである。仕事柄、“人”を観察してしまう癖がある私は、連れて来た子供が気になって仕方がないのである。そこで何気なく、問診した所、納豆を食べさせると口がはれるとの事等が聞かれた。その間、しきりにペットボトルのお茶を欲しがるのである。又水洟が少し出ている。昨年末に尿道炎をおこしたが、漢方的治療は、行っていない、近医の小児科で抗菌剤を処方して頂き、治ったとの事も分った。小柴胡湯と小建中湯を服ませる様指示をして、その家族は帰った。“F通信”では7日目で納豆を食べさせても、口が赤く腫れなくなった、水洟が止まり、お茶の量が減った事も書かれている。未病の観点から言えば、そのお子さんの将来に立ちはだかる“ある部分”は、払拭出来たと私だけが思っている。 生前Aさんの人柄が気に入っていた妻がその家族を呼び寄せたと信じて止まない。安産をお祈りします。

(大津市薬会報 2006年8月号掲載)

8号 ペンギン堂経験記(アトピー性皮膚炎・子宮内膜症・子宮筋腫)

2006-04-22

▲エピソード1) 手指のアトピー性皮膚炎で悩む看護助手の女性

 患者は病院勤めの50歳代の女性で、医療用具の消毒薬を使用する必要から、恐らくそれにかぶれたのであろう。見ると、所どころひび割れがあったり、ガサガサで皮膚が剥離して赤むけ状態の所があったり、所どころ分泌物が出ていて痒みが強く、一見して、正視出来ない程の気の毒な皮膚炎であった。患者は子供の頃からの汗かきで、特に頭に汗をよくかく。又、夜間、尿が一乃至二回ある。便秘気味で、ガスがよく溜まり、硬便を排便する。仕事がハードである為か、疲れ易く、睡眠は熟睡との事であった。漢方的診断で重要なのが、汗の有無と発汗する状態、そして排便の状況である。恐らく発症前は、手に大量の汗をかいていたと推察出来るが、今は手の汗腺がやられ、却って乾燥している。更に質問を重ねた所、人よりも手が熱いという事が分かった。最初、小建中湯と桂苓丸料に、別に知母・地骨皮を加えて服用願った。地骨皮はクコの根皮で、知母共々、手の熱、(煩熱という)をよく取ってくれる。次いで黄ぎを加えて再服して頂き、約四割方改善するも、汗は続いている。痒みもまだあるので、最終的に加味桂枝湯と消風散を兼用して頂いた所、まるで別人の手の様に奇麗になった。コーヒーとパン食を禁じ、米飯に切り替えて頂いた事も見逃せない。

▲エピソード2) 子宮内膜症を併発した不妊症の女性

 患者は長崎県佐世保市に住む36歳の女性で、遠隔地である為、FAXで問診を送付頂き、後はそれを元に電話で証の確定を行った患者さんである。ご主人の精子にも問題があり、妊娠はほぼ不可能である。ご主人は特に子供が欲しい訳でもなく、その後、自らの不妊治療は極めて消極的で、夫婦間の温度差は歴然としている。とにかく、奥さんの不妊を睨み乍ら内膜症の治療をする事になった。訴えは、激しい生理痛と時々生理が遅れる事があり、膣周りのカンジダによる痒みが時々起る。肩こりが強く、足先が冷え、腹が張りガスが溜まる・・・等の訴えがあった。最後に、不可欠な質問事項の汗はなく、便はかなり出にくい事が分かった。以上を漢方的に診断すると、子宮がかなり冷えている事が想像出来る。これは「お血」のなせる業と考え、桂苓丸料に牛膝と延胡索を加えて煎じて頂き、寝る前に桂苓丸加大黄を一回服用して頂いた。最初の30日分で、生理痛がかなり改善し、合計120日分服用後、主治医の診断の結果、悪い所見は全く無く、いつでも妊娠可能と太鼓判を押された。

▲エピソード3) 手術を薦められた月経過多出血を伴う子宮筋腫でお困りの女性

 患者さんは、平成元年にペンギン堂を開店して間なしの患者さんで、大変苦慮して治癒できた思い出深い治験である。昭和24年生まれの方で、来局された時は血色素6.8で、立っているのも大変と思われる程貧血が強かった。立ち眩み、朝の目覚めの悪さ、便秘,下腹部の張りが強く、何よりも筋腫(手拳大)による出血過多で、HRT療法も過日受けていたとの事で、最早、手術しか打つ手がない様な状況であった。どうしても手術したくない理由で、当店の漢方になった訳である。 又、激しい生理痛もこの患者さんを苦しめていた。先ず当帰四逆湯と牛膝・延胡索を同時に煎じて頂いた所、生理痛はほとんどなくなったが、出血量は相変らずで、折衝飲や十全大補湯・?帰膠艾湯等を経て、考え抜いた末、使ったのが温清飲と折衝飲と三七人参の併用であった。生理痛・出血が止まり、長服の結果、いつの間にか筋腫はなくなっていたのであった。

(大津市薬会報 2006年4月号掲載)

7号 魂(何故現代の若者はキレるのか?)

2006-01-19

 魄の話は以前の漢方塾で書いた事がありますが、今回は魂についてふれてみたいと思います。

 金田一京助・国語辞典を引いて見ると、魂とは生物の肉体に宿り、精神作用を受け持ち、生命を保つと考えられるものとあり、気力、精神とあります。一方、漢方用語大辞典では、魂とは、人の精神の働きの一種、肝が血を蔵さなかったり、肝血の不足によって、魂は神に随わず動き、無遊、うわごと等の病証を現す。肝は魂の居所也。神に随いて往来する者、これを魂という。魂傷らるれば狂忘して精せず、精せざれば人に当たりて正しからず、陰縮まりて攣筋し、云々とあります。つまり、正しい精神生活(普通の日常生活をも含む)を過す為には、魂は必要不可欠であり、肝(肝血)が正しくなくては、魂は精神活動に一致せず狂忘する事になる。さすれば、肝血を蔵す事が最も大切と考えて良い。漢方の臨床では、陰と陽の均衡を弁証する事になる。

 最近食育が地域、職場等で脚光を浴びておりますが、最近のTV番組でその食育の討論番組が放映されていた。パネリストの一人に、某巨大ファーストフードのトップが招かれていた。日本は民主主義国家で全てにチャンスを与えるものだと変に関心したりしておりました。アメリカでは、HIVの騒動があった凡そ20年程前に、大統領の諮問機関が食育の問題を取り上げ、東洋の食を取り入れるべきと答申を出している。それは、日本の討論会の議論がどこかズレている感がある。然し乍ら、今の乱れた食事からすれば有意義な討論会といえるだろう。若しかしたら、その先を考えた第一歩であれば良いのだが・・・。

 亦、water crisisなる番組では、1kgの牛肉を生産する為には20屯の水が必要になると放送していた。良質な牛肉を生産するには、とうもろこしが必要であり、砂漠を農地として使用する為である。水量のcrisisもあり、事は重大である。科学者として我々薬剤師の特性が、一隅を照らし光明を見い出す手助けになればと願っております。

 私の大学での友人が、海苔の研究に携わっております。海苔にはビタミンDを除く全てのビタミンが含まれている。しかも人間が必要なミネラルも全て含まれており他に血圧を下げるペプチド類、癌細胞のアポトーシスを促したり、新生血管の抑制に効く物質も含まれている・・・と同窓会の席で教えてくれた。トレースエレメントの豊富なものは、色素やミネラル等が共に存在し、見かけは黒い物が多く免疫に効果的と中医学では言っていると私も友人に話したが、彼は、非科学的な事を言っていると思ったに違いない。

 福田一典先生の「漢方がん治療」では、八味丸や六味丸を多用されている。末期ガンの患者さんは腎が虚しているとの理由からである。勿論補気薬、駆?血薬、抗ガン作用のある薬草も駆使されておられる。要するに、何を食するかが、確かな魂を包含した精神を作り、癌の予防にもなり得るのである。私がアトピー性皮膚炎の患者さんから診を乞われた時、過去の食生活をしっかり問診するのは、最も必要な情報の一つだからである。先天性の問題も吟味し乍ら食育を考えているのである。口が渇き、甘いものを好み、冬では寒がりで、のぼせ易く、といった患者であれば、小建中湯に黄蓍を加えて主処方とする。結局は、薬食同源が根本であると考えているからであり、何を多く食したが、今のアトピーを引き起こしていると考え、それを是正するのである。腸管の状態も同時に見据えているのである。

 話は変りますが、クラシック音楽に興味のある私は、忙しい合い間を縫って、ウィーンへ旅した。ついでに、当地の薬局も2軒訪ねて見た。家内が目が乾燥して辛いというので、通訳を通じて訴えた所、アポテーカ(薬剤師)は、こちらの訴えをじっくりと聞き、長期に使うのか、短期なのかを聞き、少しで良いと言ったら、その若い女性のアポテーカはニッコリと頷き、私達が見ている奥の調剤台の引き出しからその目薬を取り出し、丁寧に使い方を教えてくれた。そのゆったりとした穏やかな一連の動作は、安心感を与えてくれるし、同時に誇りを感じた。未だに、この様な薬局(アポテーケ)がこの世にあるのだと感心し、日本でのコンビニでの販売云々の議論のナンセンスさを身にしみて感じた。

(大津市薬会報 2006年1月号掲載)

6号 こむら返り

2005-10-02

 以前入会しておりました、日本漢方協会の季刊誌に、この様な記事がありました。証をきちんととって、漢方薬を服用して頂き、症状が取れた時、その寛解さをきちんと認識して、喜びの表現をされる方と、まちがいなく証をとり、思い描いた通り治療出来たと、こちらが思っていても、漢方薬で治ったとの認識がなく(認識があっても表現しない方もおられるが)、ただ、自然に、勝手に治ったと認識される方と二通りのタイプがある。概ね、前者のタイプは、実証の?血者に多く、後者は、虚証者に多い・・・と。私も全く同感である。治療出来た満足感は、どちらもあるものの、その比はやはり前者の方が強い。その点において、私はまだまだ漢方の世界ではひよこなのかも知れない。  16年前、漢方薬局の看板を揚げた時、ある先生からは、漢方相談を受けた時、その処方が合わなかった時の為に次の処方も考えておきなさい。出来ればその次の処方も考えておきなさいと教えられた事があります。AにしようかBにしようか、それともCにしようかとほとほと迷う事があります。その時点では、Aが良いと思い投薬したものの、患者さんからは、漢方薬は効かない、或いは自分に合わないと言ってそれで終わってしまう事がよくあります。その時点で、元に戻ってよくよく考えた時、Bなる処方の方が間違いなく効いたかも知れないと思い返す事がよくありますが(勿論、問診での一言が足りなかったばっかりにと思うことが多い)、それは最早あとの祭りである。結局その患者さんは漢方を諦め、現代医療に戻ってしまうのである。その時の私の胸中は内心忸怩たるものがある。肌が合う合わない問題なのかそれとも私の不徳の致す所なのかも知れない。出来るだけ1stチョイスでの治癒確率を高めねばと常々思っている。漢方の世界では、その漢方家の持っているレベルの高さに比例して、難易度の高い患者さんがやって来るものである。10年前の治癒確率と現在の治癒確率を比較した時、10年前の方が高かった様に思うのは、その様な理由からであろう。それ故、漢方は、一生涯(半生涯が正しいかも知れない)を費やす事になるのである。  話は変りますが、この8月よりH17年度びわこ漢方サークルを月1回のペースで始めました。傷寒論を最初から最後迄を目ざしております。宜しければ、途中からでもご参加下さい。その傷寒論の太陽病扁に出ている、芍薬甘草湯について書いてみたいと思います。産婦人科の漢方治療なる本を読んで見ると高プロラクチン症に芍薬甘草湯が効果があると書かれている。陰陽虚実、方証相対も何のその、芍薬甘草湯が良いというものである。渡辺武先生の平成薬証論には、芍薬の寒熱度はマイナス1で、「主腹痛」「除血痺」「利小便」とあり弁証の大切さが伺える。効けばそれで良いと言われれば、言葉を返す気はないが、少々荒っぽい気がしてならい。亦、院外処方箋を応需していると、年に1から2回芍薬甘草湯の処方箋が迷い込んでくる事があると思います。大略、腓腹筋の攣縮を目標に処方されている場合が多いと思いますが、その芍薬甘草湯は「傷寒論・弁太陽病脈証并治上第五」にあります。「傷寒、脈浮、自汗出でて、小便数、心煩し、微しく悪寒し、脚攣急す。反って桂枝を与え、其の表を攻めんと欲するは、此れ誤りなり。之を得れば便ち厥し、咽中乾き、煩躁して吐逆する者には、甘草乾姜湯を作りて之を与え、以って其の陽を復す。若し厥愈えて足温なる者は、更に芍薬甘草湯を作りて之を与えて、其の脚即ち伸ぶ。」とあります。要略すると陰陽倶に不足、及ち陽気不足(冷え)があるから小便数であり、陰気不足があるから脚攣急するのであり、陰陽不足する時は、汗を発してはいけない。若し桂枝湯で発汗すると陽気を損ずる事になり、咽が乾いて吐逆したりする。その様な際は、甘草乾姜湯で損った陽気を回復すると良い。さすればそれだけで、足攣急は治る事が多い。それでも治らない時は、芍薬甘草湯を与えると良いと言っており、軽々に芍薬甘草湯を使ってはいけない事を言っているのである。  10年程前になりますが、市薬の新年会だったと思いますが、元大津保健所所長の辻先生に講演をお願いした事があります。先生は、こむら返りを軽く見てはいけない、往々にして痴呆症(今では認知症)の前ぶれになる事があると話され、カルシウム不足がその背景にあると説明されました。※  たかがこむら返り也、芍薬甘草湯を与えれば、それで良いとは傷寒論では言っていない。総合的に判断して、弁証論治すれば、乃ち認知症の予防にもなるし、ADLを高めることにもなるのである。されどこむら返りである。 ※(カルシウム剤の中で一番吸収が良いのは炭酸カルシウムであるとの説明もありました。) (大津市薬会報 2005年10月号掲載)

5号 衆方の祖(西洋医療と漢方の違い・人間へのやさしさ)

2005-08-12

 漢方薬局を標榜していると様々な相談がある。中でもメディアが放った○○○に効果がある薬草がありますか、と言った内容のものが一番多い。例えば、麻黄が欲しいというものもあった。何の目的に服用するのか尋ねて見ると、痩身の為との事である。

 それは、ある週刊誌に書いてあったというもので新陳代謝がよくなり、結果、やせるというものである。麻黄が配剤された代表的処方は、麻黄湯や葛根湯であるが、どちらも実証若しくは中間証に使用するものである。その根拠は、主薬である麻黄に拠る所がある。麻黄を、一味で寒の邪を駆逐出来るものではないがエフェドリンが係っている事は疑いの余地はない。近年、アンフェタミン等の原料としての可能性から、輸出入が問題化している時代背景の時節柄、痩身の為に、単味で煎じて服用すれば良いとは正に言語道断である。

 そもそも、漢方という言葉は、中国、朝鮮半島にはなく、日本独自のもので、漢の国(中国)の処方が語源とも言われている。処方とは、様々な薬草の組み合わせであり、単味で使う事は例外(甘草湯等)を除いて、殆どない。びわこ漢方サークルで、桂枝等の説明をしたあと質問がありました。桂枝湯の使い方の説明は訳ったが、結局の所、所詮、経験学であり、根拠のないものではないか?つまり、科学的ではないのではと言った主旨のものであった。

 桂枝で血管を拡張し、汗を出させ、気化熱を奪わせて解熱する。つまりNSAIDで発汗解熱すると似たもの考えてよい(体温調節中枢の閾値の低下の結果発汗すると似たもの)。果して、発汗しっぱなしで良いのか?・・・と古代の中国人は考えたのである。そこには、人間の生理機能を深く考えた、妙味があるのである。彼らは、汗をとても大切に考えたのである。人間には、陰なる物質(ここでは血液、リンパ液、組織液、細胞間液等)があって、汗として発散したあとは、当然、陰なる物質は、絶対数が不足するであろう事を予感し、その結果、芍薬、大棗、生姜、甘草が加味されたのである(詳細は省きますが、これらの薬草が陰なる物質の不足を補おうとする)。

 漢方は、人にやさしくないと駄目と嘗つての市薬会報で申し述べましたが、NSAIDの様に、発汗しっ放しで良いとは大きな違いがある。芍薬の意義、大棗、生姜、甘草の意義が夫々、存在するのである。汗を発して、それでいて、汗を止める妙味(解肌作用)があるのである。つまり、発汗後のケアー迄も考えているのである。その桂枝湯を応用、変化させて、様々な疾病が治療出来る。その為、日本の古医方家達は、桂枝湯を衆方の祖と言ったのである。

 T社の漢方調剤研究3月号に記載してあるコラムをご紹介したく思います。物の数え方というタイトルがついている。羊は一匹二匹・・・、山羊は一頭二頭、蝶々は、ありふれた蝶は一匹二匹、珍重される蝶は一頭二頭と数えるそうである。ある時は大きさを規準に、又ある時は、価値感によって数え方が変わってくる。要するに尺度次第で変わるという事である。東洋医学でいう、陰陽虚実、寒熱といった尺度も絶対的なものではなく、人夫れ夫れなのである。つまり個々人によって尺度は変わるのである。体温計で計って、39度だから、抗生物質なり、解熱鎮痛剤が投与される現代医学とは、尺度が違うのである。

 ある人は、壮健な体質だから、強力な発汗剤(例えば大青竜湯)、虚弱体質なら、桂枝二越婢一湯を使う。又同じ人でも、その時の状態によっても、処方が変り得るのである。発熱しているからと言って、水枕で頭なり体幹を冷やすと言った一元的ではないという事である。

 ご近所の○○さんが、39度の熱で寒がっているお孫さんを医院へ連れていった時の事である。39度の発熱だから、素肌にして熱を発散させる様に若いドクターに指示をうけたそうです。○○さんは、その若いドクターに、言い放った。この寒空に、発熱していない(寒くない)大人である貴方だって、寒くって素肌になれないだろう・・・と。

 西洋医学にも、出来るだけ「個」の医療を取り入れなければならないと思いますが、ガイドラインとの整合性もあり、難しい局面に立っている場面もあり得る事は、想像に難くない。

(大津市薬会報 2005年8月号掲載)

4号 気魄(人生は努力の繰り返し・漢方は風邪を引きにくくする)

2005-04-05

 高校時代、ラクビー部に所属した私は、正月のラクビー大学選手権が一番の楽しみである。取り分け同志社大学の熱烈なファンである。昨年の大会で早稲田大学に惜敗して以来、私の気持ちの中では、打倒!早稲田を目標に一年間頑張って来た。大学選手権の予選は、年末から始まり準決勝が1月2日国立競技場で行われる。果して捲土重来を期すべく、今年も早稲田大学と対峙したのである。そして両校のフィフティーンが、グランドに立ち、セレモニーが始まった。先ず早稲田大学の校歌が国立競技場に鳴り響いた。テレビでは、早稲田の選手達をアップで取らえる。その表情には正に「気魄」がみなぎっていた。  中でも2人の選手は大泣きしており、アナウンサーも、しっかりその場面を描写していた。私としては厭な予感がしたものの、それにも増した気魄を同志社大学に期待した。が、次の画面を見た瞬間、私は、愕然とした。全く気魄が感じられない。結果は大敗で、私の見た所、試合前に決着はついていたも同然である。

 高校時代の初めての試合の初めての本番でのタックルに飛び込んだ時の衝撃は、それ迄に経験した事のないものであった。眼前の火花と共に暫くの間、意識を失っていた。気がついてみると全く別の場所で試合が進行しており、結局その試合では、その後、全くタックルが出来なかった。私はその後、気魄の大切さを学び、練習を重ね相手を倒す事が出来、チームも一定の栄光を勝利する事が出来た。

 そこで、気魄について調べて見た。漢方医学大辞典では、魄は、精神意識活動の一部分を言い、本能的感覚と動作に属す。例えば、新生児の吸乳と啼哭(ていこく)など、又、冷熱痛痒感覚と体幹肢体の動作などをさす。この種の働きは、人体の物質的基礎を構成する精と密接な関係があるとあり、精が足りれば身体は健全となり魄も宜しくなる。魄が十分であれば、感覚は敏感となり、動作も正確となる。更に精は、人体の構成と生命活動を維持する基本物質である。人体を構成する部分を先天(生殖)の精、生命活動を維持するのに必要なものを後天(水穀)の精という-中略-精気が絶えず消耗されると水穀の精の生成、補充を促す。精が充足すれば生命力は強く、外界の変化に適応し病気になりにくい。精が虚すれば、生命力は減退する、云々。水穀の精を補充すべく、肺と脾胃の確かな働きを基本に毎日のひたむきな練習と努力があれば、魄は研ぎすまされ、自ずと気魄が醸し出されるのであろう。

 過日、泉下に旅立たれた河野先生との初めての出会いは、私の大学の入学式後のガイダンスの時である。当時、先生は、執行部の委員長をされており、在校生を代表して壇上にたたれたのである。はっきりとは憶えておりませんが、美辞麗句を並べた挨拶ではなく、入学した事の満足感は捨て、これからの学生時代を如何に過ごすかが大切であるといった内容だった様に思います。その言葉に緊張感を憶え、先生の気魄を感じ取りました。亦、在宅介護医療部の理事をしていた時の三師会協議会の席上、在宅患者さんとの薬剤師の係りやかかりつけ薬局の説明をした時の矢継ぎ早の医師会の先生方の質問に、私がたじろいでいる時、先生はマイクを取って、この様に話されました。”薬剤師が新しい試みに、不安もあるが、誠心誠意努力しようとしている所であり、じっくり見守って欲しい。その後、皆様の質問に誠心誠意お答えする”と。会場は一瞬の静寂の後、次の議題に進行した。会議のあと河野先生は私の所にやって来て、”中川、今日の会議は良かったナアー、今迄の三師会の中で一番良かったヨ”と仰って下さいました。正に先生の真骨頂である。先生との憶い出は、一杯ありますが、先生の一面を披露して、これで終わりたいと思います。心よりご冥福をお祈り致します。

 話は変わりますが、今年も例年通りインフルエンザが流行り出した。心疾患を持つ70才代の女性は、柴胡姜桂湯、更年期症状らしき異常発汗をする女性には、炙甘草湯と柴胡姜桂湯、子宮筋腫を患っておられる50才台の女性は柴胡桂枝湯、精神疾患の患者さんには加味逍遥散、或いは抑肝散、扁桃腺を持つ5才の女の子には小建中湯、アトピー性皮膚炎で来店された京都の20才代の男性は荊芥連翹湯加減・・・と様々な患者さんがおられます。皆様が異口同音に仰られるのは、周囲全員が風邪を引いているのに自分だけが風邪を引かない、又例え引いても症状が軽くてすむ・・・とこれは前出の精を各々の処方が充足させているからであろう。

(大津市薬会報 2005年4月号掲載)

3号 耳と腎虚(難聴・慢性中耳炎)

2005-01-20

 それは、正に奇跡であった。否、奇跡というより奇跡的と言った方が良いかも知れない。便秘で悩んでおられる60才代後半のその男性は、左耳の聴覚を、20数年前より失っていた。  それは、中耳炎をこじらせ、炎症が治まったときには、全く聞こえなくなっていたというもので、それからというものは、右耳だけに頼って、生活をしておられた。主訴は、便秘なのだが、来店された時には、残された耳には補聴器が装着されており、私との会話も、若干、不自由さがあった。  他の、問診のやりとりから見て、地黄の沢山入った漢方薬を服用して頂いた。便通が良くなり、お気に入りで、約6ヶ月間服用された。ある日、耳鼻咽喉科で右耳の検査を受けた際、何と左耳に聴覚が戻っていると先生より告げられたとの事で、顔には、喜びが満ちていた。正に、メイクミラクルであった。患者さんからして見れば、便秘薬が、失音した耳を治す訳がないと思われても、仕方がないのだが、私からすれば、地黄が効いたと確信を持っている。

 次の事例は、奇跡でも、奇跡的でもない。正に、理法方薬通りに、事はすすんだもので、西大津から口込みで来店された、6才の女の子、Yちゃんの話である。滲出性中耳炎がこじれ、それも悪い事に、両耳であった。主治医からは、聴覚を失う可能性が高く、次回、来院時に、将来の事も含め相談しましょうと言われ、両親の悲嘆ぶりは、相当深いものであった。問診のテーブルに母親と共に坐ったYちゃんは、耳が聞こえない為か、全くの無表情で、何を聞いても、返事は、返ってこなかった。家から持参した絵本を大人しく読んでいる。待ち合いコーナーに坐っている筈の父親は、娘の一大事さから、母親の背中越しに、母親の言葉に、被せんばかりに、アーダコーダと伝えてくる。  私の娘が、幼い頃、私も、同じ様に、家内の背中越しに、アーダコーダと言っていた事を思い出していた。取り敢えず、柴建湯を14日分渡し、何も悲観する事はなく、現代医学的には、打つ手はなくても、漢方で治る可能性は、充分ある旨を告げ、コンプライアンスを守る事を約束した。果して2週間後、食欲も出て来て、元気になって来ており、耳も、何となく良さそうに思うとの事だので、更に14日分、同処方を渡す。今度は、ほぼ、完璧に、聴覚が戻っていた。念の為、更に、分2で良いからと言って、42包投薬し、治療は、無事、終了した。そして、今、その弟のY君が、柴胡清肝湯を、未病を治す意味合いからも、ボチボチ服用している。

 平成3年から、県薬主催の漢方勉強会が、月1回のペースであった。講師は、故青木馨生先生である。宮本武蔵の崇拝者ともとれる程、よく武蔵の話しをされた。その訳は、漢方は、勘が大切であり、切磋琢磨し、生活を律し、養生をしなければ、患者さんの証は、不可解であるとの理由からであり、宮本武蔵の生き方が、一番良いとの思いがあったからであろう。勉強会が終わったある日、一人の先生が、質問された。それは、定年退職された男性の耳聾の治し方であったが、先生は、その患者さんの職歴を聞き、それは難しいナアーと一言話されただけで、その質問の答えは、終わってしまった。何故なら、その患者さんは、一生の音を、仕事の関係上、既に聞いて仕舞っているからであると・・・。今、思い起こして見ると、あなた達のレベルでは、先ず、無理であろう事を心の中で、呟いておられた事と思っている。

 大河の一滴(五木寛之著)の中に、書かれているものと、何か通じるものがある。それは、人間始め全ての哺乳類は、一生の間に約5億回の呼吸を与えられているとの記述とである。  人が、音を聞くとは、即ち、鼓膜が振動し、その振動を、3つの小さな骨(つち骨、きぬた骨、あぶみ骨)が順じ、その振動を伝え、最終的に、聴覚神経に振動が伝わり、音として、とらえるのである。私が、近頃、一番危惧しているのが、その3つの小さな骨である。年をとると、耳が遠くなるのも、恐らく関係していると思っている。

 人が、この世に生を受け、水穀の気と天空の気から、骨を作り上げて行くのであり、それらの小骨にも、形成と吸収が、繰り返されていて、乳児期-幼児期-青年期-壮年期-老年期と、恐らく、山なりのカーブを画く様に、乳児期は、未来の、輝かしい人生を、見据え、活発な形成を行い、そして、青年期には、ピークを迎へ確かな、小骨を作り上げて行くのであろう。

 最近、子供連れの若い夫婦をよく見かける、アミューズメントスペースでは、音楽が、がなり立てている。困ったものである。特に気に入らないのが、ある携帯電話のCMである。場所は、空港のロビー、むずかる乳児に対して、ダウンロードした音楽を、ヘッドフォン?で聞かせている場面である。非科学的な思い過ごしかも知れないが、直接的に、音を照射しており、鼓膜-小骨-聴覚神経とした一連の流れにとっては、強烈すぎるのではないかと感じている。

 私の店を立ち上げる時、相談した設計士は、人にやさしく、ソフトな印象を与えるには、直接照明でなく間接照明が良いと言い、間接照明を多用した。  音と光とでは、違うかも知れないが、あながち、そうは、思っていない。屈折を繰り返した光は、やさしさを供って目に辿りつく、音も、同じではないかと私は思うのである。

 学生時代、勉強は、二の次と友人に言わしめた程、合唱の練習に時間を費やした私である。客員指揮をして下さった佐々木先生が、よく言われていた言葉を思い出す。人に感動を与えるには、何も大きな声を出さなくて良い、ピアニシモこそ、感動を与えるものである・・・と。

 中医学では、腎は骨髄を主ると言っており、五色では黒い物である。市薬会報61号のH先生の色体表では、青のり、もずく、あさり、しじみ、ひじき、納豆、栗、いわし、さば、こんぶ、かに、麦芽等が記載されている。さて皆さんは、今日、昨日の間に、どれだけ、食されたでしょうか。そして、前出の地黄なる生薬の色は、真黒なのである。

(大津市薬会報 2005年1月号掲載)

2号 薬膳(甘さを追ってはダメ・五つの味を均等にとる)

2004-11-06

 2年以上前の事ですが、NHKの番組で、中国を代表する一料理「魯菜(ろさい)」(山東料理)を継承している佐藤孟江さんの番組を見た。それは正に薬膳であり、とってつけた今風の薬膳とは全く違っている。彼女は、多分、70才代の老婦人で、ご主人と二人で、四谷で魯菜料理の店を営んでおられる。そもそも佐藤さんは、山東省で10代の時、皿洗い、雑用から料理の世界に入ったとの事 。厳しい修行だった事は容易に察しがつく。砂糖も一切使わない、大棗、桂皮、陳皮、拘杞子、生姜、甘草、木天蓼(もくてんりょう)等の薬草から旨味を引き出すらしい。彼女が何故、正統派とも言うべき真の魯菜料理を継承できたかは、やはり努力の人で、老板(料理長)が見込んだからであろう。

 寛いだ気分で見ていたので、それ以上の薬草は、目に留まらなかったが、前出の薬草の効能を考えてみた時、それは正に、宇宙的で、全人的で、人を慮んばかった「持て成し」の精神が充分に伺える。胃腸の弱い人、腰の悪い人、心臓が弱く浮腫(むく)み易い人、風邪を引き易い人等々である。番組では、現代の中国の新魯菜料理の紹介もしていたが、甘みを出す為に塩の4倍の白砂糖を使いなさいと、その料理長は誇らしげに言っていた。

 過量の甘みは脾胃(胃腸の働き)を損ない、胃下垂、下痢、出血、免疫能の異常、等を引き起こす。特にアトピー性皮膚炎、癌、リウマチを治す為には、腸管を整える事が先決であろう。腸の消化管組織にあるM細胞から取り込まれたある種の物質が、特殊化されたリンパ節を刺激し、マクロファージやNK細胞等の免疫細胞を活性化します。成熟した樹状細胞にも働きかけ、免疫調節や能力を高めると言われている。従って、これは単なる消化管だけの問題ではなく、全身の免疫力の問題ということを物語っている。  話は若干それたが、要は免疫力を向上させる為には、胃腸(脾胃)を整えることが大切であり、その為には、甘みを過量に摂らないことも免疫力を向上させる一つの方策であるという事ができる。そうすると、新魯菜は、もはや薬膳ではないという事ができる。

 その年の五月、連休を利用して、観光を兼ねて北京へ行った。他の目的は、中国で漢方書を手に入れる事でもあり、お陰で帰りの荷物の重量が増し、ほとほと困った。漢方の専門書のコーナーでは、その本の豊富さと廉価さ、更に英訳本が数多く揃っていたのが驚きであった。日本人の著した中国語訳も揃っている。 何冊かピックアップして選んでいた所、現地のガ イドさんから片言の日本語で「お父さん(私の事)、これ解るんですか?」と聞かれた。「見ていると何となく意味が訳るんです」と答えると、「私、解らない」と言うんです。中国人が中国語の本が読めないなんて事があるんだ・・・。これもまた驚きであった。(文化大革命の影響もあるとの事でした。)

 話は変わりますが、ガイドさんの説明で、皇帝の居た所は、黄色の屋根瓦、黄色の垂れ幕等、黄色を使ったという事であった。黄色は地上の王を意味し、一番重要な所 (物)を意味している。漢方の弁証論 治の一方法に五行論があるが、青は春で肝臓を、赤は夏で心臓を、白は秋で肺を、黒は冬で腎臓を意味し、黄色は土用で脾胃を意味している。従って、脾胃(黄色)は人体の中で一番重要な所という事になる。  これは、いみじくも免疫の話と一致するのである。金の時代に李杲(東垣)が著した「脾胃論」がある。それは、土は万物の母であり、脾胃を確かなものにする事が最重要課題で、そこから健康が生まれるという考えであり、医王湯なる処方を考え出した。医王湯とは、現代では補中益気湯と名付けられている。「甘」「黄」「脾胃」「王(皇帝)」「土用」「湿」「涎」「棗」等は、同じ範疇に入るのである。

 序(ついで)に、胃に関係する話題として、ピロリ菌について書いてみたい。漢方処方の中に柴胡桂枝湯加茴香牡蛎というのがある。牡蛎とはカキ殻のことであるが、北海道のサロマ湖に注ぐトカロチ川流域には六ヶ所の牧場があり、その糞尿処理にホタテ貝を、また瀬戸内海に面する養豚業者から出る糞尿処理にアコヤ貝を利用している実験がある。何れも貝殻を敷き詰めた所に汚物と水を共に流すというものであるが、貝を使うと使わないでは、BOD(生物学 的酸素要求量)は3450mgから17mgに、およそ200分の1になったとの事である。

 自然の培地と人間の培地(胃袋)とでは環境が違うかも知れないが、過去に当店で胃症状をこの柴桂湯加茴香牡蛎で治した方がおられるが、ひょっとしたら、ピロリ菌除去が出来ていたのかも知れない。

(大津市薬会報 2004年11月号掲載)

1号 不妊症

2004-08-06

 5月25日の夜、山口先生より、原稿依頼の電話があり、一ツ返事で諒承し、漢方の事は勿論の事、免疫の事、医原病の事等について起草しましょうとお伝えしました。  その翌日、慌ただしく、調剤をしていた所、電話の向うに喜びに満ちた声がありました。何と44才にして、無事、女児を出産したとの御礼の電話であった。後日、母親を伴って、正式に、御礼に来られ、漢方薬の服用は勿論の事、私の教え通りに生活全般を見直した賜物と言っておられました。そこで、今回は、不妊治療について書いて見ました。

 漢方による不妊治療の第一人者と言われている寺師睦宗先生の不妊治療最高年令は、44才と言っておられた様に記憶しておりますが、私の手懸けた不妊治療で、44才は、これで二人目と言う事になった。30才台の方と比べ、40才だからと言っても、特に変わった事もなく、身体の歪みを是正するだけの事である。それにも増して気になるのが、男性不妊であろう。嘗って、副会長をしておりました時に、三師会協議会で、少子化の問題が俎上に登った事がありました。当時の医師会長をしておられた福井先生に、不妊の問題もあるのではと申し上げました所、数字的には、殆んど影響しないと仰っておられましたが、私は潜在的には、数多くの方が、おられる様に思います。

 前号の市薬会報で少し触れましたが、免疫の自律神経支配説(安保徹先生)の論理からすると、男女共々、大変な時代になったと思います。生理周期の異常、劇しい生理痛、過多月経、過少月経と様々な悩みを抱えておられる女性の多くが、不妊に悩んでおられます。産婦人科の門をくぐった時、そこには、ステロイド剤が待っており、生理痛には、NSAIDが待っているのである。様々な、子宮の叫びに耳を傾ける事なく、血液やその他のデータを根拠にしてである。これらの薬剤は、身体全体の代謝を抑制してしまう(陰的作用)事になり、延いては血流を更に悪くする結果を招く事になり、子宮は、益々悲惨な叫びを発するのである。

 漢方で、不妊治療をしている時、決まって感じる事は、女性が、みるみる美しくなって来る事であるが、その美しさが、見てとれて来たら、最早、治癒出来たも同然である。5月の連休に旅した時、機内でお会いした姫路のドクターは、桂枝茯苓丸加ヨクイニンは、女性を、みるみる美しくすると仰っておられました。見た目の美しさ以上に、子宮や卵巣が、キレイになっているのは、言う迄もない事です。

 上古天真論に、七紀の事が書かれておりますが、女子は、7才、14才、21才、28才、・・・と7年毎に節目があり、28才が最も強壮で、髪も豊かであり云々、・・・。49才にして、血脈に血が少くなり、月経が止まり、子供が出来なくなると記されており、44才と言うのは、ひょっとしたら限界なのかも知れない。

 漢方薬としては、当芍散、加味逍遙散、四物湯、温経湯、桂苓丸、呉姜湯、等の婦人薬は、当然として、柴胡剤、人参湯、六君子湯、牛車腎気丸、防己黄耆湯、香蘇散等を駆使すれば良いと思います。行間がお許し頂ければ、あと少し男性不妊について書いてみたいと思います。  精子に問題があるのは、免疫に問題があるとも言われており、漢方的には、胃腸が悪いと、免疫が異常を起こし、不妊になる場合もある事は、容易に察しがつく。男性不妊は、脾胃を念頭に入れなければならない。Kさんなる相談者は、ある病院で、八味地黄丸を投与されており、それは、さながら鸚鵡返しの処方と言える。服後、食欲がなくなり、胃が痞えるとの訴えがあり、奥さんからすれば、それでも、頑張って服用して欲しいと言うのは、解らない訳でもない。不妊と胃腸の虚弱の関係を説明した所、服用を強いた自分を反省しておられました。漢方はその人にやさしくないと駄目とも言えましょう。因に、Kさんには、黄耆健中湯を服用して頂きました。

(大津市薬会報 2004年8月号掲載)

0号 漢方雑感 -間違ってはいけない漢方の使い方-

2002-10-26

 漢方と出会ったのが、昭和四十五年に購入した「症候による漢方治療の実際」(大塚敬節著)である。大学を出て製薬メーカーの拡宣の仕事についたが挫折してしまい、そこで大学の先輩の経営するドラッグストアに誘われて、およそ二十年間、薬の相談販売をしてきた。そのドラッグストアに勤務して、まもなく先輩が紹介してくれたのが、前出の書籍である。七百頁を超える分厚い本であるが、何度も何度 も読み返し強い衝撃を覚えた。自らのライフワークに出会った気がした。以来様々な漢方書を読み続けている。漢方と言っても数々あって、日本に仏教と共に伝来した古代の民間療法、室町時代に伝わったとされる後世要方、江戸時代のルネッサンスの象徴である古医方、明治時代から関東以北で拡まった一貫堂医学、ここ最近日本へ紹介された中医学、中国の南の暖かい所で培われた温病学等々である。流石に、最近は、漢方は迷信であると、暴言を吐く 医師はいなくなったのだが・・・。

 漢方は立派な体質医学であり、論理的、唯物論的に体系化されている。基礎的なものから臨床まで、現代医学を上回る勉強と経験が必要と言われている…。十年近く前に発生した小柴胡湯事件なるものがあった。全国で小柴胡湯を服用した患者さんが十人前後亡くなられたのである。当時C型肝炎の蔓延と共に大量に使用され、そのお陰で多くの患者さんが救われたのであるが、漢方的な弁証論治がなされなかったが為に起こった不幸な出来事であった。傷寒論なる難解な古医書にその使い方が記載されており、その通り使用されれば、ほぼ必ずと言ってよい程効果が出るのであって、この様な結果にはならなかったであろう。

 毎年寒い季節になると流行るのが風邪である。文字通り「風」の「邪」である。その風邪にかかる事を「風に中(あた)る」と古人は言ったのであり、 傷寒論という古医書では中風の病(風に中った病)と言っている。中風の病にも色々種類があるが、日本ではその代表格が葛根湯になります。そして傷寒論では葛根湯の使い方を厳重に規定しているのである。何故ならば、使い方を誤れば心臓に悪影響を及ぼしたり、極端な場合は三途の川をさまようことにもなりかねない。傷寒論では、「太陽病、項背強几几、無汗、悪風、葛根湯主之。」と規定しているのである。即ち、項から背中に沿って凝りがあって、汗はなく、寒気があり、そして脈が浮いている時と規定されているのである。

 蛇足ではあるが、ついでに付け加えておきたいのが、夏風邪は一体どうか、という事である。そうです。よくよく前文を見て頂くと、汗は無く、寒気があり、と規定されており、夏の風邪は、有汗で、寒気が無い(あっても少ない)事が多く、合わないという事である。そして、その夏風邪に対しては、温病学や中医学では、別の処方メニューが準備されている。温病学の発展した地域は、中国の南の温かい所であり(亜熱帯の所もある)、当初、日本へ伝来した傷寒論は、どちらかと言うと、中国北部の寒い所で発展した理論である。

 交通手段の発展した今日、世界はグローバル化し、消費を奨励している経済等々が、昔の日本には上陸しなかった南の暖かい地域に棲息しているウイルスを日本に持ち込む事になった。斯くして、日本の漢方は、江戸時代に比べて、更に難しくなっているのである。五月の連休の後、またお盆の休みの後等に流行る咽痛や熱発等は、恐らくこれらが原因しているからであろう。今、世界が一番問題にしている地球温暖化現象は、凍土に閉ざされていたウイルスを現出させ、そのウイルスは、渡り鳥と共に地球規模的に広がっている、又アフリカの奥地に棲息していたウイルスは、蚊を媒介として、飛行機と共に地球規模的にひろがっている。漢方の治療法も中国、韓国の医術を取り入れないと日本の古医方だけでは、立ち打ち出来ない状況になって来ている。

 (平成14年10月)

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