アトピー性皮膚炎・滋賀県・漢方薬 | なかがわ漢方堂薬局

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Archive for the ‘動的平衡的漢方治療’ Category

漢方の風音 5号 認知症と漢方薬(めまい、耳鳴り、不眠、高血圧)

2014-07-29

バリトン 中川 義雄

 以前の漢方の風音の凌霄花(ノウゼンカズラ)の所で書きましたカギカズラ(釣藤)には,枝から鈎が伸び出て、他の植物などに絡みつこうとする性質が有ります。

枝部には有効成分が少なく、鈎部にリンコフィリン(アルカロイド)なる有効成分が多く含有されております。その鈎が伸びきらない内に採取して薬用に使用します。

最近の分析では葉部に、より多くのリンコフィリンが含有している事が解って来ましたが漢方薬では鈎部を使用します。従って生薬名は釣藤鈎(ちょうとうこう)と言います。

リンコフィリンは血管を拡張して血流を高める作用が2重盲検法で確かめられております。又、精神を安定させる作用もあり、最近では脳血管性認知症に釣藤散を使用されておられる薬剤師、医師が多く見受けられます。

釣藤鈎の働きを漢方医学では“鎮肝熄風(そくふう:風をしずめるの意)”作用と言っており、高血圧、頭痛、子供の夜啼き、耳鳴り、眩暈、不眠等を目標に使用します。気が上衝するのを引き下げる働きがある訳で、謂わば、気の“頭でっかちを”正常に戻す働きと考えると解りやすいと思います。

 

 漢方医学では気・血・水を多角的に弁証します。気と血の上衝を同時に治そうとすれば通導散も認知症に使用します。

気と水を同時に治そうとすれば加味温胆湯になるわけです。

ストレス等で気の滞りが有って血流が悪くなっていて認知症を発症していると弁証出来たら?帰調血飲第一加減を使用します。(他にも有りますがここでは割愛します)。 総じて、体や脳に悪い影響を及ぼす事無く脳血流を良くする治療を漢方薬はやってのける訳で、現代医学では難しい所です。 最終的には肝、心、脾、腎、肺の五臓の弁証をしっかり行い処方の決定をするわけです。

 

 端を更ますが、呼吸は肺のストローク作用に因るわけですが、漢方医学では呼と吸に分けて考えます。

呼は肺の気が司っており吸は腎の気が司っていると考えます。

腎と言えば老化と密接に係っており、深呼吸や調息法、丹田呼吸法、太極拳、ヨガ等が老化を防ぐ目的で、日本でも最近よく行われております。

我々合唱団では4小節をノンブレスで歌いなさいと良く指揮者の先生より注意を受けますが自分の腎を養う為にも歌の表現の為にもしっかり腹式呼吸を体得すると一石二鳥であろう。

 

 然し乍ら、声帯その物の強弱が個人個人で違います。それによって声帯の振動の効率も違ってきます。

胸隔が狭く、その上、少しの肺気で効率よく声帯を振動させる事が不得手な私は“4小節をノンブレス”で歌う事が結構難しく、団を辞めようかと真剣に考えた時期がありましたが今は開き直っております。

2小節で感情を切らない様に歌う事を意識して居ります(笠谷先生曰く5~6人いるらしい)。

BS日本 こころの歌 で気をつけて見ていると、フォレスタでさえ2小節でブレスをしていることが結構見受けられますが(我が団と同じ曲目で…)ブレスの仕方が上手く、詩情は繋がっています。紙面を借りてExcuseしておきます。

 

 肺と腎の気が虚して来ている年齢の集団の合唱団であれば、それなりの(レベルがそれなりでは無く)特質を考慮して、より高度なハーモニーを目指す事が肝要ではないかと自分なりに考えております。

お仲間のお一人がメールのやり取りの中で認知症の漢方薬を教えて欲しい旨の言葉が有りましたのでこのタイトルで書いて見ました。

大津男声合唱団 Booklet「ハーモニー」寄稿文より

34号 漢方の風 - 鼓脹・腹脹、腹満(放屁、お腹のはり) –

2014-01-19

 日を過ぎる事、数日前、ある人の紹介で60歳代の女性がご相談に来られました。相談机の前に座られた瞬間、可なり体力が落ちているのが見て取れた。

乃ち漢方医学的表現で言う大いなる虚証である。又、大いなる虚労(可成り疲れている)でもあるのが見て取れた。その女性は様々な主訴を持っておられる事(ここでは割愛します)がお薬手帳を見せて頂き良く解りました。同時にお薬手帳の必要性を改めて思い知りました。

当方への主訴は鼓脹と腹脹である。又便秘症でもあるとの事。このお腹の張りの苦しさは経験したものでないと解らないが、漢方の口訣を数々読んでいると、この腹脹、腹満が度々出てくるので私にはその辛さが良く解ります。

そのお薬手帳を見て目を疑いました。

ガ○モ○ン、ガ○コ○、ビ○フ○ル○ン、カ○グとあり最後に防風通聖散(各30日分)と有りました。恐らく便秘が有るので防風通聖散が処方されたのであろう事は察しが付きます。

 

 腹満、腹脹、便秘は漢方では実証(体力がある人)でも見られ、防風通聖散には調胃承気湯が入っており、実証の患者さんの腹満、腹張、便秘に使っても問題は有りませんが、この患者さんは明らかに虚していることが解り(虚証である事が解るの意)、服用する事により更に体力を失い、更なる腹満、腹張を惹き起こした事も充分察しがつきます。

悪いことに、生真面目なこの患者さんは30日分全て服み切ってしまった。

防風通聖散は体内の“毒邪”を二便(大小便の事)、皮膚(発汗、皮膚呼吸)、肺呼吸から食毒、風毒、水毒、梅毒、酒毒、鬱毒を排出して体調を整える処方である。

つまり体内のあり余った邪をあらゆる手段を用いて排出して、体調を整える作用である(その際、体内のエネルギーも体外に出してしまうので虚証の患者さんには絶対に使ってはならないのである)。その結果、実証の人の中性脂肪値、コレステロール値、血糖値、尿酸値等を下げてくれます。

防風通聖散の使い方は「漢方一貫堂医学:矢数 格著」に詳しく書かれていますので参考にされたい。

 

 ふと思い起こしてみて、当方の薬歴を調べてみた所、平成10年にお腹が張って辛く苦しい思いをされておられた73歳の男の方が相談に来られておられます。

やはり痩せていて、見るからに虚証で有ることが解ります。そこで厚朴、生姜、半夏、人参、甘草を購入いただき、同時に煎じて服用して頂いた所、あの辛く苦しいお腹の張りが、忽ち取れてとても喜ばれた経験が有ります。因みに大建中湯では全く効果が有りませんでした。

当時50歳代後半の女性はC型肝炎でやはり腹満で苦しんでおられましたが、便秘も有り茵陳蒿湯で治まりました。この方はその後しびれ、腰痛、ひざ痛等で困った時は当方へご相談にお見えになられています。

西洋医学と東洋医学の良いところを上手くミックスした医療が待ち望まれている今日この頃ではないでしょうか。

 

 それにしても、先出の60歳代の患者さんの処方を調剤した薬剤師さんにも上手く対応して欲しかった事は言うまでもない事です。

なかがわ漢方堂薬局 中川 義雄(昭)

漢方の風音 4号 パウロとザビエル(アトピー性皮膚炎とバリア機能)

2013-12-12

バリトン 中川 義雄

ポーランドのワルシャワでCOP19が行われています(11月12日原稿を書いています)。その最中(さなか)フィリピンのレイテ島を巨大台風が上陸した。

895hPaの気圧で瞬間最大風速95メートル(メディアによっては103メートルと報道)の風が襲い、気圧による海面上昇と風が海面を素早く通り過ぎた為に海面上が陰圧となり上昇した結果数メートルの高潮が襲ったと報道されており1万人近い死者が出るだろうと報道されている。

COP19(国連気候変動枠組み条約締約国会議)で、そのフィリピン代表のナデレヴ・サニョー氏が涙ながらに演説した。今ここに出席している各国が地球温暖化に如何に対応するかが問われており、その結果将来の悲劇を繰り返すか食い止めるかが問われている。…(略)。良い結論が出るまで絶食すると宣言した。サニョー氏は既に3日間絶食していると言う。

一方、日本が脱原子力下で温暖化ガスを押さえながらエネルギーを如何に作り出すかを世界が注視している。

福島の原子力発電所の収束も然りである。この事については日本が最近開発した二酸化炭素の発生を極力抑えた石炭によるエネルギーの確保等、又、発電と送電の分離政策を含めた政治の決断が最重要課題であると最近の文章で書いた所です。

?地球温暖化は自然現象のみならず人間の健康生命をも脅かしている事も顧慮しなければならない。惹起している症状の第一は多汗症であり熱中症であろう。

?漢方医学では温暖化は健康生命に対して、汗の不快感のみならず様々な病的症状を引き起こすと考えている。

口渇を解消したいが為に摂る水、清涼飲料、ペットボトルで摂るお茶等はお腹(中焦、下焦)を冷やすことになるし又湿邪が発生する事にもなる。

最近京大病院の皮膚科が発表した皮膚バリアに関与している蛋白質(フィラグリン)の低下によるアトピー性皮膚炎も惹き起こされるし、ニキビ、不妊症、免疫力の低下等も惹き起こされると考えられる。又、湿と熱が関与している前立腺ガンの発症にも繋がっているであろう。

?漢方薬でアトピー性皮膚炎の治療を実践している施術者は昔から絶えず皮膚のバリア機能を高める事を念頭においている。今に始まった事では無い。最近、汗を多くかくと痒みが強くなる患者さんを多く見かけます。この様な患者さんには桂枝湯と黄耆、茯苓を同時に服用して頂きます。(この手法を漢方では「解肌(げき)」と言います)汗が減じ皮膚が綺麗になってきます。この場合恐らく皮膚バリア物質フィラグリンが多く作られているのではないかと想像しています。追試が待たれます。

?今から十数年前、京都のホテルで薬剤師の漢方調剤研修会が有り、演者を務めた事が有ります。

私の講演のあと昭和薬科大学教授田代真一先生が研究の一端を講演されました。

漢方薬が効く事の薬理学的(科学的)解明であった。先生は講演後の食事会で私の傍にお出でになりに私のコップにビールを注ぎながら…

“先生(私の事)頑張って多くの患者さんを救ってあげて下さい、先生はパウロです。私(田代先生)はザビエルとなってエビデンス(証拠、根拠)を確立し、医療界を納得させますから…”と話された事があります。

?これからは西洋医学と東洋医学が“真の”合体をした新しい感性を持った医療が待ち望まれている様に思います。

西洋医がむやみに漢方薬を処方するのではなく、人の“心”を中心に据えた真の東西合体医療が待ち望まれているのではないでしょうか。

大津男声合唱団 monthly booklet 「ハーモニー」寄稿文より

漢方の風音 3号 漢方薬の発祥

2013-10-03

バリトン 中川 義雄

7月のある日、漢方薬を作っている時に電話がありました。それは私の出身高校の後輩の生徒さんからであった。

学校の設定科目で「探究」に係る学習科目が有り、グループでテーマを設定し、それに仮説を立てた上で、夏休みを利用して探究活動(取材、調査、実験等)を行い、その結果を発表する「課題解決型」の学習活動の一環として、当方を訪問したいと言う内容であった。

その生徒さん達のグループのテーマは「東洋医学と西洋医学の発祥の違いについて」であり、私には漢方薬の発祥について教えて欲しいと言う内容であった。

後輩の学習のお手伝いが出来る事はこの上ない喜びで有り、又微力ではありますが学校に恩返しが出来る喜びも有ります。

1時間の予定が2時間以上も時間を取ってしまい生徒諸君には負担をかけてしまったと後悔しております。そこで、漢方の発祥について書いてみたいと思います。漢方(所謂漢方薬)の医学書として最も古く記されたものは、後漢(AD200年頃・1800年前)の時代に「張仲景」が著した「傷寒雑病論」である。

その傷寒雑病論は時代の変遷を経て、脱字や加字(後人が加筆したと言われている)は有るものの、現代に残っている。

何故、張仲景が傷寒雑病論を書き上げたかは以下の理由が有ったからである。

後漢のその時代には神仙道方術家なる漢方家ばかりで、彼らは不老長寿の処方の組み立てばかりを目標に日々を送っていた。従って抗生物質の無い時代の伝染性疾患の治療はお手上げの状態で、実に大勢の民が感染性疾患で亡くなった。

漢方的手立てが無いまま、むざむざと多くの民が亡くなって行ったと傷寒雑病論“序文”に書かれている。

「張仲景」の一家一族郎党も例外ではなく、建安元年(AD196年)から10年の間に200人以上の大家族の内3分の2の身内が主に感染症で亡くなったと書かれている。

張仲景は現在の河南省南陽県で官吏として仕事に付いていたが“感染性疾患の治法の確立”を念頭に、一念発起して張伯祖に師事して漢方医学を学び、師を超えて前出の最古の感染性疾患治療の医学書を書き上げたので有る。

因みに、風邪の引き始めに使用する葛根湯はこの医学書に書かれたもので有り、日本では一番馴染みの深い処方である。最近、日本では病医院でも度々処方されますが、残念ながら張仲景が書き残した理論とは違った使い方をしているのが現状である。

寧ろ、やみ雲に使っていると言った方が正しいかも知れない。

張仲景は葛根湯の使い方を厳密に規定しているのだが、使い方を間違えると、場合によっては脱汗といって心臓性ショックをおこし、三途の川を渡った人も多くおられると有名な漢方の先生の講演で聞いたことが有ります。

毎月おこなっている漢方勉強会(びわこ漢方サークル)受講の薬剤師さんから、ひどい“多汗症”のお年寄りの患者さんに、肩こりを治す目的で葛根湯が処方されているのだが…と相談を受けた事が有ります。

服用している本人は何も分からず服用しているのですが、これは当に命がけである。葛根湯のせんじ薬で投薬していたら恐らく危うかったであろう事は想像に難くない。

私は日々の仕事の中で葛根湯はそんなに使うことは有りません。

張仲景は書の中で葛根湯の使い方を以下の様に規定している。

つまり太陽病(感染の始まりで)で、項背強張り(首こり、肩こりがあって)、脈浮緊(緊張した脈で浮いている)、汗無く…と規定している。従って、この項背強張り、脈浮にして、汗をかいていない状況であれば副鼻腔炎に、蕁麻疹に、咽痛に、腰痛に、ニキビに、中耳炎に使用するとうまく治療できます。

抗生物質や鎮痛剤を使わなくてもうまく治るのである。言い換えると葛根湯は有汗時には使ってはいけないのである。

漢方薬の副作用情報も大切であるが、施治者は真の使い方を会得しなければならない。

漢方医学では間違って処方することを“誤治”と言い、強く戒めているのである。しかし乍ら傷寒雑病論では誤治をした時の対処法迄言及しているのである。

漢方薬は使い方次第では毒にもなるのである。

更にその傷寒雑病論序文に張仲景が時の医療者を嘆いて次の様に書き記している。

「ただ空しく栄華権勢を求め、権力者になろうと必死にもがき、名誉と利益を得んとして大事な所をなおざりにしてしまい、外面を華やかにして内面は窶れている様では、真の栄華は得られない」…と。

?大津男声合唱団 ?onthly booklet ハーモニー寄稿文より

33号 漢方の風 ー人体は自然界・宇宙と同じ (めまい、のぼせ、頭痛、肩こりの発症の気機)

2013-07-21

富士山はいつ噴火してもおかしくないとある地質学者がテレビ番組で仰っておられました。

若し噴火すれば東京都までもが影響を受けて(火山灰の悪影響で都市機能がマヒし、政治、経済が大混乱に陥るとのこと)、数兆円の被害が発生するそうです。

私が住んでいる滋賀県は東南海地震が近い将来起こると多くの地震学者が言っておられ、津波の被害は無いものの震度5ないし6の揺れが来るそうです。

原稿を書いている(5月14日)この数十日間の間に淡路島初め3回のマグニチュード5以上の地震が日本列島を襲っている。これらの3回の地震に関して、地震予知の観点から興味深い事をテレビで言っておられました。

2年前の東北の大地震の際も一日前は、勿論の事、数時間前、更に数十分前にはマイナスイオン電子が東北の上空にどんどん集まっており、異常なマイナスイオンが固まりとなって表示されておりました。

東北沖の震源地では、北アメリカプレートの下に太平洋プレートが潜り込みプレートに巨大な圧力がかかると電位差を生じ(岩石に圧力を加えると電位差を生じる実験データが有る)、エネルギー乃ち電気エネルギーが発生し、その結果そのプレートの上部の海底の地表部(日本海溝付近)にプラスイオンが集まる。その結果、プラスイオンに引き寄せられる様にその上空にマイナスイオンが集まって来て、マイナスイオンの固まりが出来る。そこへ宇宙から(主に太陽からか?)やって来た電磁波がマイナスイオンにぶつかる。そのぶつかったエネルギーを観察するとマイナスイオンの固まりを映像として捉える事が出来る。番組では東北のあの巨大地震の際のその映像を時系列でテレビに映し出していた。

学者はプレートのせめぎあいの結果、震源地の上空にマイナスイオンが集まり、それに電磁波がぶつかり生じる現象の事を“擾乱”(じょうらん)と言っておられました。

漢方用語に“上擾”(じょうじょう、上部を擾乱の意)と言う言葉が有りますが、「地表と上空」は人体における「下部(体部)と頭部」と同じで、地震の前兆は、人体の下部のトラブルが頭部を撹乱しその結果発生する頭痛、肩こり、眩暈、不眠、イライラ、ニキビ等の一連の症状と同じである事が分かります。

巨大プレートの鬩ぎあいに対して人類はどうすることも出来ませんが、人体の下部(体部)のトラブルは漢方薬で解消することが出来ます。

人体の上部の症状とは、乃ち、上出の頭痛、眩暈、イライラ、不眠等であり、下部の症状とは悪心、口苦、口の粘り、胃重、舌苔が黄膩、胸脇部がはって苦しい、食欲不振等である。これら痰濁上擾、痰熱上擾には、半夏白朮天麻湯、温胆湯が効果を発揮します。

半夏白朮天麻湯は、元々胃腸虚弱で胃内停水があり、その上、風邪に感染したり、重い精神負担がかかったりすることに因って胃内の水毒が上逆し、それが元で頭部を擾乱し、頭痛、眩暈を惹き起こす…その様な状態のときに使用します。その眩暈はぐるぐる回転性だったり、天地がひっくり返る様だったり、地に足がつかない浮遊感だったりと様々です。

 

話は変わりますが、昨今の電気料金の高騰は生活に工業に影響を与えています。

原子力発電に期待出来ない昨今、火力発電に重きを置いている現状では為替レート、天然ガス、重油等で電気料金が左右される。地震帯に日本列島が位置しており地震からは逃れようがありませんがその分地熱はたっぷり有ります。

八丈島が地熱発電で島内の電気を賄っている様に地熱発電の効率を高め、又、風力発電、更には最近脚光を浴びている炭酸ガス及びPM2.5の発生を最大限抑えた安価な石炭による火力発電等を行えば技術力で日本は更に安価なエネルギーを手にすることが出来ます。

その為の最も重要な施策は発送電分離の法整備を行なうことであろう。

(大津市薬会報 2013年7月号掲載)

漢方の風音 2号 腰痛、ヒザ痛、脚弱、尿不利

2013-06-09

バリトン 中川 義雄

 人間の老いは目及び下半身からやって来ると言われて居ります。私も最近、頓にその衰えを実感している所です。漢方の言葉ではそれらの弱りの事を“腎虚”といいますが、腎虚になると脳細胞の衰えは先ず有ります。又、腎機能の衰えも読んで字の如く有りますが、副腎(副腎ホルモン)の衰えも含んでいるのが漢方医学の考え方の特徴です。従って副腎の機能である糖の代謝、ミネラルの代謝(尿量、血圧と関係します)は勿論の事、排尿困難、排尿異常(漢方用語で尿不利と言います)も骨の代謝(骨を丈夫にする)も弱ってきます。更に“肝腎要め”の言葉通り東洋医学では肝と腎は母子関係にあり、肝もそれに連れて弱ります。そうすると、肝と腱は元々深い関係が有るので骨を支持している筋肉も弱って来る。かくして腎が弱ると一連の老化現象(下半身の弱り、躓きやすい等)が現れるのである。これら一連の関係は漢方用語で〝腎は骨髄(こつずい)を主る〟と言う言葉に帰着する。

腰痛、ヒザ痛、骨粗鬆症、脊柱管狭窄症は“骨”(こつ)であり 物忘れ、シビレ、パーキンソン病は“髄”(ずい)である。だからと言って物忘れ、パーキンソン病を治そうと腎を強化してもそう簡単には行かない。認知症、パーキンソン病は心も脾も絡んでいるし、血流も絡んでいるからである。

 風邪の引き始めは、先ず悪風、悪寒(所謂さむけ)がします。又それと同時に関節(ふしぶし)が痛む場合が有ります。風寒と言う“さむい邪”が体表にとり付いたが為に“寒さ”を覚える訳であり、同時に関節にも風寒の邪が襲ってくる為に腰痛、ヒザ痛、顎関節痛もおこる。この様に風邪のひき初めと各関節痛とは大いに関係が有ります。そこで腎虚による痛みなのか風寒の邪による痛みなのか、どちらも絡んでいるのか若しくは全く別の問題が絡んでいるのかを良く弁証します。

体表(皮下)は前述しました様に関節と同じなので、膝関節に水が溜まると体表にも水が溜まる場合が有ります。乃ち、浮腫んで来ます。そのむくみは漢方医学では虚腫と言って力のない浮腫みである。整形外科で水を抜いても、又、溜まってきます。漢方薬で体表の水をぬいてやると関節の水も抜けていきます。虚腫は漢方に熟達してくると皮膚の虚実や顔貌と絡めて膝を診るとよく分かります。一方、膝の腫れに実腫が有りますが、この場合は顔が腫れることは先ず有りません。整形外科ではこの様な概念が有りませんので漢方医学の方がより実態にあっており、うまく治せると筆者は確信を持っている。

大津男声合唱団 Booklet 「ハーモニー」寄稿文より

漢方の風音 1号 ホリスティック医学(病察医学。局方医学ではない)

2013-05-24

バリトン 中川 義雄

 平成25年3月7日、ぽかぽか陽気の中、春の到来を感じながら大阪府三島

 郡島本町へ向かって車を走らせた。町の老人福祉施策の一環として「漢方薬の現状」についての講演依頼が有ったためである。会場には80名以上の町民が来られていました。筆者は毎月1回、医療関係者向けの漢方講演(びわこ漢方サークル)を行っておりますが、その聴講者の方々に負けず劣らずの熱心さが ひしひしと伝わって来て、漢方薬に対する興味の深さを感じ取りました。日本国民一人一人が近くて遠い漢方薬なるものの本質を知りたがっている事を確信しました。

 医療界に於ける現状は、漢方薬を補完医療乃ち代替医療と規定していますが、本当にそれで良いのか、例を挙げて皆さんに問いかけてみた。

 そこで、高血圧、耳鳴り、動揺感(地に足がつかない)頭痛、肩こり等の症状を併せ持つ患者さんを例にとり、夫々の処方を比較する事にした。西洋医学では上記の患者さんには概ね「血圧降下剤、筋弛緩剤、ATP、ビタミンB12、血流改善薬」(6剤)が処方されますが、漢方医学では「釣藤散」1剤で全ての症状を取り除いてくれます。その上、自然な眠りの深さも保証してくれます。何故、釣藤散が上記の症状を全て取り除いてくれるかを詳しく説明しましたが、取り分け1つ1つの症状を取り除く「局方医学」ではなく、その人、全体(全身)を診て治す「病察医学」の大切さを説明した。又、釣藤(カギカズラ)の鈎(かぎ、とげ)の所に有効成分(リンコフィリン)が含まれており、熱に弱く煎じる時間を短くする必要があり、他の薬草と同時に煎じると効果が無くなる事もお話しして先人の知恵が科学的であった事も説明した。

 講演後漢方薬の作用機序、乃ち気血水(きけつすい)論、陰陽二元論等を考察した弁証論治法を聴講し、感銘を受けたと数名の主催者の方が仰っておられました。

 会場では質問も多数あって、総じて漢方薬の素晴らしさを感じていただけた様に思いつつ帰途についた。

 話は変わりますが、そのカギカズラの様に~カズラと称する植物に凌霄花(ノウゼンカズラ)が有ります。どちらも蔓性植物なので、蔓のある植物を~カズラと称するのだろう。ハーモニー3月号の塩田先輩の随筆に、その凌霄花の事が書かれて有りましたが、漢薬名では“りょうしょうか”と言います。中国では無月経、月経痛等に紅花、牛膝(いのこづち)、芍薬等と一緒に煎じて使います。寒熱で言えば微寒の性が有り血熱を清ます事から、痒みを伴う湿疹、蕁麻疹にも使用されます。因みに薬用部位は花部である。

            大津男声合唱団 Booklet ハーモニー6月号

32号 漢方の風 ー陰陽学説から見た流産癖、ひざ痛

2013-01-25

 漢方医学は陰陽学説的弁証法を拠りどころとしている。古代中国人が生活の中で自然現象を長きに亘って観察し、宇宙間の全ての変化を解き明かした思考システムである。全ての事物には相対する陰と陽が存在しており、その陰と陽が相俟って(相互作用して)その事物の運動、変化、発展の原動力になっているとしている。陰と陽は夫々単独では存在する事が出来なく、陰陽は夫々相手の存在を自分の拠り所としている。乃ち上が有っての下であり、上が無ければ下が無い。熱は陽であり寒は陰であり、寒が無ければ熱を論じる事が出来ないといった具合である。つまり陰と陽は夫々単独では存在する事が出来ないのである。  宇宙は陰と陽の相互作用で成り立っている。又、漢方医学では人体を小宇宙として捉え、人体も陰陽のバランスで成り立っているとしている。そして、更に小宇宙である人体は大宇宙の中にバランス良く存在している事も大切としている。  この陰と陽は漢方治療においては絶対である。小宇宙である人体には陽である“気”(目に見えない)と、陰である“血”(目に見える)が存在し、気が血(物質)を生じ血(物質)が気を生じている。言い換えると色不異空(しきふいくう)、空不異色(くうふいしき)、色即是空(しきそくぜくう)、空即是色(くうそくぜしき)と通じる所がある。それ故、物質(色、陰)だけを論じても駄目なのである。物質である陰を生じるには陽が必要だからである。

 

 最近、ひざ痛に良いとしてグルコサミン、コンドロイチン、コラーゲン等のCMが様々な媒体で目にしたり耳にしたりします。又整形外科ではコラーゲンの注入が良く行われています。どちらも軟骨を作るが為の物質であり行為である。これらでひざ痛が楽になった方は沢山おられますが、効果がない方もおられます。色(しき)である物質(グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲン等)を軟骨にする為のある種の気の力(作用)が働いているが為に軟骨は作られているのであり、若しこのある種の気の力(作用)が弱っているひざ痛の人にはコラーゲンを注入しても効果は少ない。前述のひざ痛が治まった人達はラッキーにも未だ気の力が残っていた人達である。漢方処方としては独活寄生丸を用いると良い。

 

 流産を繰り返すAさんは、精神的にも肉体的にも弱っておられた。子供が欲しいが、又、流産してしまう不安感で途方にくれておられた。不妊ではなく妊娠を持続する事が出来ないのである。そこで当薬局へ相談に来られたのである。現代医学的治療ではアスピリンやヘパリンで胎盤の血流をよくする治療法や夫のリンパ球の免疫療法が行われている。更にステロイドであるプレドニン療法もある。一方、漢方医学的見立て、乃ち“未病を治す”観点からすると不安感を持っておられるAさんは再度妊娠しても、今まで以上に妊娠を持続する気の力は減じており、再度流産する可能性は大きいと言っても過言ではない。体力の減衰も見られるが、精神の減衰が著しく、不安感を持つ事が妊娠を持続する気の力を萎えさせると考える事が出来るからである。漢方薬としては気を益す為に四君子湯の方意を持たせ、血を補う為に四物湯の方意を持たせ、流産を繰り返した気の落ち込みを取る為に逍遥散と香附子を主処方に組み立てて服用して頂いた所、たちまち妊娠して、無事、超安産で元気な赤ちゃんを出産された。陰と陽をバランス良く補った結果である。

 

 大宇宙である環境に小宇宙である人体が生きる。乃ち「人にやさしく自然に溶け込む」…が私(なかがわ漢方堂薬局)のモットーである。

(大津市薬会報 2013年1月号掲載)

31号 漢方の風 ー不眠、不安感、頭のふらつき

2012-07-05

 平成24年6月17日のY新聞にベンゾジアゼピン系薬剤である抗不安薬・睡眠薬により薬物依存に陥る危険性の事、又ベンゾジアゼピン系薬剤(以下BZ※)の服薬中止や減薬の際に現れた場合の離脱症状を減らす「やめ方」に関する記事が書かれていた。この記事を読み、ごく最近まで「止め方」のマニュアル、指針が無かった事を知った患者さん達は、さぞかし憤慨されておられる事でしょう。その主な離脱症状は更なる不安増大、イライラ、集中力低下、頭痛、吐き気などの精神、身体両面(※)に現れる。驚いたことに、日本での人口1000人当たりの使用量は米国の6倍にのぼると国連の国際麻薬統制委員会が2010年に報告していると書かれている。欧米では薬物依存を防ぐ為に使用を4週間以内に抑えるのが一般的とされている。日本の現実を見ると数年単位で服用しておられる患者さんが多数おられます。又、話は逸れますが、ずっと以前、大津市薬剤師会の講演で医師のT先生がBZ系薬剤の長期服用による認知症発症の危険性を話された事は記憶に新しい(動物実験で)。

 

 Y新聞の記事では、Tさん(40歳)は人前の過度の緊張、発汗の改善を目的として、BZ系薬剤(ソラナックス)を1日の最大量を4年半服み続けたが効果が無く、主治医の指導のもと半分に減薬した所、日光が異常に眩しい、暗闇でチカチカした光が見える、白内障、入眠時ミオクローヌス等の離脱症状が現れ、ベンゾジアゼピン離脱症候群と診断されたと書かれている。最近、BZ系薬剤の止め方の手順が英国のヘザーアシュトン教授によって「アシュトンマニュアル」としてインターネット上で読むことが出来る様になった。日本語のこの指針は、“正しい治療と薬の情報誌”に、この7月に記載される予定(平成24年6月に原稿を書いています)との事である。又、BZ以外で同様の影響を及ぼす薬剤もあると書かれている(デパス、マイスリー、アモバン)。  私の記憶ではBZ剤は今から44年前、私が薬剤師になった頃には既に上市されていたと記憶しております。この指針は遅きに失した感が否めません。このBZ系薬剤を処方された患者さんに接遇した時、「こんなに長く服んでも、大丈夫ですか?」と質問を受けた薬剤師は恐らく全員ではないでしょうか…。  当薬局にも、この不安感、フラツキを訴える患者さんが頓に増えていますが、漢方処方を決めるに困窮することが多い。五臓を見亘し、乃ち心、肝、脾を弁証し更に腎、肺と考えていきます。虚陽が昇り神(心)を冒すと桂枝加竜骨牡蠣湯で重鎮安神する。実証には柴胡加竜骨牡蠣湯を考える。心と脾を考えた時は帰脾湯を、脾と痰濁上擾を考えた時は(竹茹)温胆湯を、脾と腎を考えた時は苓桂甘棗湯を、…他、と言った具合です。

 

 最近、K社からこの苓桂甘棗湯のエキス剤が上市された。苓桂甘棗湯は「汗を発して後、其の人臍下悸する者は奔豚(ほんとん)をなさんと欲す」と傷寒論に記載されている。奔豚病は猪が突進するかのように下腹部から動悸が始まりやがて胸から咽まで衝き上がってきて、今にも心臓が止まりそうと悶え苦しむ。嘔吐、ヒステリー、神経症、下腹部痛、胃液分泌過多、尿利減少、便秘、癲癇様症状等を同時に惹き起こす事が多い。当然、耳鳴りやフラツキを同時に惹き起こし、不安感を併発する事もあるでしょう。  これは腎の孤陽が上衝した結果発症するものと考える事が出来る。乃ち脾の働きを高めて(大棗、甘草)、陰精を作り、又、茯苓で心気を高めてその陰精を運び、上衝の邪を鎮め、桂皮で上衝の気を降ろし抗不安作用を発揮します。

 

 私が平成元年に漢方薬局を始めて、間もなく、この奔豚病で苦しんでいる40歳代の男の患者さんが来店されました。腹部の動悸と不安感で困窮されておられるとの事であった。赤ら顔で、腹部の動悸を強調されておられました。Doctor Shoppingを繰り返し、その苦しみを訴えても、なかなか理解してもらえないもどかしさが病態を更に悪くしている様に思えた。当時、エキス剤が無く煎じ薬で対応しました。この腹部の動悸を抑える為にβブロッカーを投薬され、Depression様症状に陥った患者さんを数人見てきました。心の気を抑える事になり、精神作用に悪影響を及ぼした為であろうと私なりに考えております。その際、服用を中止したものの、元の精神閾値に戻る可逆性は実に時間がかかる様に思っています。これらを見て、漢方医学で言う所の「心は神なり」を実感します。  他の処方では、心陰の不足と脾虚による不安感には、甘草と大棗と浮小麦で脾気を高めて生津し、心陰を補って不安感や悲哀感(漢方医学では臓躁と言います)をなくすものも有ります。  K社さんの苓桂甘棗湯が上市され、奔豚の病の患者さんの不安感、フラツキに対処出来る手立てが増えた事は私に安心感を与えてくれます。

※ BZ系薬剤…ソラナックス、コンスタン、レキソタン、マイスタン、リボトリール、ランドセン、セルシン、ワイパックス、ドラール、ベンザリン、ハルシオン、ユーロジン

※ 他の身体症状…筋硬直、疲労感、眼痛、耳鳴り、嗅覚異常、月経異常 、等

※ 他の精神症状…不眠、幻覚、パニック発作、抑鬱、強迫観念、等

(大津市薬会報 2012年7月号掲載)

30号 漢方の風 ーアトピー性皮膚炎の根治療法

2012-01-12

 比叡山延暦寺の根本中堂は織田信長の焼き討ち後、徳川家光により1642年に再建された。根本中堂を支える76本の柱は全て直径67cmに統一されていると新聞記事で読んだ。使われている木材は欅(けやき)だそうですが、腐朽し易い材芯を避けるが為に直径2mの欅を縦に4分割して夫々を1本の柱としている可能性があるらしい。つまり1本の木から4本の柱を作っている。耐用年数は800年で、築後約310年の1955年に腐朽した部分を取り除き、「根継ぎ」の技法で修理が行われている。耐用期限の800年後(西暦2400年頃)には、確実に木材の調達は不可能である(日本では伐採が祟って、多くの神社仏閣の大柱を海外から調達しているのが現状である)。そこで延暦寺は遠い先を見て10年前から比叡山中に欅を育てている。(無事育つ確率は10%だそうです)。又、創建時、檜(ひのき)の調達が難しかったが為に止む無く欅を使ったとも云われている。調査研究で腐朽の一番の原因は木の乾燥が充分で無かった為と考えられている。

 

 奇跡的に大空襲による焼失から逃れた姫路城の昭和の大改築は1955年から行われた。その2年前からの調査で天守閣を支えている東西の2本の大柱が夫々東南に50数cmずれている事が判明した。更に調査でその一本の西の大柱が芯から腐朽しており、継ぎ足しもまま成らない状況で再利用が出来ない事が判明し、直径1m以上長さ20数mの檜を探すことになった。やっとの事で木曽の山中で見つけたものの、切り出す途中で折れてしまい、工事は中断した。暫くして、同じ木曽の山中で2本目の檜を見つけ、山林鉄道で搬送途中、崖の所で重さに耐えられなくて、16mの所で折れてしまい、その先の部分(約11m)は谷底に落ちてしまった。その時の事故の場面はNHKのドキュメント放送でも捉えていた。結局、その残った16mの檜に姫路近郊の神社の境内の檜を継ぎ足して(木組みして)西の大柱として、無事、大天主は改築されたのである。

 

 延暦寺の根本中堂の柱は腐朽し易い芯を避けるが為に4分割したもので、姫路城の西の大柱も芯から腐朽が始まっており、漢方医学から見て、アトピー性皮膚炎の原因と通じる所がある。つまりアトピー性皮膚炎も体内、若しくは皮下の「湿」がそもそもの元凶であるからである。ステロイド剤は体内に湿を貯め込むが故にあとあと様々な問題を惹起するのである。しかし乍ら素早く炎症や痒みを抑える即効性があるのでそれを使用する有用性はある。その場合も湿を溜め込まない為に、未病を治す意味も含めて漢方薬を利用すると良いのは自明の理であろう。かと言って、なかがわ漢方堂では大半の患者様にステロイド剤は極力避けて頂いております。

 

 体内の湿(湿熱)を如何に取るかがアトピー性皮膚炎の漢方治療なのですが、その一方、痒みは心の火(厥陰心包経)を冷ます事で治療出来ます。詳しくは“漢方の風”28号をお読み下さい。甘い食べものは糖質(炭水化物)で細胞内のミトコンドリアのTCAサイクルで炭酸ガスと水に分解される。乃ち、湿を発生する。甘さのおっかけっこをしている現代社会の犠牲者が、つまりアトピー性皮膚炎や糖尿病の患者様である。

 

 湿(水)は様々な問題を惹き起こす。関節部位に溜まると関節炎になる。膝痛、腰痛、五十肩には防已黄耆湯、越婢加朮湯、疎経活血湯、ヨクイニン等で湿を取り除く。脳の網様体の湿(頭重、眩暈、耳鳴り、他)には半夏白朮天麻湯、温胆湯、当帰芍薬散、他から撰用する。産婦人科領域では、多嚢胞性卵巣も湿が絡んでいる。

 

 昔から石や鉄を多用せず木を使う日本の建築様式に係る人は木の特性を熟知している。木材の一番の敵は内外の湿である。東洋医学も又、湿は邪となり得ると捉えている。木も人間も自然の中に存在しており湿とのせめぎ合いの中で健やかさを保っている。

(大津市薬会報 2012年1月号掲載)

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